278.「いつも優しいよ?」
オノ村からは普通に走って30分。飛ばせば半分。
普段は通行する人や馬車に配慮して、スピードは上げないけど。
誰もいないんで、フルスロットルで吹っ飛ばす。
街道の先に、オラクルが見えてきた。
何本もの煙。
あたしたちの大切な都市が、燃えている。襲撃されている。
さらに近づいていくと、正門の近くにオークどもの群れを見つけた。
数はそんなにいない。30匹くらいの小隊だね。
こっちに気づかれた。
「みーよ、降りるよ」
「うん」
あたしたちは車を降りた。
そのままみーよが、杖の奇跡でトラックを収容する。
オークどもが何か叫び声を上げながら、10匹位、こっちに突っ込んでくる。
距離100メートル。
「弓」
「うん」
みーよの奇跡の杖から、あたしの手に、最近手に入れたばかりのクロスボウが出現する。
矢筒は地面に固定できるように、三脚の構造になっている。
弓の下部のボルトレバーを引き、金属製の細くて硬い矢をセット。
そのまま、先頭のオークに向けて発射!
まず1匹。
命中確認もしないで、即ボルトレバーを引く。
第2弾、発射。この間、5秒。
2匹目。
もう、他のオークが迫ってきている。
もう一発、打てるか?
「光の女神アーリューシャイン様、あなたの信徒の……」
みーよが、光の障壁の準備を始めている。弓を出して貰った分、障壁を出すのが遅れたんだね。
弓じゃ間に合わないね。じゃあ!
あたしはそのまま、オークの群れに自分から突っ込んでいった。
ぶん回される大ナタをギリギリでかわし、3匹目の腹をアギト・ナイフで切り裂く。
4匹目のアキレス腱を断ち切り、みーよに襲い掛かろうとした5匹目の背後から首を半ば断ち切った。
ここで光の障壁が作動。
6匹目の大ナタを、アギト・ナイフの背でいなして、そのまま脇腹を貫く。
7匹目は懐に入って、顎の下をナイフで引き裂いた。
ついでに太ももの辺りに一撃を入れて、倒れてくるその陰を利用して8匹目に取りつく。
あたしの身体を振り回そうとしてきたけど、耳を掴んで力を籠め、ナイフを持つ腕を廻して一気に首を掻き裂く。
ギャアギャアわめく頭を蹴飛ばして上空に跳び、真上から9匹目の頭上にアギト・ナイフを刺し入れた。
逃げ出そうとする10匹目の背後に取りつき、心臓の辺りに一撃を刺しこむ。
ザコどもめ。誰を相手にしてると思ってたんだ?
みーよの所に戻りつつ、オークどもにトドメを入れていく。
出したままのクロスボウを手に取り、300メートルほど離れている本陣に向けて、狙いを定める。
これはただの牽制でいい。
1発、2発、3発。
立て続けに撃ち込んでから、矢筒を腰袋のベルトに挟み込みつつ、光の障壁を解除したみーよと一緒に走り出した。
4発目を仕込んで、さらに発射。
まだ結構、数だけは残ってるオークどもだけど、戦意を完全に失ったみたい。
散り散りになって逃げだしていく。
5発目、6発目を逃げる背後に撃ち込んだところで、残りは射程外に逃げられる。
このまま追いかけて全滅させたいけど、今はそれどころじゃない。
奴らが固まっていた地点まで行くと。
いたるところに、衛兵たちの遺体が転がっていた。30人位だね。
所々、手足がもがれている。
鎧も剥ぎ取られかけており、血の匂いが辺りに充満していた。
「生存者はいるか!」
大声をかけて見たけど、反応なし。
「みーよ、どうする?」
「葬還してあげたいけど、教会の方が先ね」
「おっけー。祝福を貰える?」
「うん」
急ぎたい気持ちをとても堪えて、弓矢を収納して貰い、代わりに光の祝福を授かる。
手足に宿る、光の女神ちゃんの力と勇気。
肩に集めて、ファイヤーバードシステム。
足に集めて、ロケットブースター。
手には、フィールドパンチ・ユニット。
準備完了。
「教会に急ごう。掴まって」
「な、なるべく、優しくね?」
「いつも優しいよ?」
顔がこわばってるみーよを、お姫様抱っこする。
片腕をあたしの首に廻して貰って、もう片方は杖を握りしめて。
「いくよ」
「は、は、はい……」
ファイヤーバードシステム、オン。
ロケットブースター、点火。
肩から轟音と共に炎が吹きあがる。
両足の下からジェットが噴射され、身体が浮き上がる。
前傾姿勢を保つと、あたしたちは勢いよくオラクルの破壊された正門をくぐって、大通りに突っ込んでいった。




