87.懐かしくとは、感じない
スラムの中を通って、教会が見えて来た。
懐かしくとは、感じない。昨日の朝に出発して、中継地の村を超えて野外で一泊して。翌日、あたしとみーよが最初に出逢った村に着いて、そのままオークの部隊と戦って、壊滅させて、転移術でオラクルまで帰還。1泊2日だねぇ。
本隊は、今日はさすがにあの村で1泊、翌日、中継地でもう1泊かな? あさっての昼には帰ってくるでしょう。
転移術、便利だね。ちょっと気持ち悪いけど。自前で準備するにはお値段が飛び出るけど。でも、いざという時の脱出手段としては、最高だね。
教会の建物の周囲には、丸太で足場が組まれている。
職人さんの姿は見当たらない。資材の搬入と、足場の組み立てで今日は終了かな?
そのままあたしたちは、教会の敷地に足を踏み入れる。
あら、外にテーブルを出して、お食事中でしたか。
「あ、お帰り……どうしたのっ!」
職人さんたちに給仕していたアリちゃんがこっちに気づいて、手を振りかけて、ビックリしてる。
お手伝いしているリコットも、キャアキャア言ってる。
「院長先生呼んできて」
パニックになりかけのリコットに指示を出すと、飛ぶような勢いで教会の中に入っていった。
「だ、大丈夫なんですか??」
職人の親方さんが、代表して気遣ってくれる。
「あたしもよく分かんないんだけど、理力切れだって」
「聖女ミヨ様に、我々は救われました。武神トルモルトのお導きに感謝を」
横で、厳かにマイアミが手を掲げる。ごついガントレットがボワッと光った。
そっか、半分戦士、半分僧職者なんで、杖はないんだ。代わりに手が光るんだね?
「感謝を」
「感謝を」
親方も、職人さんたちも、食事の手を止めてマイアミに向かって祈りのポーズを取る。そういうもんなの?
ってか、あんときあたしたちを守ってくれたのはみーよで、その力を授けたのは女神ちゃんじゃないの?
マイアミ、ただ居合わせただけでしょ?
んーよく分からん。
あたしが謎だわぁ、と思っている間に、教会の中からマム院長とシュラン、カンタがやってくる。
「お久しぶりです。マム様」
「あ、あなたは……」
挨拶をかわそうとしたけど、そのまえにみーよが心配。
話はあとで。
そうマイアミにアイコンタクトして。
シュランとカンタに、職人さんたちの給仕のお世話をするように言い置いて。
みーよを抱えたあたしとアリ、リコットに、教会の中に入るように言う。
マイアミとダナンたちも、外で待っているように、良かったら一緒に食事もしてよいと言っておいた。
マム院長はチラッと、デンを見たけど。
何も、言わなかった。




