79.あれって、神さまだけじゃなく、観客からも見守られてるからね
「すごいな、大活躍じゃないか」
「お疲れ様」
先に馬車に乗っていた、シュトルムと女僧侶がねぎらってくれる。
魔法使いは、何か瞑想中? らしく、目をつぶったままピクリとも動かない。
亜人の小人はいない。斥候として任務を遂行中なんだろうか?
反対側のベンチで、戦斧使いと僧職者兼戦士が、気まずそうにしている。
デンも、いないね。あの引きこもりスタイルも、任務中みたいね。
なに?
これって、あたしが慰めなきゃダメな流れ?
だってあんたらは、みーよの事、ションベン呼ばわりしてたんでしょ?
じゃああんたらが、自分たちを、ションボリ呼ばわりされてもいいよね?
だよね?
……
ん-あーもー、メンドクサイなー!
男だろお前ら!
しっかりシロー!
「一応確認しとくけど、あたしら、まだオークの小隊を壊滅させただけで、奴らの本体は健在だからね? しょげてる場合じゃないのは、分かってるよね?」
ホント、ウチの聖女の事をションベンとか言ってたあの威勢の良さはどこいったのよ?
ホント、あんたらの事はションボリとか言いふらしても構わないのね?
巻き返そうとか、挽回しようとか、そういう気概はないわけ?
ま、あたしがやりたいようにやった方針に巻き込んだのは間違いないけどさ。
知らないわよそんな事。コッチはコッチで結果出してんだから、ソッチがコッチに協力しなさいよー
「わしは、あんなオークども、一対一なら、負けないんじゃ」
「ハイハイ」
まーそーだとは思う。その重そうな戦斧、一発当てたら何が相手でも吹っ飛ばせそうだし。
でも。
複数相手だと、一発当てる間に、向こうにぶん殴られそうだからね。
でもさ、そういう武装なら、そういう戦い方があるんでしょ?
例えば狭い洞窟とかなら、一対一にしやすそうだもんね。
そーやってC級まで昇って来たんだよね。
だから、別に責めないよ?
あと、僧職者兼戦士にオークをしのげる力は求めてないけど、なんか技というか、術というか、切り札があるんじゃないの? わかんないけどさ?
じゃないと、とうの昔にいなくなってない?
「武神トルモルト様は、限界を超えて闘う者に、初めて加護を下さるのだよ。あの時はまだ、限界ではなかったということだな」
あーそーですか。こっちにもなんか、ケチくさい神さまがいた。
「聖職者は、大なり小なり、そういう経験をしながら成長するものだぞ? そなたが仕える聖女ミヨも、かなりの困難を乗り越えてきたように思えるがな?」
へー、そーなの?
あー、なんか野良聖女ズが、聖女は根性だ魂だとか言ってたような気がするわ。
きちんと聞いてなかったけど、あれ、本当の事なの?
「ん-半分は本当、半分は誤解かな」
少し考えて、みーよが応える。
「試練は、自分の力で超えるように努力しなければならないけど、本当にどうしようもなくなった時、初めて女神さまと深い交友が持てるようになる事もあるし、ダメな時もあるよ」
なにそれ?
たまたま?
「見守られている、という感覚が大事。そして、どうぞご照覧下さい、という謙虚さも大切。自分の決断や行動自体を奉納している感じかなぁ?」
ん-大相撲は神さまへの奉納、なイメージしか思いつかないわ。
でもあれって、神さまだけじゃなく、観客からも見守られてるからね。それならちょっと分かる気もする。
なので、横綱が卑怯だとか情けないとか勝てばいいんだとかいう相撲を取っちゃダメだよね、という意味なら、分からなくもないね。
だってそれって、観客からすると、観てて面白くないもんね。
で、神さまから見ても合格ラインの、堂々としたお相撲を取れるようになれば、さらに認められるって感覚かしらん?
僧侶戦士は、そういう道を歩んでいる、という事かしらん。
でも、それって、どっかで死にそうな目に合いそうな気もするけどね。
だから、今回はこんなんだけど、まだ余裕はあったって事?
だったら、もっとちゃんとやんなさいよ、本気出してよ、真剣にやってよ。
なんだ、上手いのは言い訳だけなの? やっぱりヘタレじゃん。
「……」
「……」
あ、マズい、顔に出てた。
いけない、あたしは女優、あたしは女優……
「まあ、そう責めるな。お互い、得意不得意はあるものだし、第一、彼らは身を挺してお前の大事な聖女様を守護していただろう?」
シュトルムが、あたしの代わりに執り成してくれたんで、助かったわ。
やっぱ、リーダーをやる人は、なんか違うんだよねぇ。
「だよね、ありがと。アンタらがいなかったら、あたし、あんなに好きに暴れられなかったわ」
助け舟に乗っかって、頭を下げとく。
それで回るなら、その方がいい。
ん-あたしも大人になったもんだわ。
「郁ちゃん、大人になったねぇ……」
あ、こら、バラすんじゃないよー
連中に苦笑されて、ちょっと|恥ずかしかった。




