41.郁ちゃん、ゴハンできたよってば
「あたま、なぜて」
「あ?」
んもう、気―利かせてよ。元気が欲しいの、あ・た・し。
「だって、ギルティにとって、あたしはまだおこちゃまのガキンチョなんでしょ?」
困惑した顔であたしを見るギルティ。
そういうお顔もステキ。イケメンはどんな顔でもステキ。イケメン最高!
「だから、あたま、なぜて」
「はぁ……」
しょうがないな、とため息をついて。
ギルティはあたしの頭に軽く手を置いた。
くすぐったくて、気持ちいい。ホントに子供に戻ったみたい。
うわぁ、スゴクいい。チョー気持ちいい。身体の中からあったかいものがホワホワのぼってきて、頭の上でフンワリはじけていくみたい。
「ああぁあ……」
思わず声が出ちゃう。恋ってステキ。なんて素敵!
「おまえ、犬みたいだな。しかもでっかいヤツ」
犬? このあたしがぁ?
でも、気持ちいいだもん。
ま、いっか、いぬでも。
この気持ち良さには、逆らえないわぁ。
もっとなぜて、もっと、もっと……
夢、か。
すっごく、いい夢だったなー
ここ、どこだっけ?
ん-寝ぼけてる。
お腹に、ちびちゃんの女の子。
背中に、ちびちゃんの男の子。
髪の毛にからんで寝ているのが、年少の女の子。
あー頭ををなぜられてた感覚は、これかー
アリちゃんとみーよは、いない。
部屋には窓なんて無いけど、明り取りの木扉の隙間が、明るく見える。
子供たちを起こさないように、滑らかに、そうっと体を起こす。
薄暗闇に目を慣らすと、いつもの制服とガードグローブ、エンジニアブーツがうっすらと見えた。下着もちゃんとある。
音を立てずにそそくさと着替えて、そっと、部屋を出た。
みーよとアリちゃんが、朝食の支度をしている。
男の子たちは、まだ起きてきていないのかな?
「おはよー」
「あ、おはよう」
「おはようございます」
元気だねぇ君たち。
「ちょっと周囲を散策してくるね」
「はーい」
一言断って、建物を後にした。
あたし、朝は結構早起きなんだけど、慣れない異世界で、初めて建物の中で寝たからかな。
あたしにしては、寝過ごした方かもしれない。
やっぱり、きちんと寝るって、いいもんだね。
伸びをしながら外の中庭に出ると、先客が二人いた。
男の子たちだ。
「おはよーはやいねー」
「あ、おはようございまちゅ」
「おっす」
年少さんは、上手く言えなくて噛んだらしい。
中坊は、ちょっと照れた感じで、短い挨拶だね。
「稽古?」
二人でやると言えば、そんな感じかな?
「は、はい。兄ちゃんが相手してくれるって……」
「べ、べ、別にそんなんじゃねえけど……」
別に照れなくてもいいじゃない?
「あたしも軽く体動かしていい? 邪魔はしないから」
「いいよ、そんな断らなくても」
だよね。
ちょっと離れて、軽くイメージしながら体を動かす。
今んところ、最初に出逢ったオークども以上に強いのは、いない。
5体、隊長もコミで、集団で襲ってきたイメージを想い浮かべる。
右廻し蹴りから水車蹴り、ドラゴンキャノンで隙ができたあたしに覆いかぶさってくるヤツがいるのは避けられない。ってか、重くて吹っ飛ばせない。
ん-重量は大切だねえ。やっぱ、さすがに素手では無理か。
んー今の無し無し。もっと集中集中!
軽く体を振って、意識を高める。
もっとコンパクトに、もっと速く正確に。
右のオークに崩拳、反動がコワイけど、我慢して腰元を探る。
短剣が、無い場合はどうしようか。
一回捨てて、様子見っと。
うわぁ隊長がシミターを抜いて突っ込んでくる!
横になぐの好きだね。しゃがんでかわして、蹴り、じゃ止まらないか、武器がないとダメだね。
オークは隊長以外、全員素手だとぉ?
きびしーなー、それに一切油断してくんないし。
あーんアギト・ナイフは研ぎにだしたままなのよー
誰か武器貸してーって言ってもダメなので。
追い込まれているように下がって下がって。
隊長ちゃん、追ってきてくれてるので。
今よヒップアップボンバー!
よっし潰した、盾でダメージは入らなかったけど、転がしてやったわ。
暴れるなそらその腰の物をよこせーへへ、奪ってやったぞー皆殺しにしてやるわっ!
……何よ今忙しいのちょっと待っててすぐ済むから。
ん?
「郁ちゃん、ゴハンできたよってば」
地面を転がるあたしを、みーよが冷たい目で見つめている。
男の子たちも、なんかこの人大丈夫かという目で、引き気味に見つめている。
あれ? あたし、やっちゃった?
「お稽古もいいんだけど、周囲が見えてなさすぎ!」
「テヘ」
まーそーだね。反省反省。




