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Sweet Bomb NEXT  ~ 今度は異世界で大暴れっ!  作者: 白河・DG・夜舟
転移七日目っ! ~ ぼちぼち、この世界の事が分かってきたもんねっ!

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66/90

66.コーヒーは、豆からじゃないと、やっぱり美味しくないね

 明日の打ち合わせ、という理由で、みーよがあたしを外に誘う。

 ことさらに仲良さげに出ていくあたしたちに、とりあえず子供たちも安心したようだ。

 おねーちゃんたち、仲直りしたんだねー

 シスターマム、仲直りさせてくれてありがとー

 みたいなこと、おちびちゃんが言ってた。

 んーその純真さは尊いよ。


挿絵(By みてみん)


 建物の脇にある、ちょっとした広場に、みーよが杖をかざすと、アウトドアテーブルと背もたれ付きのアウトドア用イスが、光と共に出現した。

「コーヒー淹れるね」

 二人分、きちんと用意してくれる。ポット付きで、お代わりも頼めそう。

 まだ明るいので、灯はいらないね。

「タープも出せるよ」

 日よけのタープは、無くてもいいけど、あるとありがたい。

 子供たちと院長先生が、離れた処で、何事かと見つめている。

 チラホラと、スラムの住民も何人か、こちらを覗き込んでいる。

 こらこら、見世物じゃないぞー

「消音の結界を張っているから、声ははっきりとは聞こえないよ」

「丸見えの、ナイショ話ってこと?」

「まーそんなとこ」

 便利なもんね。そして、あんた、周囲の事(ふるまい)を気にしなくなったのね?

「世界の(ことわり)とかは、どーしたの?」

「ん-あれは、わたしじゃないもん」

 何でもないようにみーよは言って、にやりと笑った。

「女神さまと、取引したの」

 取引?

 ホント、何でもない事のように言うのね、みーよ。

「どんな?」

 あ、ホントに元のみーよだ。

 さりげなく、淡々と、しなやかに過ごす、あのみーよだ。

 あたしとも普通に接してくれる、力まず、焦らず、静々と暮らす、あのみーよだ。

「とりあえず、今まで通り、じゃないけど、聖女のお仕事は続けます。

 聖女を継いでくれそうな後釜も探しますし、教えます。

 なんなら、マム先生を聖女に復帰させてくださいとお願いしたけど、さすがにそれは無理みたい。穢れすぎちゃったんだって。

 でも、アリやリコットを育てるのは構わないし、わたし一人に聖女を押し付けないで、分担する分には構わないって」

「ふむふむ」

「で、わたしはわたしの意思でアーリューシャイン様にお仕えしますから、操るような事はお止めください、ともお願いしたよ」

「へー」

 やっぱり、操られてたんだ。だとは、思ってた。

 完全に操り人形(マリオネット)じゃないけど、かなりの部分、精神支配(マインドコントロール)はされてたと思う。少なくとも、精神誘導(マインドインダクション)は、やられてたよね?

「でも、女神さまをあんまり悪く思わないでね? あそこまで感応できたのは、わたし以外にはいなかったんだから。アーリューシャイン様、ちょっと焦ってたんだと思う」

 いやーそんな理由で許してなんかあげないよ?

 気持ちを落ち着かせたいので、コーヒーを口に含む。

 あれ、これ、インスタントじゃない。

 豆から挽いたコーヒーだ。多分、モカだと思う。

 なによ、随分とサービス良いじゃないの?

 みーよもあたしと同じように、コーヒーを飲む。

「わたしも、この世界に召喚された時“元のわたし”だったら、精神的に色々と面倒な事になってたと思う。

 いじめどころか、暴力や殺戮や、怖い魔物や、裏切りや、婦女暴行や、飢えや病気で野垂れ死にとか、ホントに沢山見て来た。

 聖女だから全てをありのままに受け入れる必要があって、そのために聖女としての精神的なフィルター(プロテクション)を掛けられていたからこそ、受け入れることができたんだよ」

 ただ、と、前置きして。

「コーヒーは、豆から(ほんもの)じゃないと、やっぱり美味しくないね」

「え、普通にインスタント淹れてたでしょ?」

「あれは、わたしじゃないもん。妥協よ妥協。あれでも、女神さまは結構渋ってたんだよ?」

 妥協でしたか。美味しかったけどね。

「コーヒーだけだと物足りないでしょ? この世界、砂糖が高すぎるしね」

 ちょこっと杖を振るい、個包装のチョコレートバーの入った容器を出してくれた。

 あらん、美味しー!

 こういうの久しぶりに食べたわ。やっぱ甘いものよねー

 コーヒーにピッタリ。お代わりしてもいい? ありがとー

「でもさ、世界の理(いいわけ)とか、どーすんの?」

「ふふふ、わたし、操り人形(マリオネット)真面目聖女(優等生)じゃ無くなったから、その辺は深く考えなくてもいいんじゃない?

 とりあえず、郁ちゃんといる時だけの限定ってことで、話を合わせて貰っていい?」

 まー今まで通りだね。それで大抵は通ってきたからね。

「食べ物もアイテムも、もしも盗まれたりとかしても、わたしの光の届く範囲から離れると消えちゃうから、問題ないよ。わたし自身を欲しがられる危険はあるけど、その辺は郁ちゃんが守ってくれるでしょ?」

「そりゃね。付き人ですしー」

「ありがと」

「それと、郁ちゃん」

「なに?」

「わたし、自分の意思で、本気でマム先生の後継者を目指してみるよ」

 何かを決めた時の、みーよの瞳。

 そんなに短くも無い付き合いだけど、こんな顔のみーよは、初めて見るかも。

「現代には帰るよ。郁ちゃんと一緒に帰る。でも」

「でも?」

「マム先生が失ったものを、全部取り戻して見せる。だから……」

「だから?」

「それまで、一緒にいてくれる?」

 なんだ、そんなこと?

「いいよ」

「ありがとう」

 あたしたちは、少しの間、互いの絆を確かめ合う。

 言葉は、もう、いらなかった。


 みーよは軽く微笑むと、空になったコーヒーとお菓子を一か所に集めた。

「じゃ、そろそろ行こっか。みんな心配してるし」

「ん」

 みーよはイスから立ち上がり、杖をかざして軽く振る。

 光と共に、タープもテーブルもイスも、上に乗っていたコーヒーセットもお菓子の入っていた器も、光と共に消えていった。

「オーク討伐の遠征中も、これ、出してくれるの?」

「当然でしょ? わたしたち、現代人だよ? なんでこっちの理屈に合わせなきゃならないの?」

優等生(いい子)のセリフじゃないよ?」

「やーよ、そういうのめんどくさいもん。郁ちゃんが赤点を気にしないのと一緒だよ」

「そりゃそーだ」

 二人で笑いあってるのを見て、みんな安心したみたい。

 ちびちゃんたちが走り寄ってきた。

「おーどした? コワかったの? もう大丈夫だよー」

 二人とも抱き上げて、両肩に乗せて(肩車して)あげる。

 年少さんも思春期も、次期聖女候補ちゃんも、安心したような笑顔だ。

 まーねー、コミュニティのエース二人が仲 たがいって、そりゃどうしていいのか分かんなくなるよねー

 そして、一番救われたらしい、マム院長の、憑き物でも落ちたみたいな笑顔が、とても印象的だった。

 みーよもだけど、マムちんも相当、精神的にキツカッタんだろうね。

 ホント、女神ちゃん、気の使い方が下手くそ過ぎだね。

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