第四章 《暗闇》
夕方は今でも、時々不思議な感覚に襲われる。
精神を病んだあの時の私を思い出させる。
アンドレがオスカルと結ばれないと知った時、
毒をワインに入れて心中未遂を起こすシーンがあった。
私には、誰にも言えない秘密がある。
20代調剤薬局に勤めていた時、薬剤師から教えてもらった劇薬の場所、
忙しい時は、私たち事務員も薬の調剤をする。
劇薬は鍵が掛かっているので誰でも開けることはできない。
しかし、私はレセプト業務で残業して一人で、残ることが多かった。
その薬、名前は忘れたが、白い粉、数グラムで眠るように死ねるという薬。
どういう経緯で手に入れたのか分からないが、今でも手元にある。
調剤薬局の業務で残業が続き「テクノストレス症候群」と言う
今でいう「うつ病」の一つに罹ってしまった。
仕事は楽しいのに、続けたいのに、会社に行くとパソコンに触れられなくなり、
涙が出てきて、勤めることが出来なく、労災認定になり、
個人病院から、紹介されて総合病院に行き、入院までは至らなかったが、
心身ともに疲れ、寝ていることが多くなり、食欲も無くなり、気力も無くなった。
通院して、徐々に回復したが、勤めは出来ず、
内職などして2年間ぐらい家に籠ってしまった。
両親は、結婚して落ち着いて欲しいと、見合いを数回し、
私はこの時も現実を離れた心で他人事のように男性と会ったが、
心が折れて、自殺をはかった。
当時通っていた病院の薬を大量に飲んで、
幸い強い薬では無かったのか往診の先生の注射で目を覚ますことが出来た。
その時、あの劇薬は使用しなかった。
本当に死ぬ気では無かったのか・・・それから両親は何も言わなくなった・・・
そして今まで、薬は服用している。うつ病は直らないと思っている。
今も薬に頼っているのだ。
夕方のあの感覚が今でも体が覚えていて、時々思い出したように、
私を暗い世界に連れ去ろうとしている。
それが根本的な原因、結婚は、子供は諦めた。
そうだった、それが私の本心、生き方になったのだった・・・
今、がんと診断され、死を考え、そして劇薬のことが思い出された。
そう、私はいつでも死ぬことが出来る。それも楽な方法で・・・
それを考えたら、何故か心が楽になった。不思議なことに・・・
劇薬=毒、これが「ベルサイユのばら」をまた思い起こさせる。




