98.パパには勿体ないので、自分が呑んでアゲル
んで、院長先生の部屋で、3人で晩酌まで頂いているあたし。
うん、今日はウイスキーのロックなのね?
「氷……こんな貴重なものを」
そうだね。この世界ではあまり見ないね。初めて見たかも。
高級そうなアイスペールにたくさん入れられた氷は、どれも純度が高く、透き通っている。球体で、ゆらゆらと霧のようなものが掛かっていた。
「光の女神アーリューシャイン様の思し召しなのです。さ、どうぞ」
みーよが慣れた手つきで、素敵にダイヤモンドカットされたグラスにトングで氷を何個か入れて、その上から高級そうなウイスキーを注ぎ入れる。
少し細目で背の高いグラスは、見方によって光の加減が違って見えて、とてもキレイ。
マドラーで1回、もう1回、そっと混ぜると、マムちんの前に事前に敷いておいたコースターの上に、丁寧に置いた。
「最初は酒精が強いので、そっと口に含むようにお呑み下さい。慣れてくると、解けた氷でウイスキーの香りが立ち上りますから、味の変化もお楽しみ頂けます」
なによ、そのバーテンダーみたいな説明は。どこで覚えたの?
「郁ちゃんもロックでいい?」
「同じでいいよ」
みーよがあたしの分を作ってくれている間、マムちんはグラスを眺め、氷を眺め、ウイスキーの香りを確かめ、おっかなびっくり、そっと口に含んだ。
あ、強い、強すぎ、むせそう、我慢我慢、口に含んで馴染ませて、馴染ませて……嚥下する。
美味い。こんな美味いお酒、初めてだわ!
んー相変わらず分かりやすいなーマムちん。
あたしも呑んでみたけど、こりゃ美味いわ! みーよ、ホントいいお酒知ってるねぇ。
「これも、パパが呑まないコレクションなのよね。吞まないなら、貰わなきゃいいのにね」
と言いながら、手慣れた手つきで自分の分も作る、みーよ。
彼女は氷を入れないで水割りにするみたい。薄めが好きなのね?
パパには勿体ないので、自分が呑んでアゲル。
うん。そういう考え方、スキ。ダイスキ!
「大人には大人の付き合い方があるんでしょ?」
「そうなんだけど、だからこそ、好みではないものは好まないと言わないとダメだと思うのよね」
大人みたいな手つきでグラスを傾けて、サラミスティックを頬張る。
あたしも、チーズスティックを真似するように頬張る。
今日のおつまみはスティックシリーズ。生野菜スティックも準備万端。
ん-美味しい。この世界のものとは、正直比べ物にならない美味しさ!
現代人は、こうじゃないとね。
「時には、自分が好まなくても、相手の立場を考えてあげる必要もあるのですよ、聖女ミヨ」
マムちん、もう目がトロンとしてるよ。お酒弱いなー
でも、好きなのね。お代わりなのね?
「チェイサーと交互に飲むと、強く酔わずに済みますよ」
「そうなのねぇ。すごく美味しいわねぇ」
お気に入りのチーズスティックを食べつつ、異世界のお酒を嗜むマムちん。うん、ご機嫌だねぇ。
当然のごとく、3人でボトルを1本開けちゃったよ。




