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第三章 《就業時代》

仕事で精神を病んだ時、会社の退社時間帯が一番辛く、不安になった。

当時死に一番近い時間だった。

異性が触れたことの無い乳房が無くなる、真剣に考えてはいなかった。

もう年なんだし、邪魔だけだし、いやそれは嘘だと今、悟った。

可哀そうなことをしたと自分に言い聞かせている。

60数歳まで、ひとりで来た。恋愛も結婚ももちろん子供も産まず、

興味がないといえば噓かもしれないが、好きになった人は数人いた。

私は、友人の影響で、学生の頃洋画を見過ぎたせいか、

案外年上の美形、特に堀の深い背の高い包容力のある男性を好きになっていた。

だから皆妻帯者であった。

学生時代は対象の人はいなかった。教師であっても・・・


高卒で勤めた会社、同期が4人(同じ高校卒1人)入社し、4人仲良く、

お盆休みとか、旅行に行った。

そこでも、男性とは知り合ったが、遊びに夢中だし、

自身子供のころから容姿において10人並みと自覚していたので、

私を対象に誘ってきたわけではないと思い、(やはり判断は正しかったが)

他の同期の女性目的だったことが何回かあった。

それに会社の直属の上司が歌舞伎役者の女形のように肌が白く、

綺麗な背の高い素敵な人だった。

だからもう結婚もしていたけど・・・初めてのプラトニックラブ・・・

「姫!」、「姫!!」と私のことを呼んでくれた。

まだ社会に出たばかりで、幼くて何も知らない初心な私だったから・・・

その出会いから、私の男性観は確実になっていった。

翌年、大卒の男性4名入社し、私の所属する課に1人配属されたが、

眼中にはなく、年上なのに私が指導していた。

悪いけど、田舎臭い優柔不断で、覇気のない、茫洋とした感じ、

はっきり言っていやなタイプだった。

誰かが言っていたけど、20代ぐらいまでは、同期ぐらいだと女性の方が考えも、

生き方も男性よりしっかりしている、

本当にそう感じ、年上であっても年下のような感じだった。

その会社は、同期の仲の良い女性がいじめから退職し、

私もそこそこ蓄えが出来たので、絵の勉強をしたくて、

県内に美術の専門学校が出来たのをきっかけに、3年ぐらいで会社を辞めた。

初恋の上司も愛妻家であり、私の入る隙間は微塵もなかったし・・・


美術の専門学校の2年間は本当に楽しかった。色々な勉強ができた。

油絵で大作も描けた、シルクスクリーン・デザイン・陶芸・彫塑・ステンドグラス、染色、浅く広く携わることが出来、

学生も年齢、学歴、職歴色々な人がいて刺激になった。

友人もでき、良く休みの日は、東京の美術館巡りをした。

本当に楽しかった。

年度末になると、卒業課題があり、何か賞を貰った気がする。

翌年研究科に進み、同じように充実した日々を過ごした。

卒業後、染色家の有名な先生のお手伝い、ステンドグラスの先生の弟子とか、

美術系の就職先は紹介されたけど、

画廊という場所に憧れがあり、市内の個人経営の画廊に就職した。


当時、印象派の画家や外国の作家ばかり興味を持っていたが、

画廊では、日本の現在活躍している画家の油絵や日本画が並び新しい世界が開け、

また外国のリトグラフ「カシニョール、ブラジリエ」などまだ値段が手ごろで、

綺麗な作品に感動したし、

個展の開催、画家の裏側や絵の売買方法、絵の真贋を覚え、とても勉強になった。

画廊勤務の時、ホテルでパーティーなど煌びやかな催しの受付などしたけど、

私はやはり着飾っても10人並みの容姿の為、

何も起こらなかったし、異性への興味もそのころは皆無だった。

そこも、個展を毎年開く版画家の家族との小さなトラブルがあり2年で辞めた。


20代は、色々職業を変え、次に調剤薬局に勤め、

昭和の50年代パソコンを導入し、レセプト業務を行う仕事についた。

今のようなB5のノートパソコンではなく、机2つぐらい大きいディスクトップ型、プリンターもよく詰まる、初期のパソコンだったが、

私は、新しものが好きなのか、とても扱いやすく、

仕事は忙しかったが、キーボードを打つのが楽しかった。

当時見合いもしたし、他の職場で誘われたこともあったが、やはりだめだった。

大人の包容力のある人、端正な顔立ちの人が良かった。

でも、そんな人はもう皆結婚していたのだ。


30代、転職した会社でまた妻帯者のひと回り以上年上の上司、

段々好きになっていった。

余り良い噂はなく、陰があり、でも独特の雰囲気があり、そして私には優しかった。丁寧に仕事を教えてくれた。

そして、私は、いつの間にかいつもその上司を目で追っていたのだ。

それを「ベルサイユのばら」が思い起こさせてくれた。

一度自分自身の我儘で、会社を辞めると社長まで言い、何でそんな事になったのか今も思い出せないが・・・

そんな毎日の中で、その惹かれている上司に、仕事中引き出しを開け

図面を取り出そうとした時?背後で「愛している」!と言われた気がした?

もう昔の話だが、聞き間違いなのか空耳だったのかもしれない。

しかし、私は確実に聞いたと思っている。

今でも、私の感情に気づいてくれたのだろうか・・・

その言葉で会社に留まることにしたが、果たしてそれからは何も、

本当に何もなかった。

いや、もし叶ったとしても、不倫という世間では認められない関係になるしかないが・・・それが、オスカルとアンドレの関係に似ているとふと思い、

あの時、体を許していれば、丁度オスカルとアンドレの年に重なる。

今でいうトランスジェンダーではないがそうも見られず、

女性として少しの喜びと幸せを感じていたのかもしれない。

他の案外女性に人気のある妻帯者にホテルへの誘いがあったが、

私はもう好きな上司しか目に入ってはいなかった。

その会社も退職したが、

それからは、男性には縁の無い生活、全然苦にはならなかった。


仕事も今まで紆余曲折はあったが、続けられているし、貯えも収入もそこそこあるし、

去年ごろまで幸せだなーとつくづく感じている私がいた。

それが、今どん底に落ちている自分が、

恋愛、結婚、ドレスを着たかったと後悔している自分がいる。

乳がんで両側全摘手術することになってから、

女性としての自分が愛おしく、悲しく、残念に感じている。

オスカル達と同じ30歳代、

その時期が私には女性として生きるべき最後の年代だったのかもしれない。

あの時、自分自身にもっと勇気があれば、

また違う人生を歩んでいたのかもしれない。

今、「ベルサイユのばら」の架空小説を読んでいるが、

二人は漫画では革命により死んでしまった。

でも、架空小説には生まれ変わりと言う選択肢があった。

さて、私の前世は、私の生まれる以前は何だったのだろう?

そして、死んだらまた生まれ変わるのだろうか?

女性としては、寂しい人生だったと思う。

前世もこんな人生だったのだろうか?


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