60.何勝手に仕切ってんのよー
支度して、みーよと男の子たち二人と一緒に、冒険者ギルドに向かう。
建物の前の噴水広場が、なんか賑やかだ。
人の輪の中心に、かなり目立つ格好の4人組がいる。
「誰?」
「オラクルの冒険者ギルドで、エース級のパーティーは二組いるの。その内の片方ね。多分、ギルドマスターから招集されたんだと思う」
「へえー」
気にしないで建物に入ろうと思ったけど、向こうから呼び止められちゃった。
いや、人込みをかき分けてまで、声なんて掛けなくてもいいのよ?
「君らがオーク・クイーンと大化け聖女か。初めまして」
「その名前は気に入らないの。ヤメテくれる?」
ほらぁ、弟子の男の子たちがビックリしてるでしょ?
な、なによ、良く似合ってるとか思っちゃダメ!
「そうなんだ。そうか、子連れだったのか。若いのにお母さんだったのか?」
何言ってんだコイツ? 殴っていい?
「相変わらずの残念ぶりですね。お帰りなさい、シュトルム」
みーよのさりげない、そしてちょこっと毒入りの仲裁に、白い歯を見せてニヤリと笑って見せた。
シュトルム。共通語で“疾風”という意味らしい。便利だね、この脳内辞書。アーマーナイトの足に履かせるユニットに、同じ名前のがあったわ。
背はたぶん190cm前後。割とスリムなので、体重は80kg位かな。
栗色の短い髪を、前後に4本の金属帯で繋いだ額覆いでまとめ、鎖帷子の上に胸当て、背当て、腰覆いを装着。脚覆い、篭手、脚甲で、手足も完全に保護している。
盾は持たないで、背中に片手半剣を吊るしている。腰元には小剣を予備武器として所持。
完全な板金鎧では無いのは、体力の問題というより、旅のしやすさ使い回し優先という感じかな?
オープンヘルメットなので(ついでに髪も所々はみだしている。通気性を重視?)顔も良く見える。意志の強そうな、でも人懐っこそうな20代後半の、明るい茶色の瞳が、みーよを見つめ、あたしの方にも向いてきた。
みーよの事は知ってる。で、コイツはナンダ?という顔だね。
ま、それはお互い様。
期せずして、視線の飛ばしあいになるのは、しょうがないじゃん。
悪意じゃないのよ?
ホントよ?
逸らしたら負けとかじゃ、ナイノヨ?
「紹介します。わたしの付き人の、イクミです」
「そうか、ついに付き人を得たのか。おめでとう」
みーよがあたしを紹介したので、視線がそれた。あたしの勝ちね。
「でも、女性で本当にいいのか? 確か、君の所は…」
「光の女神アーリューシャイン様のお導きですので」
「そうか。それならいいんだ」
ん? なによそのちょっと残念な顔を取り繕うのは。
女性だからなんだっていうのよ。
「よろしく、イクミ君」
手を出されたので、ここは素直に握手した。
と、けっこう力強いね。そんなに握らなくてもいいじゃない?
ふうん、可愛い顔して、敵意あふれてくるんだ。
あっそう。
こっちも力一杯握り返してあげる。
お、ゲッという顔をしたぞ。
そうそう、そういう顔が見たいのよね、あたし。
んじゃオマケもあげる。
軽く引っ張ると、よろけそうなので後ろに力が入る。
タイミングよく手を放して前に押し出してあげると、盛大にスっ転んだ。
「あらーどーしたのー? お疲れぇ?」
改めて、片手を差し出して起きる手助けをしてあげる。
「ハハハ、こりゃ参った。聞いていたのと全然違うじゃないか」
なによその照れ笑い。何がどう違うっていうのよ。
でも、素直にあたしの手は取るのね。
みんなが見ている前なのに、恥ずかしいとか怒り出すとか、ないのね。
ん-わりと器が大きい男?
「お前は、すぐそうやって人を試す癖があるな」
「これから仲間になるんですから、和を乱すのは止めてくださいね」
お仲間のパーティーが、あまり心配してなさそうに声を掛ける。
一人は、多分、魔法使い、だよね?
つばがやたら広い藍色の帽子に、同じ色の、足元が隠れる位に長い外套。
樹齢がいかにも古そうな太い木の杖の先端は、どうやってんのかカタツムリの殻のように丸まっている。
顎の下には、直毛の白いひげを尖らせて固めている。
白くて長い眉の下に、亜麻色の細い瞳が、何気にあたしを観察している。
もう一人は女性。二十歳すぎかな? 身長は、みーよより少し高い。
みーよと同じ法服。ただし、色違いだね。んと、野良聖女ズの、黄色いのと同じ色だわ。で、こっちの方が作りも素材も高級。
足元が見える外套の縁に色違いの細やかな刺繍。その上に二重覆いを被っている。
頭には頭飾り。小さな黄金色の宝石が額の辺りに飾られている。
身長と同じ位の金属製の細い杖の先端に、ティアラに飾られたのと同じ黄金色の宝石が収められている。
あと一人は、極端に背が低い。カンタと同じ位。小学生というより、年少さん。ただ、足が大人のように大きい。いや、普通の大人より大きいかも?
先端が三角状で、タラリと垂れ下がった緑の帽子。その先端の飾りに白いボンボン。
顔の割りの大きな目。こっちもやや垂れ下がりな、いぼいぼがいたるところに噴き出している大きな鼻。頬がコケて見えるほど細い三角形の顔つき。
ベストの代わりみたいな、申し訳程度な皮鎧。ただ、ポケットがいっぱいついている。
脚は、短いスカートの下をストッキング? で覆っている感じ。
ん-顔はお世辞にもいいとは言えない、というより不細工。それにチビだし。
でも。なんか、雰囲気がある。
っていうか、人間じゃ、ないよね?
だってだって、なんたって耳が三角で、尖っている。人間の耳じゃない。
この世界で初めて見る、異人種、亜人?
ま、オークを亜人と見るなら、話は別だけどね。あれも耳が尖ってたね。
「いや、スマンスマン、こちらが失礼をした」
あたしがざっと人間観察を済ませている間に、人懐っこい男の方も態勢を整え直したらしい。
「君らも、召集された口かい?」
「いえ、まだです。今日は、その確認にきました」
って事は、コイツらはギルドに召集されたってことね。
お仲間うんぬん言ってたから、あたしらも参加するんでしょ? という確認ね?
「腕の立つ仲間は大歓迎だよ。さ、行ってくれ」
なーによ、あんたが呼び止めなければ、あたしらで勝手に中に入ったのに。
何勝手に仕切ってんのよー




