52.職人さんに敬意を払うことは大切
その足で、教会の建物の修理業者を訪ねて、正式に契約を結んできた。
ここでも前金を求められたんで、半額の金貨5枚を支払ってきた。このお金はそのまま材料の調達に使われるみたいで、大層喜んでいた。
例の契約用の魔法陣が掛かれた羊皮紙、ここでも活躍していた。
大きな契約は、そうやって保証されるみたいね。
そして、みーよはここでも業者さんを祝福していた。
業者さん、明日は材料を調達するので、工事はあさってから入る。ちょうど暇していたんで、ありがたいよ、と感謝していた。
朝と夕方の食事、なにか要望はありますかと尋ねると。
腹の足しになるものなら何でもいいけど、食べ応えがあるほうがいいな、と言われた。
食べ応えねぇ。
肉を調達したいな。狩りにでも行きましょうかね。狩場とか知らんけど。
あたしたちの手元にあるお金は、あと金貨5枚と大銀貨3枚。あとは小銭。
マム院長は大金貨1枚以上を持っているはず。
使い込んでいないでしょうね? まさかね。
残り金貨5枚を、施工終了後にマムちんが支払えば、お金関係は解決だね。
年少さんに、屋台で売ってる鳥の串刺しを人数分買ってきてもらう間。
「こんなに良くしてもらって、ホントにいいの?」
アリちゃんが、なんか恐縮してる。
「あたしの方こそ、お世話になってるんだし」
ま、お金は無くなったら稼げばいい。そういうもんでしょ?
「あさってから、朝夕の食事、業者さんの分も作らなきゃならないんで、忙しくなるよ。遠慮なんかしてる暇、ないよ?」
あたしはゴハンは作らないしね。
「俺は、なにしたらいいんだ?」
そーだね、そういう素直さは大事だねえ、シュラン君。
「忙しくなるんだから、アリちゃんの下働きはしてね。水汲みとか食器洗いとか、色々あるでしょ。あと、筋肉の使い方を意識して欲しいかな。こう動いたら、この筋肉を使う、なんてことを意識して欲しい」
「分かった」
ホントに分かってんのかな?
ま、オイオイ教えればいいか。
あ、年少さんたちが嬉しそうに、串焼きを抱えて戻ってきた。そうだね、君ら、焼きたてを食べるのは初めてだったね。
業者さん用の食材を市場で買い込んだので、もう1枚、金貨を消費した。
荷車に、どんどん積み込む。
値引きした分がほぼ吹っ飛んだけど、全部食べ切るわけでもないので、いいんじゃないの?
あら、アリちゃんがブツブツと、お金足りるのかしらと呟いてる。
あぁ、マム院長に似てきたんだねぇ。
心配しなくても、全然大丈夫よ?
とはいえさすがに、アギト・ナイフが戻ってきたら、ひと稼ぎしてこなきゃダメかもね。
シェラン、シャラン、シュラン、あ、シュランでいいのか、ホントあたし名前覚えるの苦手なんだよね。“ラン”が付くのは覚えたんだけどね、に、武器を替えたの? と尋ねられた。
あーこのショートソードね。
朝、あたしの鍛錬を熱心に見学してたもんね。
「アレは研ぎに出してるよ。あと、あたし好みにグリップも調整して貰ってる」
「へえ…」
そういうことも、するんだ。と感心された。
そう? 普通でしょ?
鍛冶屋の小柄で不愛想な親父と、なんか気が合いそう、という話もした。
シュランにとっては未知の話で、考えもしなかった世界らしい。
単純に、武人への憧れみたいなもんかな?
少年だねえ。青春だねえ。思春期だねぇ、は、関係ないか。
調整代として金貨1枚掛かったね、というと、目を丸くしていた。
そうだね、君らの新品のお洋服と同じ値段だね。
でもね、職人さんに敬意を払うことは大切。
敬意の払い方は、太っ腹にお代を支払う事。
で、そうするためには、稼がないとねぇ。




