48.あたし、こういう正論も正論に、弱いんだよねぇ
ようやく静かになったので。
男の子たちに軽く稽古をつけて。
チビちゃんたちと遊んであげて、お昼寝させて。
アリちゃんと年少の女の子とおしゃべりして。
久しぶりにゆっくり過ごせた、と思う。
みーよは、マム先生からマンツーマンで、さらなる聖女教育を施されていたけどね。
~ ・ ~
午後遅めに、皮ジャンボスが修理業者を連れて来た。やればできるじゃん。
業者さん、ざっと見て回って、職人2人、助手4人で1週間掛ければ、かなり綺麗にできると言われた。
職人は1日大銀貨2枚、助手は大銀貨1枚。計1日大銀貨8枚で、1週間で56枚分だね。
材料費は別途購入が必要。目安は、人件費と同じ位が相場。値引きの勉強はしてくれるそうで。
単純計算で112万円。院長先生に渡した金貨は、食費で結構使っちゃったけど、あたしたちの残りの報酬もあるし、手持ちで何とかなりそうだね。
値引きの勉強ねぇ。
朝と夜の食事をこっち持ちにするから、切りよく大銀貨100枚、つまり大金貨1枚でどう? と聞いてみた。
12万の値引き。やりすぎかなぁ?
修理業者さん、ちょっと考えたけど、それでもイイと言ってくれた。
ま、あたしの一存では決められないんで、相談はするけどね。
~ ・ ~
夕方、冒険者ギルドへはあたし一人で行くことにした。みーよは、いざとなれば光の障壁で自分を護れるし、あたしに声も届けられるから、何かあっても駆け付けられれば大丈夫らしい。
お小遣いにしては多すぎる額を持たされて、行ってらっしゃいと手を振られた。さすがにもう、お目付けはいらないだろうと判断されたみたいね。
みーよがいないので、割と速足でギルドに向かった。
中は、依頼を終えて帰って来た冒険者で割と混んでいた。これなら、獲物の解体のお肉もありそうだね。
野良聖女たちも律義に待っていたので、引き連れて受付に並ぶ。
いや、並ぶまでもなく、2階に案内された。
VIP扱いなのか、また騒がれても困るのか?
ま、特別扱いは気分がいいわ。
こんなこと来たことないぞとキョロキョロする野良聖女たちを尻目に、あたしは何度も来てるもんね、と虚勢を張ってみる。
いや、バレてるよね。ってか、あたしもなんか、職員室に呼び出されてるような気になってくる。
ほどなく、ギルド長が来てくれて、椅子に掛けるように勧めてくれた。
野良聖女たちのことをまず褒めて、ねぎらい始める。
ん-この人、ホント出来た人だなぁ。
で、あたしたちの報告を元に、オーク・アギトの討伐について領主さまに話を通して、お褒めの言葉を頂いたそうです。
あと、犠牲になった村への再調査も、冒険者に依頼してすでに向かわせていることも話してくれた。
あたしの要件、というか、野良聖女にもちゃんと報酬を分けるように言って欲しいという要望も聞いてくれた。
ギルドとしては、その辺は関知しないので、あたしの好きにしてくれていいと、正式にお墨付きを頂戴した。
つまり、ギルドとしては冒険者同士の争いはご法度だけど、実際は当人同士で解決して欲しい。それ以上は望まないし、規則も作らないのだそうで。
あたしが、そういうことが気に食わない、と言って聞かせる分には何の問題もないんだってさ。
ただ、くれぐれもギルドの中での騒ぎだけは勘弁してほしいんだって。
はーい、努力しまーす。
コイツ、分かってんのかなーという顔をされたけど、大丈夫だよ。
あたし、分かっていてもいなくても、ヤルときはヤル女だから、さ。
じゃ、なんかあったらあたしに言うんだよ、と念を押して。
かしましー野良聖女たちと別れて、ギルドの奥にある解体所に向かう。
解体に適した獲物が割と届いているようで、職人さんが丁寧にやり方を教えてくれた。
アギト・ナイフを研ぎに出しているので、手持ちの小刀が無いというと、普通に貸してくれて助かった。食事用と解体用に、小刀は二本持った方がいいらしい。あたしはそういうのを持っていないので、例の武器屋に買いに行こう。
野鳥の羽根を毟り、一角ウサギの皮を剥ぎ、鹿を吊るして骨と肉を解体する。
短時間で手際よく、が基本なので、その辺はやりながら覚えるといい。今日の所は十分だ、と褒められた。
お世辞、ではないらしい。
暇な時は何時でも顔を出していい、こういう指導もギルドの役割で、現地でキレイに解体された獲物が持ち込まれると、俺たちも嬉しいとか言っていた。
汚く解体されたものより、もう手を出さなくても良い方が楽でいいってわけ?
冗談半分で聞いてみたら。
丁寧に解体されたものを「商品」として仕上げることが、本当の腕の見せ所。なので解体は出来るだけ丁寧であればあるほど良いのだそうです。
素材が良くないと腕の振るいようがない、だろ? と、それはそれは丁寧に返された。
ごもっともです。参りました。
あたし、こういう正論も正論に、弱いんだよねぇ。




