82.メテオ・フォールとアドバンスド・プロテクション
ヤツらが逃げ出すと同時に奥の方で、戦いの音が聞こえてくる。
弓矢で撃ち合いをしているみたいだ。
あたしたちは藪の中の獣道を伝って裏側から侵入したのに対して、本隊は正面から進軍したんだね。
で、あたしたちが来た裏道から。
「スマン、無茶に付き合わせた」
「郁ちゃん、平気?」
デンのお仲間と、みーよがやってきた。
あたしたちが通った、裏道を抜けて来たらしい。
「時間が無い。脱出する」
僧侶戦士マイアミが、あたしたちを促す。
「この人たちは?」
まともな精神状態ではないままの、裸の女性たちを見捨てていく?
すると、デンがどこからか、小さな荷物を運ぶためなのか、二輪の台車を運んできた。
裸の女性たちに、せめてなにか布でも掛けてあげたいんだけど、そんな格好なんか気にしている場合じゃないらしい。
彼女たちを荷物のように台車に全員載せ、男二人で引っ張る。重そうなので、あたしも後ろを押すと、ようやく動き始めた。
「道がぬかるんでるもんね」
「とにかく、急いで出来るだけ離れろ!」
マイアミが焦っている。
何?
何が?
空が、急に暗くなり始めた。
その中心が、なぜか明るく輝いている。
そして、どんどん大きくなっていく。
「間に合いませんね。みんな、集まって!」
みーよが、杖を掲げて前かがみになり、祈り始める。
彼女の複雑な神代語(よくわからん。全然わからん)に合わせて、杖の先端が強く光る。
「光の女神アーリューシャインよ、その栄光あるお力を持って、か弱き信徒たちをお守護り下さい! アドバンスト・プロテクションッ!」
いつもの弱弱しい光の障壁じゃない。もっと強くまぶしい、白い光があたしたちと台車を包み込んだ。
同時に。
すさまじい光と振動、続いて熱と風と大音響が、今までオークたちのいた陣営を直撃した!
吹っ飛ばされる! 燃やされる! 消される!
ホントに、そう思った。背中がゾクゾクして、震えが止まらない。
でも。
強い光の壁が、圧力に捻じ曲げられながらも、あたしたちを守り通してくれた。
まもなく、爆発が収まり。
それと共に、光の障壁は輝きを弱め、やがて、消えていった。
へなん、とあたしは膝から崩れ落ちた。
みーよも、同じように、ぺたん、と地面におしりを付けた。
言葉が、出なかった。
目の前に、深いクレーターが出来ていた。
こうしていても、熱い蒸気が顔を焦がしていく。
「マカロン閣下の得意魔法“星落とし”だ」
僧侶戦士マイアミが、軽く首を振りながら、教えてくれた。
「聖女ミヨ、命拾いした。本当に助かった」
「間に合って、良かったです」
みーよが力なく、応えている。かなりギリギリのタイミングだったんだね。
「あ奴は、昔から融通が利かないからな」
「まあ、このタイミングじゃないと、本隊同士で接近戦になりますからね。ギルドの側の犠牲が、相当なものになるでしょうから」
「もう少し、優しい魔法があるだろうが」
戦斧使いが怒っている。この爆発に巻き込まれかかったからね。
「この切り札があるから、ギルドマスターは楽観的だったんだね」
「オークどもが散らばると、意味がなくなるからな。お前らが、かなりかく乱に成功したんで、相当うまく行ったと思うぞ」
別にアンタの手柄じゃないでしょう、なに威張ってんのよ?
戦斧使いをジトっと睨んでいると。
「無事だったようだな」
「本当に、救出しちゃったんですね。途中で見捨てるとばかり思っていましたよ?」
シュトルムと女僧侶が、クレーターの脇を通りながらこっちに歩いてきた。
「クチュクチュから聞いて、びっくりした。すごいなお前たち」
クチュクチュ、ん-あの小人の事かな?
「で、必要なんだろ? 連れて来たぞ」
後ろから、野良聖女ズも。
「ひどい有様、ですわー」
「無茶すぎなんだけどー」
「頑張っちゃったなのー」
あいかわらずの不協和音。
「助かります。さっき、上級防御を使ってしまったので、もう理力が残っていません」
みーよが、さっきから立ち上がれないでいる。相当、消耗したんだね。
「上級防御なの? ホントなの?」
「まさか、ありえないですわ!」
「でも、星落としを生き残るには、他に方法もない、けど……」
「付き人がいると、こうも違うんですわ」
「うらやましーんですけど」
「ほんと、うらやましーなのー」
終わりそうもないので。
「ごめんなさい、わたしの付き人の治癒、そして彼女たちの鎮静とオークどもの死骸の浄化を……」
みーよの顔色が悪い。相当、無理しているね。
「できるわね?」
女僧侶にも言われると。
野良聖女ども、さっきまでピーチクパーチク言ってたのが、急に鳴き止んだ。
なによぉ、そのあからさまな態度の違いはー




