69.あらイヤダ、口説き文句ですか? お上手ですわね
新章開幕。
翌朝、みんなに見送られて、ギルド主催のオーク集団討伐に向かう。
今日も、例によって革ジャンボスが、花束を持ってお見送りに来ていた。
アンタもマメだねえとからかったら、女を口説き落とすには、マメさが第一なんだと力説してきた。
そういうこと、本人の前で言う?
すると「言わなきゃ、伝わらないからな」って、威張ってきた。
そういうのを「デリカシーのないアホさ加減」って言うんだよ?
もしかして、そういうのがカッコイイとか、思ってんの?
思ってる、らしい。
アンタとお付き合いなんて、無いよ? 絶対に無いよ? と言うと。
そういう身持ちの固い女を口説き落とすのが、男の甲斐性なんだと、のたまう。
はぁ、あーいえばこーいう。アンタ、弱っちいけど、しぶといねぇ。
ま、留守の事は任せて欲しいと言われると、あたしもちょっと、弱い。
いないよりは、マシか、と返事だけしておいた。
~ ・ ~
冒険者ギルドの噴水広場に行くと、すでに結構な人数が集まっていた。
例によって、野良聖女ズの姿もあった。
法服が派手だから、どうしても目立つんだよね。
ウチの聖女様も含めると、ホントに華やか。
「ミヨ、おはよーですわ!」
「ミヨも参加するのね? 私も参加だけど」
「お互い野良同士、がんばるなのー」
「ミヨはもう野良じゃなくなったんですわー」
「あらイヤだ、もうお仲間じゃないんだけどー」
「裏切りなの」
「裏切りですわ」
「羨ましいですけど」
「羨ましーなのー」
「でも付き人は女ですわー」
「女はダメなんですけど」
「ダメなのー」
「そーですわー」
いつまでも続きそうなので、宜しくねと会釈だけして、さっさと立ち去ろうとするみーよ。
「ん? なんか、そっけないですわ?」
「そっけないんですけど」
「気を使ってくれないなの?」
みーよは、首をかしげる。
「そう?」
「そーですわー」
「アンタ、もっといい子ちゃんだったけど?」
「先輩先輩、とかいって懐いてたなのー」
みーよは、にやりと笑う。
「そうかもね。そういうの、もうヤメタの」
野良聖女ズは、互いに顔を見合わせる。
「なにそれですわ?」
「なになになんだけど?」
「どーしたのなの?」
不思議そうな彼女たちに、ウインクを一つして。
「いい子ちゃんって、めんどくさいんで、辞めたのよ」
「へ?」
「は?」
「何のことなの?」
驚いたり不思議そうな顔をする彼女たちを置き去りにして、みーよは奥の方へとっとと行ってしまう。
ついて行くあたしに、どういうこと? と野良ちゃんたちからアイコンタクトを仕掛けられたけど。
ゴメン、君らにそこまで、あたしは義理を感じないのよね。
みーよは現代人になった、じゃない、戻ったのよ。
なんて、言う義理は、ないんだわ。
みーよは、そのままギルドマスターに挨拶に行く。
隣に、背の高い帽子をかぶった、銀と紫のローブを二重に着込んだ、白髪白髭の老人が立っている。多分、結構偉い身分の人だ。
この世界は、どうやら衣服が高くて、たくさんの布地を着込んでいる人は身分が高い、と思っていいらしい。
実際、子供服一式が新品で金貨一枚だったしね。
遠征が終わって、教会の修復工事も終わったころには出来上がっているでしょう。取りに行かないとね。
みーよは、そんなイラナイことを考えているあたしの前で、白髪老人に正式なあいさつを交わし、そのまま、にこやかにギルドマスターと歓談している。
なんか雰囲気が変わった? とか聞かれているけど、あらイヤだ、口説き文句ですか? お上手ですわね、とか言ってる。
ん-ホントに現代人に戻ってるね。
そんなあたしたちを見つけたらしく、ギルドのエースパーティーと言われる四人組もやってくる。
先頭は、残念剣士だね。
あたし、弟子を連れて初めて出会った時、お母さん扱いされたんだよね。
握手と称して、手を強く握ってきたし。ま、スっ転ばしてやったけどね。
残りは、魔法使い、女僧侶、そして、亜人の小人。
ベテランのバランス型って感じかしらん。
「聖女ミヨは、昨日、彼らとは出会っているんだったか?」
「ええ、挨拶させて頂きました」
「そうか。今回の討伐の主力になって貰う連中だ。よろしく頼むよ」
ギルドマスターの紹介で、改めて挨拶の握手を交わす。今度は、強く握っては来なかった。
「ウチは魔法使い中心のパーティーだから、軽戦士の君には期待している。色々と世話になると思うが、よろしく頼むよ」
「ん-あたしはみーよの付き人だからね。その辺は、よろしくと言われてもねぇ」
みーよを放っておいて魔法使いを守ってくれとか言われても、優先順位があるでしょ?
「大規模パーティー戦は、参加経験が無いのか?」
「うん、ないね」
みーよに、それナニ? と聞く暇も、無いね。
言わんとしてることは、何となく分かるけどね。
「簡単にレクチャーというか、打合せしたいんだが、一緒の馬車に乗って貰ってもいいか?」
みーよの顔を見て、許可を貰う。
ま、あたしも、強そうなメンバーの内情は知っておきたいからね。
~ ・ ~
何台も連なる馬車の一つに乗り込む。
12人乗り、詰めればもっと乗れるかもしれない。
幌付きで、日差しが直接当たらないようになっている。ただ、通気性とか警戒の関係かな、壁側の幌は上の方に捲られている。
エースパーティー、あたしたち、そしてC級らしい二組が同時に乗り込んだ。
一組目は、弓矢持ちの狩人の男性と、精霊術士の小柄な女性のペア。
二組目は、30代位の、鎖帷子の上に紋章の入ったベストを着込んだ男性。
縦横がっしりした体格の、板金鎧の戦斧使い。
短いローブを着込み、フードで顔を隠した、小学生位の大きさの(カンタよりちょっと大きい位かな)、年齢不詳性別不明。
狩人と精霊術士ペアは、主に近隣のフィールドで野獣や魔物を狩るらしい。毎日狩りに出て、毎日獲物を持ち帰る、を繰り返している。
あたしが最近、解体作業を教えて貰っている獲物は、彼らの稼ぎかもしれないわね。
鎖帷子の上に紋章ベストを着込んだ男と板金鎧の戦斧使い、フードをかぶった性別不明のパーティーは、主にダンジョンに潜っての探索が活動の中心。今回は、タイミングよく街に戻っていたので、ギルドマスターに参加を乞われたのだそうです。
どちらの組も、僧侶がいない。結構重要な役だと思うんだけど、専属で組まないの?
狩人組は、二人がいい、余計なメンバーは邪魔なだけ、らしい。クールだね。
ダンジョン組は、実は鎖帷子の男性が聖職者なんだって。(その恰好で?)
ただ、本職の僧侶としては、力が足りない。自分らはダンジョンの奥深くまで潜るのだけど、付いてこられるレベルの者が見つからないらしい。
あ、みーよが一度、野良聖女として参加したことがあるの?
で、ダメだったんですか、そうですか。二度と呼ばれなかったんですかー
怖くて小便漏らしてたあの聖女がなあ、と、可哀想な顔で見ないであげて。
大丈夫、あたしが付いてるから。
過去の事は過去の事ヨ。そんなに気にしないでー
ンもぅ、とか言われても、あたし、その辺は知らないし。
あーそれで、なんでコイツラがこの馬車に乗ってるんだ? という顔をされてんのか。
聞いたことあるだろ? ギルドの受付で大暴れしたオーク・クイーンの話。
あるが、コイツか、コイツなのか!
なによーその目はー!
確かにあたしがヤッたけど、あれはあたしの責任じゃないモン。
受付嬢がトロ子ちゃんなだけだもん。
なによみーよまで。ンモゥ、って、あたしも同じこと言えば気が済むの?
ん、もー!
斧使い、あたしを見る目が変わった。なによ、やるなお前、じゃないのよー
でもワカルでしょ? あんなクズども、何人いたって一緒よ一緒。
当てになるのは、強い奴だけよ。
あーそれでみんな、一緒の馬車なのねー
だろーとは、思ってたけどね。




