272.郁ちゃんが一番の荒くれ者でしょ?
大食堂の厨房に、お邪魔する。
あれ、どうされました?
いや、料理長いるかなと思って。
休憩に入ってますが、呼んできましょうか?
いやいいよ。ここのゴハン美味しかったんで、そのお礼。
分かりました。伝えておきますね。
当番らしいメイドさんに伝えて貰って。
そんな調子で、みーよと一緒に城のあちこちをウロウロして回った。
どうも、みーよが大人気らしく。
わざわざご挨拶だなんて、誠にありがとうございます。
本当に感謝しております。
肖像画を描き、救国の聖女として飾らせて頂きます。
みたいなことまで、先々で言われちゃった。
午後から、街に出てウロウロ。
みーよが気になっていた傷病者の収容所も、だいぶ静かになっていた。
生命と死の裁定者を主催する高位の僧職者は、都市を逃げだしており、まだ帰還していないのだそうです。
弟子のうち、位が高いものが代行を務め、死の間際にある兵士や住民を安らかに葬還していったのだとか。
理力が足りなくて、かなり無理して行っていたけど、寄り添うに至らぬ者はそのまま解放して、なんとか目途がつきそうらしい。
この世界、土葬や火葬よりも、僧職者が葬還する方が主流の葬儀らしいのよね。で、本来はお金を取るんだって。
死体をそのまま放置すると、不死者となる場合があるので、できれば遺体はそのままにはしたくない。
そういえば、みーよも同じことが出来るんだよね?
できるけど、本業じゃないので、あまり好んでは行わない。
戦いや出先での遭遇であれば、葬還は積極的に行うけど。
こういう専門の教会があるなら、わたしが手を出すことではないのよ。
そうなんですか。
でも、手が足りなくて困っていそうだったら、手伝うつもりでいたんだけどね。大丈夫そうね。
そうなんだ。根がまじめだもんね。
そんなこと、ないんだけどね。関わっちゃったからね。
頬に手を当てながら、少し寂しそうに呟くみーよ。
人間の死に関わることを避けて通れない聖女の義務というか、宿命なのかしらん。
基本は人間も魔物も、葬還という意味合いは同じなのよ。
人間は葬還。
魔物は浄化。
肉を持つ生き物を元の塵に還すわけだから、やることは同じ。
そこに意味合いを持たせるのが生命と死の裁定者たちなのよ。
ふーん。
人は一人で生まれ、一人で死んでいく。
そこに寄り添うのが、彼らの使命だから。出産時のお世話と、葬儀の取り仕切りを主な生業にしている宗派なのよ。
なので、他所の宗派が敷地内をウロウロされるのは、あまり気分が良くないみたいね。
ふーん、そうなんだ。
青の教会では、むしろ手伝ってくれーて感じだったけどね。
まあ、お父さんはあまりいい顔してなかったか。それが当たり前なのか。
おっかさんが、ああいう性格だから捌けた態度を取ってるだけか。
奴隷管理区域に設置されていた救護用のテントも、ほとんど撤収されているね。応急処置が終わって、それぞれの居場所に戻っていったみたい。
商売を営むお店も、都市の外から商売にくる出店も、活気を取り戻しつつある。
街に刻まれた戦火の後はすぐには消えないけど、生きて行く人々の活力は戻りつつあるみたいだね。
後、壊滅したはずの冒険者ギルドが、もう再建されていた。
戻すのが速いなぁ。
覗いてみると、皆、あたしたちの事はよく知っているみたいで、拍手と歓声が沸き起こった。
中身は荒くれどもなんだけどね。
郁ちゃんが一番の荒くれ者でしょ? とみーよに言われちった。ごもっともです。
カウンターは壊れたまま。適当に上から板を張って、ごまかしてますね。
イスとかも同じ感じ。突貫でとりあえず直しました。
依頼掲示板は、ちゃんとしてるね。依頼がびっしり張られている。
だけど、引き受け手がそんなにいないからね。死んだり怪我したりした冒険者が多数だからね。
取りあえず、受付で仮の報告をしておく。冒険者ギルドは国境に関係ない活動をしているので、自分たちが持っているギルドカードに、これまでの記録を残して貰えるらしい。
正規報告は、オラクルに帰ってからだね。
人数は少ないけど、ギルド復帰祝いで、みんなで飲んでね。
そう言って、全員にエール飲み放題のサービスとして、金貨1枚をおごり。
復興に乾杯!
ジョッキを空にして、皆に見送られながら、ギルドを後にした。




