47.あたし、お肉大好きなの
「意外にお店巡り、面白かった」
「この世界は、マジックアイテムがあるからね。普通のお店にも、掘り出し物はあるよ」
「そうねー」
マジックアイテムね。
現代に帰るためにも、パパと通信できる手段が欲しい所ね。
教会の修理代も稼がないとならないし。食費も衣服もお金が掛かる。
とりあえず、お金稼ぎしないとダメだね。
ま、アギト・ナイフのグリップ調整と研ぎ終わる作業が済むまでは、お休みだけどね。
大通に戻って、例の串焼きを皆にお土産に買ってから、教会に帰った。
相変わらずスラム住民の視線は感じるけど、お恵みをーみたいに飛び出してくるヤツは誰もいない。教育が徹底されてるねー
教会に近づくと、にぎやかな人だかりが。
敵意とか悪意は感じない。にぎやかな、というよりかしましー声だねぇ。
「院長先生、素晴らしい教育ですわー」
「さすがは、かつてオラクルの大聖女として名高いお方なんですけどー」
「慈愛に満ちて、気品があって、私たちのお手本なのー」
「そうだろうそうだろう、俺が見込んだだけのことはあるだろー」
「あなたは何の関係も無いですわー」
「野次馬は引っ込むとよろしいんですけどー」
「その下品な格好でわたくしたちの前に現れないで欲しいなのー」
「下品とは何だ下品とは。大体お前ら、聖女のくせに慎みがないだろうが。だからいつまでも野良聖女なんだよ」
「ンまーなんて失礼な男ですわー」
「失礼すぎますけどー」
「野蛮なのー汚らわしーなのー」
ホント、かしましーなー
ついでに、朝の出がけ間際に地面に転がした、花束配達人までいる。
どーしたの?
困った顔でお出迎えに来てくれるアリちゃんに尋ねる。
「ミヨさまのお友達だという他の聖女様たちと、教会の修繕の見積もりに来たという今朝の男の人が、どちらも自分の要件が先だったと言って聞かないんです」
……しょーもない理由だなぁ。
動機なんかどーでもいいよね。
野良聖女たち、ギルドにいないなーと思ってたら、こっちに来てたのか。
多分、報酬の半分を自分が所属する教会に渡すのはどこでも共通で。
婆ちゃん院長、金あるんだろう、お世辞でもなんでもいい、私たちみーよのお友達で、いっぱいお世話したんですぅとでも理由付けしてお小遣いをせびりに来たんだろうね。
で、こっちの100年早い男は、もー顔洗ってきたのかな?
無駄なのにねー
ん-なんかかんか理由付けして、あたしに顔つなぎ、かなぁ?
無駄なのにね。
「なーにやってんの?」
「あ、お帰りなさいませですわー」
「ミヨちゃん、わたしたち、お友達ですけどー」
「院長先生、お金は全部ミヨに預けてあるなんて言ってる。そうなの?」
だーかーらー同時にしゃべるんじゃないよ。
「顔は、洗って出直してきたぞ。修復の見積もりを済ませるから、俺と……」
はあ、もう。
「あんたに建物の修理の見積もりなんてできないでしょ? あたしは修理屋のツテがないか聞いただけ。あんたにそんなこと頼んでない。お仕事出来ないなら出て行って」
なによ、ビンゴなの?
そんな悲しそうな顔で見ても、ダメなものはダメ。
あーそっちの弟子の男の子たちも、同情なんかしちゃダメ。
この手の輩は一回甘い顔を見せると、スグつけあがるんだから。
まー甘い顔見せたのは、あたしが先か
メンドクサイなー
なによ、えーじゃないわよ、えーじゃ。ほら、シッシッ。
「郁ちゃん、犬じゃないんだから……」
「犬の方が、まだ聞き分けイイわよ?」
みーよがツボに入ったらしく、笑うのを堪えている。
どっかで似たような事、あったなぁ……
「ほらそっちも、院長先生を困らせないの」
「えーわたしたちミヨのお友達ですわー」
「一緒に野良聖女として頑張ってきたんだけどー」
「院長先生に、どうしたらこんな素晴らしい聖女様を育てられるのか、お伺いしたかっただけなのー」
お伺いしたのは、褒めてヨイショしてお小遣い稼ぎなんでしょ?
ん-こっちも多分ビンゴ。
でもね、マムちんも相当な渋ちんだからねー。
この人、そんなに甘くないよ。
あっちのわんこの手下がお金目当てで脅しに来ても、頑として隠し金貨の場所をばらさなかったというか、隠しきっちゃったんだもんね。
まあ、こんなところにノコノコ来られても困る。
要は、あんたらが真面目に働けて、報酬をキチンと貰えるようにすればいいんでしょ?
「今朝、ギルド長に会ってきたよ」
それで? という顔をする野良聖女ズ。
「話は聞いてくれそうな人だったし、聞かないなら向こうのせいだから、暴れてもいいという言質を貰ったよ」
イヤそんなことは言ってない絶対に言ってない、とみーよの顔に書いてあるけど。
いいのよ、あたしはあたしのやりたいようにやるだけだから。
「だから、もしアンタらが他の連中とパーティーを組んで、報酬をきちんと分けてくれないようなことがあったら」
「あったら、どうするつもりなのですわ?」
「あると思う、これからもずっとそうだったけど」
「絶対にあるもん、もうダメなの」
だーかーらー同時にしゃべらないでってば。
「あたしに言いな、そいつらにヤキ入れるから。あたし、そういうのキライなの」
野良聖女ズ、3人で何か相談し始めた。
「付き人ちゃんに何の得もない、ですわ?」
「タダでそんなことして貰えるわけないんだ、けど?」
「報酬なんて払えない、なの」
あたしはニヤリと笑う。
「ソイツらを殴っていい口実が出来るじゃん。あたし、お肉大好きなの」
ウワァなんだコイツ、という顔をされちゃったよ。
後ろでみーよが頭を抱えて、ため息をついている。
まさかあり得ない、でも、昨日の大乱闘は、まさにそういう事か。
あれ、好きでやってたのか……
コイツは敵に廻したらダメなヤツだ。
顔に全部書いてあるぞ、野良ちゃんたち。
でもまあ、これなら普通に稼げないことも無いでしょう?
あとは、メンバーと稼ぐ場所だしさ。
それと、アンタたちの実力次第。
そこまでは面倒見れないけど、これ位はしてあげる。
「夕方、解体を習いにギルドに顔を出すつもり。一緒に待ち合わせするなら、ギルド長に話を付けてあげるよ」
ま、あたしの話だけなら半信半疑でしょうけど、あの話が分かりそうなギルド長のお墨付きがあれば、何とかなるでしょ?
野良ちゃんたち、何となくだけど納得してくれたみたいで、なんとかお帰り頂いた。
黙って聞いてたボスの皮ジャン男も、もう一回強めに催促を入れると、修理業者の所に向かってくれた。もう、遅いんだからー




