35.でも大丈夫。あたし、そういうの気にしないから
さて、どーしよーかなー
8人いるけど、全員シロウト。なんたって油断しすぎ。
人質がいるけど、いきなり殺されることは無さそう。
まあ、できればこれ以上痛い思いはして欲しくはないわね。
心の傷とかも困るので、徹底的に完膚なきまでに男たちを懲らしめた方がいいわねぇ。
徹底的に。うーん、甘美な響きだわぁ。
にやにやしながらずんずん近づくあたしに、男たちは戸惑い始める。
「ひ、人質がいるんだぞ、分かってんのか⁈」
「だから、交渉成立、勝った方が総取りだってば」
分かってないのはそっちの方。だって油断してるんだもん。
それなら、もう最初からあたしの間合いだもん。
プロなら、こんなことは絶対にない。だから、間合いの取り方はスゴク慎重になるのにね。
はー全然わかってないなー
こんだけシロウトだと、ただ殴るんじゃ面白くない。
そうだねぇ、あたしは女優、活劇女優の線で行きましょうかー
最初は、見栄え充分隙だらけのなんちゃってな技でいいよね。
まだちょい離れてるけど、いっきまーす。
「もしもし、あたし郁ちゃんだよ。今から殴りに行くね!」
旧時代の固定電話を耳に当てるギャグをカマしたんだけど、共通語めぇ、半分しか翻訳してくんないじゃない。ケチめ。
離れた処からこぶしを振りかぶって、今から殴るよ、と。
通称“テレフォンパンチ”
プロなら絶対に貰わない技。
でも、あんたはシロウト。
だから、当たる。
戸惑っている間に、反応される間に、人質とか言ってる左の男に一気に詰め寄る。
そのままスリークォーターの軌道で上方からぶん殴った。
その場できれいに上下に一回転して、男はピクリとも動かなくなった。
「もしもーし、死んでないよね?」
死なれると困るなーとか思いながら。
右の男にも、スカートが大きくめくれるのも構わないで、振りかぶりのスピンハイキックをお見舞いする。
ちょうどこちらに向かってきたところなので、カウンター気味にヒットし、きれいに廻りながら吹っ飛んでいった。
「リーダーちゃん、君は最後のデザートにしてあげる。楽しみにしててね」
硬直しているリーダーの顎を軽く掴んで、耳元に囁いてあげた。
ま、人質じゃなくなってるけど、言い張るならそれでもいいよ。
手ぇ出したら、死んだ方がマシと思わせてあげるから。
あ、もうやってるのか。じゃあ、確定でよろしくね。
こっちに向かってくる男たちに、あたしの方からミサイルキックをお見舞いする。かわされると無防備で、飛んでいる最中も無防備という見た目の派手さしかない技だけど、そこがいいのよロマンなのよ!
きれいに決まって吹っ飛ぶ男。
即、左から来た男の腕をすり抜け、背後に回る。胴体に腕を回し、そのままジャーマンスープレックスを決めた。
地面が揺れる音と共に、男の反応も消える。
ホントに殺してないよね?
一応、手加減してるんだけどねぇ?
それにしても、弱すぎるなぁ。
ま、脅す威張る奪うしか能のないゴロツキだもんね。ガチンコになると、張りぼてぶりがバレちゃうのかしらん。
そんなザコが人数を集めたって、なんの意味もないのにねぇ?
真面目に働けばぁ?
なんて思いながら、地面に転がったままのあたしを見てチャンスと思って襲い掛かる男。
伸ばされた腕を掴み返す。そのまま頭と肩に両足を回して地面に引きずり込んだ。足を交差させて、ロック完了!
こんな可愛いジョシコーセーと寝技でイチャイチャできるなんて、感謝しなさいよっ!
腕ひしぎ十字固めを決めて、そのまま折っちゃう。
悲鳴を上げている男を振りほどいて、喉元に手刀を入れた。ウルサイのは嫌なの。
あわくって走ってくる他の男に、飛び起きざまのラリアットを決めてひっくり返らせる。
戦意を失って逃げようとする別の男の背中を捕まえて抱き付き、耳元に「どーこーいーくーのー」と囁いた。
ヒェエとか言うのを無視して、両足の間に腕を伸ばし、横投げ気味に持ち上げた。バタバタ暴れるので、地面に叩きつけるとおとなしくなった。
死んでないよね?
「オシマイかな? あとはアンタだけだね」
リーダーの男に近寄ると、腰が砕けたのか、しゃがみこんでしまう。
あら、失禁してるじゃない。臭いよ?
でも大丈夫。あたし、そういうの気にしないから。
最後のデザートですもの、美味しく丁寧に頂かないと、ネ。
「郁ちゃん、もう、やりすぎだってば」
「てへ」
うん。あたしもそう思う。
でもね、こいつら、弱すぎなんだもん。




