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Sweet Bomb NEXT  ~ 今度は異世界で大暴れっ!  作者: 白河・DG・夜舟
転移十二日目っ! ~ パレードに報奨金。ついでに自称大聖女との出会い

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95/142

95.お願いだから、本当に止めてね?

 冒険者ギルドをでると、人々の活気はまだ冷めやらぬ感じだった。

 こっちに向けられる視線が、ちょっとイタイ。有名人になっちゃったねぇ。

 大通りはもう片づけられていて、パレード用に開けられていたスペースも、屋台が立ち並んでいる。仕事が早いね、たくましいね。


     ~ ・ ~


 帰りに鍛冶屋によって、アギト・ナイフを回収する。

「お前、本当にいい腕をしてるな。刃先の傷みが、最小限だ」

「そりゃどーも」

 感心した顔の親父に、すました顔で対応する。

 相変わらず、キレイな仕事をするね、コイツ。

 刃に映るあたしの顔が、そう語っている。

 軽く振るい、バランスを確かめる。うん、完璧。

 グリップも巻き直されていて、手にシックリ馴染む。

「コイツのおかげで、生きて、稼げている。これ、いい相棒だよ」

「そりゃどうも」

 仕事ぶりに感心したあたしのセリフに、親父はすました顔で対応してきた。

 金貨を渡し、軽く手を振って別れた。

 いやぁ、こういう仕事をする人、すごい好き。

 でもねぇ、源さんみたいにべたべたしないんだもんね。

 クールに決めるんだもんね。


     ~ ・ ~


挿絵(By みてみん)


 ホント、クールに決めようと思ってたのに。

 そう上手くはいかないものらしい。

 鍛冶屋からの帰り道。

 前方から、高貴なお方が乗るような馬車が、こちらに向かってきた。

「あれって、もしかして?」

「うん。まちがいない」

 話に聞いていた、自称オラクルの聖女様ね?

 馬車はあたしたちの前で止まり、御者が降りてきて馬車の前に赤いカーペットを敷く。

 扉を恭しく開けると。

「おーほっほっほっ!」

 真っ赤な、社交界デビューなドレスをこんな街中で堂々と着ていて、汚れないの目立つんじゃないの世の中にはTPOというものがあるのよ、と言いたくなるような派手な格好で、素材からして庶民には手が届かないでしょう羨ましいでしょうな扇子で口元を隠しながら、高らかに笑ってご登場のお嬢様。

 見事なブロンドを縦ロールに編み込んで、キリッと吊り上がった瞳に長いつけまつげをこれでもかと付けている。

 健康的で日になんか焼けていないそんな野蛮な事は絶対にしない白い顔を獲物を目にした肉食獣のような興奮で紅く染めて、あたしたちを睨んでいる。

 んと、お貴族様の身分は、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、例外っぽいけど騎士爵だったっけ。

 公爵は、王族とほぼ同等。直接の血筋があったりなかったり、なだけ。

 侯爵は、各地方を直轄するかなりの偉い人。大臣とかを掛け持ち、というか、その地位にふさわしい身分なのよね。

 伯爵は、大きな都市とその周辺の町や村を束ねる領主。あたしたちの住むオラクルの領主さまは、身分としては伯爵ね。んで、この赤い派手なのが、その娘の一人。

 子爵は、伯爵が大家だとすると、店子みたいなもん。ちょっとした町や村を治めて、税金を集めて伯爵に献上する。もちろん自分たちの飲み食い贅沢にも税金を使う。伯爵になんかあった場合は、いざ鎌倉とばかりにはせ参じる義務を負っている。

 男爵は領地無しの貴族。継がせる土地がない、一代限りの名誉職みたいなもんかな。平民でも、功績があれば男爵に取り立ててもらえる。

 貴族になると、社交界に出られる。そこで他の貴族とつながりを持てば、自分の商売や利権や血縁関係などに絡むことが出来るわね。ただ、貴族としての格式を維持しなければならないので、それなりにお金が掛かる。なので、割と微妙な地位なのかもね。

 あとは、上げた功績がかなり凄くて、結構な財産持ちになっちゃって一生遊んで暮らしたいんだけど、そういう事なら社交界とか出ちゃおうかな、という、お金の使い道に困っている道楽者も、コネなりなんなり使って男爵の地位を手に入れようとするんだとか。

 騎士爵も、男爵と似たようなもの。こっちは平民というより、兵士の出世枠の一つ。土地なし継がせるものなし一代限りは、男爵と同じ。貴族の格式の維持にお金が掛かるのも同じ。

 ただ、騎士なので馬の維持に別のお金が掛かる。お世話係の従者を雇い、給料を払う必要もある。商売とか利権とかで立ち回れないけど、腕には自信があるぞ、実際に功績を上げて証明してみせたぞ、という人向けの枠だわね。

 ま、現実、お金が掛かるのは間違いないので、従者は親戚の誰かを召し抱えて節約したりする。あと、パトロンとして地位もお金もあるお貴族様の懐に潜り込んだりもする。

 なんかあったらお助けします。なので平時の時は、お手当てをよろしくね。

 そんな感じらしい。

 

 はぁ、身分の高い人も、それなりに生きていくのは大変なんだねぇ。

 さ、説明は済んだし、おうちに帰ろう。

「ま、ま、待ちなさいよ、話はまだ終わってないのよっ!」

 エレガントな化けの皮を自分で剥がして、伯爵令嬢さまが街中に響く声で呼び止める。

 どうも、一種の名物らしく、街の人たちも気に留めない。

「どーする?」

「あんまり、相手にしたくないのよ。目立つし」

 だよね。これと同類に思われるのも、かなり困るわ。

「お嬢様、少々お声をお控えくださいませ」

「お嬢様、お召し物が汚れますので、おしとやかになされて下さいませ」

 お付きのメイドさん、じゃないね、もうちょい身分が高そうなお姉さまが二人、馬車の後ろから現れて、左右から自分の主人をいさめる。

「あの二人は、メイドじゃなくて、侍女。専門の訓練を受けた高級職よ」

 へえ、侍女ねぇ。

 さむらいおんな。

 ま、文字通り、じゃないんだけどさ。

 いや、シャレじゃない、そんなつもりじゃないのよ。

 足さばきと身のこなし、落ち着きぶりが、相当高度な武術を嗜んでいる動きだったもんで、ちょっと気になったわけよ。

 お嬢様のワガママにイヤイヤながら付き合っているんだろうな、とは思うんだけど。

 それが許されるのは、この二人が見守っているからなのね。

 誘拐恐喝身代金。

 そういうことを考えそうな輩は、この世界にはたくさんいるのだと思う。

 そいつらが、これはヤバイ、手は絶対に出せない、と思わせる実力があるんでしょうねぇ。

 この世界の人族って、弱っちいのばっかりだと思ってたけど。

 へぇ、案外広いじゃないのさ。

「で、お嬢様の“付き人”なの」

「へー」

 ド派手なドレスも、高飛車な笑い声も、傲慢不遜な態度も、聖女としてなら納得はいくわ。

 ま、共感を得られるかどうかは、別だけどね。

「聖女ミヨ。お前ごときが付き人を得たというので、どのような猿を手なずけたのかと見にくれば、オーク・クイーンではないか。呆れたものじゃ」

 その名前呼びはヤメろってぇの!

 反射的に殴りに行こうとするあたしの手を、みーよがガッチリ捕まえた。

「ダメよ、挑発に乗っちゃ」

「ぐぅ……」

 ま、まあ、腐ってもお貴族様。

 しかも、領主様の娘。

 なんかあったら、タダで済まないのはこっちの方。

 最悪、あたしもみーよも、なんなら教会のみんなも、反逆罪で縛り首、公開処刑で吊るされちゃうね。

 その時はその時で、一人でも多く道連れにして、なんなら領主一族全員と刺し違えるけどね。

 なんて物騒なことを考えていると。

「どうじゃ、聖女ミヨ。(わらわ)の付き人と、そなたの豚娘(つきびと)、闘わせては見ぬか?」

 ん?

 なんでそーなる?

「お断り致します」

 そうだろうと予想していたみたい。みーよはきっぱりと断った。

「なぜじゃ? 怖いのかえ?」

「闘う理由が御座いません」

 そう言いだすも知っていた、予想通りと言わんばかりに、みーよの対応は滑らかだ。

「お話がそのような事でしたら、これにて失礼致します」

 さっさと撤収戦。迅速対応。さ、行くよ。

 きっぱり振り向き、とっとと小走りで走り去るみーよ。

「怖いのかぇ、怖いのじゃろー」

 煽る、煽るなー派手娘(まっかっか)

「いいの?」

「いいの。全く問題ないよ」

 悔しさとか、そういう欠片のまるでない顔で、みーよはあたしを見る。

「あの子は確かに聖女として、わたしより格上。でも、聖女として果たさなければならないお役目を、まるで果たそうとしていない。だから構う必要は全く無いわ」

 そういうもんなんだ。

「付き人のいない野良聖女だったわたしたちを散々からかってきたんだけど、あの娘は冒険者ギルドの中には決して入らない。苦しんでいる民衆のことなんか、気にも留めない。ただ単に、有名になりたい、目立ちたい、ただそれだけの娘よ。相手にする価値なんか、全く無いわ」

 だいぶ離れてから、ようやく足を緩めたみーよ。

 ま、あたしが楽についてくるのを知ってるからなんだけどね。

「付き人が付いて野良では無くなって、大化け聖女として有名になり始めたわたしの事が気になり始めただけ。わたしの力なんかじゃないのにね」

 いや、純粋にみーよの努力が報われ始めただけだと思うけどね。

「だから、自分の付き人と郁ちゃんを闘わせて、自分の方が凄くて強いのだとアピールしたいだけなのよ」

 ふーん。

「あたしが負けなきゃいいだけの話なんじゃないの?」

 みーよは、少しだけ考えた。

「向こうは二人一組で来るわ。しかもあの娘の祝福(ブレス)コミで。わたしの祝福(ブレス)はまだ力が弱く、時間も短いの。勝ち目は、無いわ。

 出身が領主様の娘だけあって、オラクルの聖女と言えばあの娘だと、誰もが認めたがっている。

 ……あの性格さえ何とかなれば、なんだけどね」

 ま、確かにね。

 まあ、あの態度も極めれば、なんか認めて貰えそうだけどね。

「そんなに強いの? 例えば、30匹前後のオーク小隊と戦ったりしたら?」

 あたしにとってはザコどもだったけど、一応の目安として。

「多分、勝てる。自分で名乗るだけあって、彼女の祝福(ブレス)は段違いにスゴイ。

 ただ、あの娘はこの街から一歩も外に出ようとはしないけどね」

 あーそーだね。そういう事は絶対にしなさそうだね。

 へー強いんだ、そうなんだ。

「ちょっと郁ちゃん、ダメだからね。変な事考えないでね?

 大体、領主様の娘を負かした所で、何もいい事なんかないんだからね」

 そりゃそーなんだけどね。

 強いのは、あの娘じゃなくて侍女ペアの方なんでしょ?

 あたし、お相手が女だからって、強いんだったら遠慮なんかしないよ?

「お願いだから、本当に止めてね?」

 念押ししてくるみーよ。この辺は、お互い、相手のことをよく分かってる。

 うん、よーく分かってるね、みーよ。

 あたし、こういう話を聞くと、血が騒ぎだすんだよね。

 ウフ、ウフフフ……

 

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