277.「行くんでしょ?」
休憩終わり。
サンドイッチ、ホントに美味しかった。
コーヒーで、眠気も吹き飛んだし。
来た道を、そのまま戻るあたしたち。
オークの大軍の宿営地だった川辺も無事に通過し、最初にみーよに召喚された集落も通り過ぎた。
しばらく車を走らせていくと、オノ村が見えてきた。もう少しだ。
と、みーよの様子が、なんか変。
「みーよ?」
「今、オラクルの教会に掛けてあった聖域に、異常を検知したの」
ルームミラー越しのみーよの顔が、蒼白になっている。
「異常?」
「うん、何者かに襲撃を受けていて、防御結界が立ち上がってる」
な、なにそれ?
「この結界は、よほどの事がないと作動しないの。かなりマズイ事になってる」
マズい事……
あたしの背中がざわざわし始めた。
「急いで戻ろう!」
「うん」
あたしは、アクセルを目一杯に踏み込んだ。
トラックがあたしの要求に応えて、うなりを上げる。
オノ村が、オークどもに襲われている。
5匹。オーク得意の分隊行動だ。
チャチな構造の、木製の正門の前に固まっている。
2匹が小屋の扉でも剥がしたのか、盾代わりに上に掲げ、その陰でもう2匹が門を壊そうとしているらしい。もう一匹が見張り役で、少し離れたところにいる。
正門の上から何人かが弓や石で応戦しているけど、盾代わりの扉に阻まれて効いてないね。
門の向こうでは、門を突破されないように住民が抑えていると思うけど、これは時間の問題だね。
あたしが行けば、2分で始末できる。
その余裕があれば、だけれど。
大切な教会やみんなの命と、それほど関わりの無い村の人々。
比べるべくもない、んだけど。
「行くんでしょ?」
みーよも、止めないんだね。
「オラクルの教会の救援が、先なんだけどね」
言葉にしてみたけど、身体は反応しない。
即断即決。目の前から目を背けない、なんてカッコイイもんじゃないのは、よく知ってる。
見捨てられない。そんだけ。
車をなるべく寄せて、そのまま飛び出す。
見張りのオークが叫んでいるんで、奇襲なんて出来ない。
構わない。
こっちも叫びながら、一気に距離を詰める。
スリングを出す暇もなく、真正面から突っ込んだ。
バカなオークが、上に掲げていた扉をこちらに向けたもんだから、正門からの弓や石が、門を壊そうとしていたオークどもに当たるようになって、悲鳴が上がっている。
あれ? と振り向いたオークの頭を目がけて、掲げられた扉の上に跳躍し、首元にアギト・ナイフを刺し入れたまま、向こう側に飛び降りる。
派手に飛び散る血しぶきをかわしつつ、相方のオークのぼたっと膨らんだ腹にナイフを突き入れてねじりこむ。
苦痛の叫びをあげるオークを尻目に、見張りオークに襲い掛かる。
抜刀した大ナタの一閃を跳んでかわしつつ、左手でヘルメットから突き出た角を掴んで、背後に絡みつく。
武装してる。コイツ、コマンダーか。
どうでもいいや。
眼の辺りにナイフを一撃。
暴れて振り回す手を避けながら飛び降り、武装が行き届いていない足元のアキレス腱を断ち切る。
立っていられないようでバッタリと倒れる武装オーク。
あちこちに矢が刺さり、石をぶつけられた痕を残しながら、門を襲っていたオーク2匹、こっちに、隊長(多分)を助けに走ってくる。
真正面からこっちも走り寄せつつ、わずかに右側に進路をずらす。
同時に、右手のアギト・ナイフを左手にスイッチ。
なんか、ギョッとされたけど。
ついでに左のオークが、右の奴に邪魔されてあたしを襲えないでいるけど。
関係ないよね。あたし、右でも左でもナイフを振るえるのよ?
上、下、上とフェイントを3つ入れて、走りながら突き刺す振りをすると、足元がおぼつかなくなってそのまま転倒してくれた。
相方の転倒に驚くオークの真正面に、転倒したヤツの頭を踏みつけながら、みぞおちあたりに深々とナイフを刺しこむ。
左腕を引き寄せると同時にヤツの肉をたっぷりと切り裂いて、そのまま転倒れているオークの首に突き刺した。
全員、戦闘不能。任務完了。
「後は任せた。オラクルが危ない。救援に向かう!」
村の正門の上で見守っていた人々に叫んで、大急ぎで車に乗り込む。
アクセル全開、オラクルへ!




