42.弟子にして下さいっ!
朝ごはんは、昨日の残りにパンを追加したもの。
あと、ちびちゃんたち以外は年齢関係なく、全員にエール。
アルコール、気にしないの? ま、腐りにくいから、いいのかな?
どうも、お酒というよりは飲み物、水代わりで栄養補給みたいなものらしいわね。
食べていると、男の子たち二人に、じっと見られる。
何よヤダ恥ずかしいわね、今朝の事は忘れて。ちょっと夢中になりすぎちゃっただけなのヨ。
「イクミ姉ちゃん、俺たちを」
「俺たちを」
「弟子にしてくんないかな?」
「弟子にして下さいっ!」
あーそっちかー
顔は、真剣。真面目なんだねぇ。
二人で朝から稽古の真似事も、そうだね、昨日、遊び半分であたしが組み打ちを教えた影響だねぇ。
ん-どーしよう?
マム院長にアイコンタクト。
どんなもんでしょう?
「私は、いいと思いますよ。付き人イクミの実力は、充分に理解しましたから」
そんな、にこやかに見つめなくても。
みーよも、頷いてる。
しゃーない、面倒見てやるかー
「あたしが暇な時だけね。まあ、あたしがいなくても練習できるように、手ほどきはしてあげる」
「あ、ありがとうございます!」
「あ、ありがと……」
なによ、そこ、照れるところ?
年少さんが素直な気持ちを表しているのに、思春期なお子さまはこれだから面倒だわね。
「闘う訓練は、4種類あるんだけど。あたしが教えられるのは、個対個、個隊複数だけね。複数対複数、複数対個は、兵士になりたいとか、いつもグループで行動する場合。あたしにはその辺の指揮もやり方も分かんないわ」
「兵士?」
「そーね。兵士は集団行動をいかに揃えるか、指揮にいかに従うかが肝心だから」
「俺、兵士になんかなりたくないよ」
年上の思春期が、渋い顔をする。
「別にならなくてもいいでしょ? 自分の力を伸ばすことは、何をやるにしても必要だよ。ん-君は、付き人の訓練とか、してたんじゃないの?」
「訓練?」
そう、闘う訓練。
だって聖女様をお守りするのが、付き人のお役目なんでしょ?
闘う訓練位、するんじゃないの?
マム院長は頭が固そうだけど、だからこそ、その辺は抜かりないんじゃないの?
「訓練なんか、しないよ? だって聖女様の祝福を受ければ、大抵の敵は倒せるんじゃねーの?」
「でも、祝福無しでも、強い方がやっぱりいいよなって、兄ちゃん言ってたじゃん」
「余計な事言うなよー」
なんか、年少さんの直球を食らってよろけた思春期が、変なこと言ってるゾ?
「あれ? そういうもんなの? あたし、みーよの祝福なんて、受けたことないよ?」
男の子たちが、固まった。
女の子たちも、院長先生も、固まった。
ちびちゃんたちだけは、何のこと、という感じでキョトンとしている。
「イ、イクミ姉ちゃんさ、オークたちを討伐したんだ、よな?」
「そーだけど? あんときは、あたし、まだみーよの付き人じゃなかったし」
「……」
「……」
「マジ、かよ」
「ありえない、です」
「聖女ミヨ、説明なさい」
あれ、院長、そこ、怒るところ?
「いえ、あの、その、必死だったものですから……」
みーよがなぜか、しどろもどろだよ。
「勇敢に戦う付き人に、祝福の一つも授けないとは、あぁ全く情けない。こんな聖女に育てた覚えなど、無いのですよ!」
あーまーそれはしょうがないじゃない?
「マムちん、あんまり怒らないであげてーザコなオークはともかく、隊長ちゃんにはちゃんと技を使ったからさ?」
「技?」
「そ。あんなの大したことないって。だから、祝福? あれば便利だし、なければないで、何とかするよ?」
みんな、口をポカンと開けたまま、あたしを見つめている。
ん? あたし、またなんか、ヤラかしちゃった?
「え? だって、戦士なら、あーいう魔物と普通に戦うんでしょ? あたし、変? 普通じゃないの?」
「だって、あなたは女性じゃありませんか」
「女の子は、何も無しに戦ったりなんかしないのでは?」
「イクミねーちゃんはスゴイんだからいいんだよー」
「いいんだよー」
あれ、世代別でキレイに意見が分かれたわね。
小さい子供は性別なんて関係ない。
大きな大人は性別はとても大切と。
この世界の人は、女性は直接戦ったりしない、という認識なんだねぇ。
でもさ、図体ばかりでかくて威張るしか能のない男どもなんて、何の役に立つのよ? イラなくない?
「い、いや、俺たちもイクミねーちゃんにちゃんと教わるから」
「頑張るよ、僕」
そっか、そーだね。イラないとか、言われないようにしないとね。
頑張れ、男の子。




