36.早い者勝ち
みーよと子供たちと荷車が敷地の中に入り、みんな院長先生に抱き付いて心配していた。
みーよの指示で、ゴロツキどもを一列に並べて正座させる。
みーよが前かがみになり、祈りの姿勢を取ると、杖の先端が輝き始める。
マルチ・ヒール。
これ、ホントスゴイね。光の届く範囲なら、院長先生も、小さな子供たちも、そしてゴロツキたちも、傷が癒されていく。
治された当人たちも、周囲のスラム住民たちも、かなりビックリしている。
「簡単な傷は癒せたと思います。まだ痛い所がある人は、申し出て下さい」
「は、はい……」
あたしが腕を折った男が、反対側の手を上げる。喉の手刀は、癒されたみたいね。
あ、睨まれた。やりすぎだったか。テヘ。
みーよの治癒術で、腕も無事に治ったらしい。さすがだね。
あ、あたしがやりすぎただけか。反省反省。
まあ、死人が無くて良かったよ。あ、アンタらの事じゃない、教会の住民たちの事ね。
それにしても、あまりにも鍛えなさすぎ。それじゃ荒事なんて無理だよ。
「シスター・マム。この後はいかが致しましょうか?」
みーよが、責任者でもある婆ちゃん院長にお伺いを立てる。
まぁ、一番怒っていいのはアンタだもんね。
「光の女神アーリューシャインの庇護にあるこの教会内での傍若無人、到底許されることではございません。然るべき処罰を求めます」
あー怒ってるよ。
まーそーだよね。
最初に会った時、結構な頭固い人だなぁとか思ったもんね。
「付き人イクミ。あなたの働きは素晴らしいものがありました。感謝いたします。この者たちをどうすべきか、お任せしても宜しくて?」
へえ、あたしに振るんだ。
ん、でも、それ、いいアイデアだね。
おっけー、婆チャンセンセ。任しといてー
みーよが何か言いたそうだけど、婆ちゃんセンセがイイって言ってるんだもんねー
大丈夫、折角癒したのに、また怪我なんかさせないよー
「スラムのみんなーコイツら、身ぐるみ剥いじゃっていーよーあたしが許す」
成り行きを見守っていたスラム住民が、何事なのかと、ギョッとしている。
剥ぎ取られると言われて、正座している男たちの方も、ギョッとしている。
「早い者勝ちねーコイツらが抵抗したら、あたしが殴るから大丈夫だよー」
オマエら、剥ぎ取ることは得意でも、剥がれる方の気持ちになった事はないんでしょ?
丁度いい機会だから、タップリと味わっていきなよ。
早い者勝ち……
一人、飛び出すと。
あとは湧いたハエのように、連中が一斉に群がった。
なんか悲鳴が聞こえるけど、無視無視。
なんだっけ、サバンナのハイエナだっけ? リカオンだっけ? 獲物を生きたまま貪るんだっけ?
人間が人間を貪るのって、初めて観たなー勉強になるなー
2分経ってないと、思う。
かろうじて腰巻とサンダルは勘弁して貰えたらしい。あとは素っ裸、なんにも無し。
キレイさっぱり、だねぇ。
婆ちゃんセンセが、堪え切れないように笑っている。
釣られて、子供たちも笑っている。情操教育はどこ行ったんだー
みーよも、たしなめなければと思いつつも、笑っている。
誰だ、こんな非道い事するのは。
スラム住民だよね?
あたしじゃないよ、無いもんねー




