40.ん-子供な発想だねぇ
男の子たちも水汲みとか、セッティングとか、色々とお手伝いしてくれた。
思ったより早く、食卓が整ったみたい。
辺りは夕暮れが濃く進んでいるけど、みーよが食卓を光の奇跡で照らしているので、ちっとも暗くない。
みんな席に着き、院長先生が女神さまに感謝のお祈りを捧げる。
こういうの、やったことがないので、緊張するわ。
みーよは、ごく当たり前に頭を下げている。ホントにコッチの人になってるんだねぇ。
スープは、いつもよりたくさん干し肉を入れているので、ずっと濃い味なのだそうです。あたしにはチョット物足りないけど、ま、慣れるでしょ。
固いパンを浸して食べてみると、そんなに不味くはない、というか、割とイケル。全粒粉なので、パン自体が香ばしいんだよね。スープの薄さを補完している感じ。
あ、食器はみんな木製。削って磨いて形を整えてる。
ちなみに上流階級は、陶器を使うんだって。
で、ナイフというか、小刀を使ってパンを切ったり、木の実や果物を取り分けたりしている。
小刀で刺して、そのまま口にも運んでいるわ。ナイフ替わり、フォーク替りって事ね。
ただ、小刀も使うけど、基本は手掴みだね。手洗い用のフィンガーボールも用意されているし、手を拭く小さな布もある。
あたしには食べづらいな、と思ってたら。
みーよが気を利かせて、箸を渡してくれた。やっぱり、これじゃないとね。
器用に漬物を摘まんで見せるあたしに、みんな驚いた顔をしている。
箸がそんなに珍しい?
みーよが他の子と同じように、小刀を使ったり、手掴みしているからかな?
「彼女の民族の習わしなのです」と説明されて、納得しているみんな。
彼女のって、みーよ、アンタも同じでしょ?
みんな食べ終わって、すっかり満腹になって。
なんか幸せそうだねぇ。
みーよとアリちゃんが、果実水とちょっとしたお菓子? みたいな木の実を用意してくれた。
院長先生は、みーよから2杯、3杯とワインを勧められて、すっかりご機嫌だ。酔うといつもの頭の固い部分がほぐれて笑い上戸になるらしい。
おつまみのチーズも何年ぶりだろうと、にこやかに頬張っては、ワインで流し込んでいる。
あたしも付き合いでエールを飲みながら干し肉を齧っているけど。
どうもあたし、お酒に相当強いらしい。こんなのじゃ、ちっとも酔わないわ。
普段は、日が落ちる前には質素な食事を済ませて、ランタンのろうそくを節約するためにも早めに眠りにつくんだそうだけど。
こんな御馳走を食べた後で早く寝てしまうなんて、勿体ないらしい。
ん-子供な発想だねぇ。
で、そういうことを叱りそうな院長先生にワインをたっぷり貢いで、お目こぼしを貰おうという作戦なのですか。やりますな、みーよ司令官。
昔はこんなワインなど、いくらでも飲めたのに。ああ、貧しいのは嫌ぁ、と、さっきまで笑ってたのに、泣きだしちゃったよマムちゃん。
と思ったら、ウフフと笑ってまた飲むし。マムちん、お酒弱いのね?
ま、今日くらいは大目に見てあげるよ。いままで色々と頑張ってきたんだもんね。
~ ・ ~
「郁ちゃん、寝る前にシャワー浴びるでしょ? 着替えも置いとくね」
マム先生を専用の寝床に寝かしつけると(院長室の隣に小さな寝室があった)、子供たちも急に眠くなったらしい。
そうでしょう、習慣には逆らえないんでしょう。
あたしはそーでもないけど、みんなに合わせるわ。
「外?」
「中で大丈夫よ」
女部屋の中に、みーよがアウトドア用のシャワールームを出してくれた。
女の子たちが目を丸くしている。ま、そりゃそうだよね。
流れた水が下のタンクに戻るらしく、部屋自体は汚さないバージョンらしい。
「彼女の民族に伝わる、清浄の部屋なのです」
なんか、みーよがうまい事を言って、言い聞かせている。
ま、嘘ではないよね。
女神ちゃん、ダメならダメで、こんな奇跡は起こしてくんない。
あたしがいるから、の、サービス。大盤振る舞いなのかしらね。
要は、世界の理とやらを壊さなければオッケーらしい。
下着も外してお洗濯用の回収袋に、制服ごと入れちゃう。
気分よくシャワーを浴びて、一枚布のポンチョ? を上から被る。
替えの下着が無いけど、別に用意されている薄い腰布を巻け、ということらしい。
ま、外じゃないから、いっか。多分、この世界の下着なんだろうね。
シャワールームから出ると、女の子たちが興味津々で中を覗きたがる。
「いけませんよ、神聖な部屋なのですから」
そういって、みーよはさっさと片づけちゃった。
光と共に消えるシャワールームを、感嘆の瞳で見つめている。
分かる、何度見てもビックリするよね、これ。
で、あたしがシャワーを浴びている間に、子供たちもみーよも寝る支度を整え終えているようだ。
寝床は、互いの物をくっつけて大きくなっている。
「くっついて寝ていい?」
「寝ていい?」
ちびちゃんの女の子が、甘えた顔であたしに言う。男の子も釣られるように、言う。
「私もー」
「私もいいですか?」
年少組の女の子も、アリちゃんもか。
「わたしも、いい?」
みーよ、あんたもか。
「いーよーみんなで寝よう」
あたしたちはひと固まりになって、安らかに眠りに落ちた。
(つづくっ!)




