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Sweet Bomb NEXT  ~ 今度は異世界で大暴れっ!  作者: 白河・DG・夜舟
転移九日目っ! ~ どっかに強い男、いないかなぁ?

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74/111

74.強いんで、覚えた

 クロワッサンとコーヒーで朝食を済ませて、みーよが光の奇跡でチャチャっとお片付けしてる間に。

 低レベルの冒険者たちは、馬に水を飲ませて、馬車に繋いで。

 その間に、野良聖女ズはみんなに朝食を準備して食べさせて。

 うんうん、下働きの諸君らも、中々大変ですなぁ。

 まあ、お前らも暇でランクが下なんだから手伝えよ、と言いたくなるのも分かんなくはないけど。

 いや、君ら、圧倒的に数が多いからね?

 参加者60人近くのほとんど大半は、君ら低ランク冒険者(ザコども)だからね?

 一緒にしないでくれるぅ?

「あれはあれで、良い経験を積むことが出来ているのだ。そんなに無下にするな」

 一試合、組んず(ほぐ)れずしたんで、距離感(ひとがらが)縮まっ(つかめてき)僧侶戦士(マイアミ)が、あたしの顔を見て諫めてくれた。

「別にーあたし関係ないもん」

 なによー苦笑しなくてもいいじゃない。それを言うなら、あたしだってこんな遠征(ながたび)は初めてだよ。

 あたしが、このあたし(ひとみしり)が。

 初めての割りに周囲に打ち解けてるのは、みーよが自分を取り戻してくれたのと、みんなが受け入れてくれてるからだと思うよ。

 あたし、あんまり、こんな風に受け入れて貰った事ないんだよねー

 やっぱり、自信と実績と実力のある連中って、いいもんだね。


     ~ ・ ~


 出発して、結構な時間を馬車に揺られて。

 夕暮れ前には、あたしがみーよに召喚(よびだ)された最初の村に到着した。

 村といっても集落が3件。すべて全焼。

 畑も荒らされて、今年の収穫はもう見込めない。

 防壁のような備えもない。

 ただ、この村には井戸があるんだよね。

 水は大事。本当に大事だからね。

「ここを拠点にして、周辺の調査を開始する。各自、用意してくれ」

 ギルドマスターの指示で、馬車を防御陣に組んだり、馬の世話をしたり、かまどを造ったりなど、みんな忙しそうに働き始める。

 あたしたちはまだ出番がないので、例によってみーよがテント、タープ、テーブル、イスを光の奇跡で呼び出す。

 ん、なんか来た。

「ここでアグフと戦ったのか」

「そーだね」

 あたしらと同じく、暇そうな残念剣士。

「みーよも、ここに見捨てられてたよ」

「まあ、ひどい話だが、あいつらもオークの分隊相手だと、どうにもならなかっただろうからな」

 あら、同情するんだー

 まあ、分からないことは無いけど、さ。

 でも、ムカつくんだわ。

 キッちり謝らせ(じんぎをとおさせ)たから、まあいーけどさ。

「ところでアンタ、剣の腕はスゴイんでしょ?」

「まあな」

「あたしと模擬戦、頼めない? 弟子に剣も教えたいんだよね」

「お前とか?」

 そんなタイプじゃないだろ? という表情をされた。

「何となくは使えるんだけど、我流なんだよね。本当に強い剣士って、どこまでのモノか、知っておきたいんだわ」

「模擬剣なんか、持ってきてないが……」

 周囲を見渡して、焼け残った柵の一部を見つける。

「ちょっと太いな」

 手短に握りの部分を削って、何度か振るって馴染ませた。

「お前の方はどうするんだ?」

 あたしは、みーよの光の奇跡で預かって貰っている竹刀を出してもらう。

 ついでに腰袋も預かって貰った。

 腰を廻し、少し跳ねて微調整(アジャスト)

「竹の、刀か?」

「うん。当たっても怪我しにくいから、教えるにはちょうどイイでしょ?」

「そうだな。よし、いいのが一撃入ったら終了でいいか?」

「当てるだけでは、ダメってことね。いーよー」

 何事かと、暇そうなギャラリーが集まってくる。

 ホント、遊びに来てるわけじゃないんだけどね。

 ま、剣の方は、別に負けても構わない。本職(プロ)じゃないしね。

 ただコイツ、どこまで強いのかってことは知っておきたいんだよね。

 一番興味深そうに見ていたギルドマスターが、審判を買って出てくれた。

 アンタ一番忙しいんじゃないの?

 忙しくても、こういうのは見逃せないんだそうです。そーですか。


 開始の合図と共に、あたしは残念剣士の観察(ウォッチ)を始める。

 中段に気軽に構えているけど、さすがにスキが見当たらない。

 右に歩いても、対応されそう。

 左に歩いても、同じ。

 ま、防具はちゃんと着込んでるんだし、その分、反応は遅いんでしょ?

 あたしの、手足以外はスカスカな格好に打ち込むのは嫌かもしんないけど、ヤルからにはちゃんと相手してくれるんだよね?

 あたし、教わる立場(かくした)なんだし、こっちから行きますか。

 あら、もう察知されちゃってる。

 さすがに反応速いわ。

 ギアを上げて、反応速度を高めて。

 1、2歩と距離を詰めようとして、急に止まる。

 地面スレスレから逆袈裟懸け斬り、を、軽くいなされる。

 ちょっと下がって距離を取り、遠間から片手突きを入れてみるけど、簡単に弾かれた。

 ウワァ、なんか、当たる気がしない。

「やめておくか?」

「まだまだ!」

 こんなので降参とか、勿体なさすぎる。

 格ゲー“WR”の剣士、グランザール様を思い出す。

 あたしたちのコロニーで、誰もあたしが操作するグランザール様には勝てなかった。

 Sweet Bombの“忠誠の試練”、あの激ムズモードも、あたしとグランザール様の力で乗り越えて来た。

 どこまで通用するか分かんないけど、あたしの剣士としての力は、アルタイルコロニーナンバー1なのよ!

 軽く2回跳ねて、ぐるっと背中を見せて廻る。

 隙をついて斬りつけてこないのは、知ってる。

 アンタはそういうヤツじゃない。

 余裕を貰えたので。

 突きの連続技“流星乱舞”をお見舞いするわっ!


挿絵(By みてみん)


「おっとぉ」

 目にもとまらぬ連続の突きを、突進しながら撃ち続ける。

 さすがに残念剣士も、本腰を入れて受け始める。

 体力や勢いが切れるのを待ってる感じ。それが定石(セオリー)だもんね。

 突き進む足を、地面を蹴ることで無理やり止めて(キャンセル)

 一瞬、隙を作ってあげる。

 なんかしてきたら、もう一つの大技、聖龍天翔で巻き上げる。

 どー来る?

 奴は、一気に下がって、剣を腰にためた。

 なんかしてくる。

 どうしよう、なんて迷うことはしない。

 来た瞬間に聖龍天翔一択。

 考えないで技を出せるように、これ、結構練習してる。

 後は、タイミングだけ。

 さあ、撃ってこい!

 残念剣士が、ぐっと体を沈める。

 柵の焼け残りで作った剣が、なんか、燃えてる?

 燃えてる!

 奴の気合と共に振り上げた木の柵の剣から、炎の刃が飛び出したぁ!

「なによそれ反則じゃ」

 反射的に繰り出した聖龍天翔ごと、あたしの身体は炎に焼かれつつ、上半身と下半身が真っ二つにされた。

 ように、感じた。

 いや、炎の剣撃は、聖龍天翔で逆に叩き斬った、斬れたんだ。

 でも、技の副作用で、あたしは空高く舞うように回転しながら、無防備な身体を晒している。

 本来は相手ごと巻き上げるんだけど。

 これ、着地するまであたしは完全無防備、相手はヤリたい放題なんだよね。

 ま、ゲームの中での技を自分の身体で再現できないかな、あ、出来たっ! て事なんだけど。

 こういうところまで完璧に再現しなくてもイイよね、あたし。

 あー、まーけーたー

 斬られる覚悟で着地したけど、何ともなかった。

「あれ?」

 あ、納得した。

 残念剣士の剣が、木の柵で作った剣が、完全に燃え尽きていた。


 周囲の観客(ギャラリー)が、やたらどよめいてるけど、あたしはそれどころじゃない。

 残念剣士に、喰ってかかる。

「なによその技、反則じゃないの?」

「相手は何をしてくるか分からないんだから、剣士たるもの、備えの技は複数持っているべきだろ?」

 知らないわよ、炎の斬撃なんて!

 弟子に教えようがないじゃない、そんな技!

「それよりも、半分お遊びではあるんだが、よく防げたな」

 あれで、お遊びレベルの斬撃なのかよー

 どんだけ底が深いんだ、この剣士!

「く、く、悔しいけど、これがあたしの全力よっ!」

「いや、大したもんだ。弟子を採るだけのことはあるぞ」

 本気で言ってるのか、手加減レベルなのか、ん-分かんない。

 ただ、こういうことを真顔で言うから“残念”なのは、よく分かる。

「防がれるとは思ってなかったからな。自分の剣なら普通に使えるんだがな。……まあ、本気はオークどものために取っておこうか」

「まーそりゃそーなんだけど」

 分かってるよ。真顔で言ってはいるけど、マダマダ本気じゃないんでしょ?

 あたし、コイツのことを残念残念言ってたから、本当に大したことは無いと、どこかで思い込んでいたかもね。

 間違えてた。

 トンデモナイ実力者じゃないのさ。

 えっと、シュトルムだったわよね?

 強いんで、覚えた。

 そーいえばマッチメーカーの脚装備に同じ名前があったわ。意味は“疾風”。

 で、炎の斬撃が使えるのね?

 負けたけど、意義のある負け。

 コイツ、とてつもなく、強い。

 知っておけたのは、とても大事な事だわね。

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