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第五章 《現実》

とても不安で、毎日夕方が来るのが怖くなった。

がんが精神も犯しているのかもしれない。


そして今、がんと宣告されたこの時期に「ベルサイユのばら」と再会した。

まだ、がんだと検査結果が出ない5月の大型連休に、

最終上映となる劇場版アニメ「ベルサイユのばら」を観た。

やはり、2時間では全然あらすじのうわべだけ、登場人物も、

重要な内容さえ端折られてしまって、

同じ館内ですすり泣く声に何故?と思い、余りにも感動無く映画館を後にした。

やはり、原作に勝るべきものはない。

あーあの青春の真っただ中に戻りたい気が無性にした。

それは、私の体の変化の叫びだったのかもしれない。

今思うと・・・予感なのか・・・

この再び「ベルサイユのばら」との出会いは、私のがん発覚と何か関係があるのか、

不思議に思っている。


入院前日、入院の準備を淡々としていた私・・・

どこかに長期旅行に行くかのように・・・

当日は、入院の手続き、手術前の説明、個室希望で部屋は希望通りになった。

エレベーター、談話室、ナースステーションの近くの部屋、すべてラッキーだった。

明日は、手術日、家族は帰り、私一人になった。

それからずーとテレビも見ず、スマホにダウンロードしたサラの音楽、

大好きなクラシックの曲を聴きながら、

「ベルサイユのばら」の架空小説を読み漁っていた。明日の手術の現実から逃げるために・・・

夜も疲れて、何故か知らない間に寝ていた。不思議なことに・・・


手術当日、とうとう来てしまった現実、

また逃げるかのようにもう一人の私が対応し、

11時過ぎと言われていた手術が10時半になり

点滴をしながら、徒歩で手術室へ向かった。

淡々と感情もなく冷静に、現実を離れた私が行動している。

手術は、執刀医他皆女性で、安心ではあった。

狭い寝台に寝かされ、酸素マスク・心電図・パルスオキシメーターを体に付けられ、

「今から、麻酔入れますねー」と点滴に投与され、

知らない間目の前が真っ暗になった。

普通の眠りではない。深い深い眠り、夢も見ない。

死んだらこんな感じになるのかという、底の無い深ーい暗ーい世界へ・・・


突然揺らされ目が覚めた。

「手術終わりました」「大丈夫ですか?」主治医の先生がいて

「リンパには転移していませんよー」とか

皆が私に対して話しているのだが、喉が渇いていて、声が出ないし、とにかく眠い、それに目を開けると眩暈がして目が開けられない。

自分自身、目が覚めて混乱しているのに色々言うなよーと

心なしか怒っているーそして、また意識がなくなった・・・

また目が覚めたら、病室にいた。

家族が心配しているが、喉が渇き声が出ないし、

目を開けるとやはり凄い眩暈が襲ってくる。

そして、胸が凄く痛い。あー本当に無くなってしまったのだと実感した。

痛い、痛い。心も痛い。

看護師さんに「飲み物ください」と言っても、

あと何時間後と言われ、家族には何も出来ないので、

やっとのことで「帰っていいよ」と声をかけ、薄目で見送って寝てしまった。

喉が渇いている以外、食欲はない。

やっと飲み物が飲めるようになり、看護師さんに、

ウーロン茶2杯飲ませてもらい、また眠った。

また目が覚めた。今何時か、よくわからない。

個室だがカーテンだけ敷かれ、ドアは開けっ放し、

ナースステーションの前なので、

色々話声が聞こえ、足音や棚の移動のローラの音、もう眠く無くなったので、

音だけは聞こえている。

煩いなー思いながら、目を開けるとやはり眩暈がする。

主治医の先生や、定期的に看護師さんが見に来る。

心電計が置かれていて、TVで見るのと同じだ、

この画面が一直線になりピーとなったら死ぬのかなんて考えていた。

体からはいろんな線が繋がれている。

あー本当にテレビのようだと他人ごとのように自身の状態を見ていた。

長い一日が終わろうとしている。


夜中にトイレに行きたくなり、看護師さんから説明を受けていたので、

心電図の線とパルスオキシメーターをはずし、

点滴とリンパ液を排出するためにドレーンを2つ付けて、移動した。

個室なので直ぐ近くにあるのだが、やっとの思いでたどり着き、

帰りはベットでへたってしまった。

まだ眩暈がしている。喉が渇きウーロン茶を飲み寝た。良く寝られるものだ。

そして、明るくなって目が覚めた。

最初どこにいるのか分からず、天井を見てあー病院だと思い、

手術が終わったのだとやっと本当に実感した。

痛みは無く、眩暈も無くなった。

毎日、普段は5時頃に目が覚めているので、

やはり腕時計を見るとそのころだった。

スマホをいじり、好きなクラシック、「アベ・マリア曲集」をかけ、

ベットから降り、洗顔等身支度をし、ベットの背を上げ、寄りかかり、

スマホでまた「ベルサイユのばら」の架空小説を読み始めた。

6時過ぎ、看護師さんが来て、体温・血圧を測り、術後の状態を確認し、出ていき、7時過ぎ、朝食を持ってきてくれた。

ご飯ばかり多い、おかずもこんなものか、

でもデザート(ヨーグルトとか)ついてある。味は美味しかった。

ここは、高層階の南側、窓から強い日差しが差し込んでいる。

スマホで丁度私が入院した日、梅雨が明けたとニュースに出ていた。

暑い日がやってくる、今までも暑かったが、もっとしんどい酷暑が襲う。

私は、当分ここにいるので、そんな心配はいらないのだが、

いつも通り勤めていた日常と違う、非日常の経験の無い日々が始まっている。

8時過ぎ、担当医が来て、術後の確認と、なるべく歩くように、と言われた。

10時過ぎ、病室の清掃と男性が入って来たので、そそくさと、談話室へ移動した。

会社のことは考えまいと思い、音楽を聴きながら、小説を読んでいた。

久しぶりに本を読むのはいいのだが、遠視になったせいか書物の字は読み難い。

やはりスマホが画面は小さいが文字等大きくできるので、

これからは電子書庫だなとつくづく思ってしまう。

12時過ぎ、昼食が運ばれ、また、ご飯が多いなーと思いながら、食べて、

動くようにと言われたので、配膳棚に戻しに歩いた。

パジャマ等病院のレンタルがあるが、申し込まず、自分のを身に着けている。

ちょっと派手かなーと思いつつ、着やすいし、

鏡に映った自分もへこたれていない様相であった。

食後、また体温と血圧測定。

点滴と心電図は外されたが、ドレーンだけはまだついている。

看護師さんが量を確認し、1日1回取り替えていく。

それから少し眠ることにした。

今日は、家族が面会に来る。

コロナ過以降、面会は2名、30分ぐらい、15時から17時の間と決まっている。

「トン!トン!」ドアのたたく音がし、家族が来た。

昨日夕食に食べる為に買っておいた、プリンやヨーグルトがあったので、

皆で食べた。


淡々と1日が過ぎていく、、、担当医は1週間ぐらいで退院できるが、

リンパ液の排出量により、変わるそうだ。

術前には、ドレーンのこと、リンパ液の溜まること何も聞いていなかった。

術後痛みは全然なく、傷も化膿しなく、良かったが、

このリンパ液の浮腫に今後悩まされることになった、、、

家族が、毎日面会に来てくれて、歩いてと言われているので、

1階の玄関まで送っていき、あっという間に1週間が経ち、

ドレーンが朝、担当医から外され、10時に退院となった。

思ったほど、入院・手術費はかからずほっとしたが、

これからのこと考えると不安で一杯である。

清算が終わり、家族とタクシーで家に戻り、ベットで寝た。

やはり一番家がいい・・・

何故か、入院中、夕方の不思議な感覚が無かった。

それほどは精神的に追い詰められていなかったのだろうか?・・・


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