28.全員にエール飲み放題!
「お待たせしました。こちら、お確かめください」
あたしとみーよは、高級ぽい革袋に収められた金貨を確かめる。
旧時代の映画だと、純度を確かめるために咬んでみたりしてたけど、あれ、汚いよね?
みーよが、金貨袋を手に取って、軽く祈りをささげている。
あ、女神さまに鑑定して貰ってる?
「確かに、拝領致しました」
深々と頭を下げるみーよ。ん-なんか聖女っぽい。ってか、本職か。
振り返り、野良聖女ズに近寄る。
「今回はありがとう。助かったよ。これ、報酬ね」
惜しげもなく、金貨を1枚ずつ、彼女たちに手渡す。
「うわ、いいの!」×3。
お、声が揃ったね。
「や、やったーこれでお姉さまに大きな顔をされなくて済むですわ……」
「やっと溜まってたツケが払えるんですけど……」
「まともな生活ができるなのー(泣)」
「う、う、嬉しすぎるですわ……」
「生きてて良かったんですけど……」
「あ、ありがとーなの!」
あいかわらず、かしましーなーこの娘たち。
そんな彼女たちに羨望の眼差しを送る、男ども。
いや、あんたら、あたしたちの悪口しか言ってないじゃん。
野良聖女たちは、それなりに仕事したよ?
ま、あたしの後始末だけど、さ。
んもーしょーがないなー
「みーよ、あたしにも金貨貰える?」
「いいけど?」
1枚貰って。
受付の横の、バーカウンターに向かう。
「エールは1杯銅貨2枚ね?」
「そうだが?」
職員とバーテンダー(で、いいんだよね?)のお兄さんを兼ねている男に話しかける。存在が薄くて分かんなかったけど、最初にここに来た時、男たちがエール飲んでたもんね。
金貨を見せて。
「ここの全員にエール飲み放題。足りる?」
「十分だが、釣りは出ないぞ」
「いーよー」
指で弾いて放ると、ナイスキャッチで受け止めた。
エールは銅貨2枚、200円。金貨は10万円分の価値。
ざっと500杯分だね。
「みんなーあたしのおごり。お金か酒が無くなるまで、エール飲み放題ね!」
大声で叫んであげると、男たちの目の色が変わった。
うおーとかやったーとか叫んでる。
早速、受付嬢たちがフロアに出てきて、みんなにエールを配っていく。受付と給仕を兼ねてるんだ。
この辺は、受付嬢たちの判断が早い。
デカい稼ぎがあった時、その場にいる全員にご祝儀っぽいことをする。こういうこと、多分だけど、割とあるんだと思う。
全員に行き渡ったのを確認して、あたしは躾の終わった男どもをぐるっと眺める。
そばに、みーよも来る。
「オーク・アグフの討伐とその恵みに」
「光の女神アーリューシャインの御加護に」
「乾杯!(アズラエール!)」
「乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
みんなで一気に飲み干した。
ん-乾杯は、共通語でアズラエールというらしい。
告死天使?
「エール」はそのまま。「アズラ」は天からの、という意味らしい。
エールで酔っぱらって天国からのお迎えが見えるねーとかいう意味?
わからん。ま、いっか。
暇でダラダラしてたのが、変な女から大乱闘を仕掛けられて、聖女ちゃんたちに癒されて、エール飲み放題のおごり。
君ら、なかなか大変だねぇ?
ま、飲み放題と分かれば、腰を据えてワイワイと楽しんでる図太い根性があるんだから、余計な心配はいらなさそうだね。
ちなみに、エールの味は薄くてちょっと苦くて、でも、小麦の香りがビンビン来る。
かすかにアルコール入り、だと思う。あと、発酵臭が割とある。
普通に、美味しいと思う。水よりはるかに美味しい。女神さまに頂いた、コルク抜き無しのジュースは別格だけどね。
ん-、うんと濃い麦茶、が一番近いかなぁ?
あたし、これ、いくらでも飲めると思うよ。
~ ・ ~
「郁ちゃん、わたし、教会に戻りたいのだけど」
「いーよー」
みーよが聖女に認定された教会だね?
あたしも気になる。
タダなら幾らでも何杯でも飲んでやると息巻いている野良聖女ズに挨拶して、みーよはチョコチョコとした足取りで冒険者ギルドを出た。
アンタら、さっきまで入りづらそうにして、外の噴水前のベンチに居座っていたのに。もうすっかりテーブルを占拠しちゃってるよ。
ホント、図太いねぇ。
でも、構ってる場合でもないので、みーよの後を追う。




