263.「青年、やっぱりコイツ、喰っていいよ。証拠隠滅しちゃおう」
みーよが光のリングで拘束した野盗どもを、トラックにぶん投げていく。
逃げ出そうとしたら、今度こそ竜人に喰わせるといったら、心底怯え上がっていた。
屋根から落ちた狙撃手は、肋骨と右足が折れていたので、みーよがヒールをかけていた。んもお、こんな奴にまで情けをかけるのか。
で。
持ってたクロスボウが、かなりいい装備なんだよね。
硬い骨で出来ているみたいだけど、金属のような弾力もある。
複合弓、つまりコンポジットタイプで、しなり部分を逆に組み合わせることで、短いながらも弦圧を強めているね。
弦も特殊。普通の動物のものではない素材を縒り合わせてあるらしい。
矢は先が鋭く尖った、細い棒みたいな金属。さすがにこれは、鋼鉄製かな?
先端を地面に押し付けて、下部にあるボルトレバーを力いっぱい引いて留め金にセット。後はトリガーを引けば、発射できる。
全長1メートル。幅50センチ。重さは2キロと100グラム。
取り回しがとても楽。
これ、気に入ったわ。
「なんでこんなにいい弓を持ってるのに、野盗なんてヤッてんのよ?」
「そ、そんなの、俺の勝手だろう?」
「そういう事言うと、竜人に喰わせるよ?」
男、なんか震えあがった。
周囲も、逆らうなよ、止めろよという視線を向ける。
「ポートビリアがオークの襲撃を受けた時に、どさくさに紛れて強奪したんだよ」
ああ、そういうことか。
「じゃあ、アンタのモノじゃないんだね?」
「何言ってやがる。俺が奪ったから俺のものだ!」
「ふぅん。じゃ、あたしが奪ったからあたしのモンだね」
怒りに燃えてあたしを睨む、拘束されたままの野盗。
「青年、やっぱりコイツ、喰っていいよ。証拠隠滅しちゃおう」
げ、それだけは勘弁してくれ……
ようやっと、自分の身の程を弁えたらしい。ヨシヨシ。
みーよが、一応、落ちないように奇跡で荷台に幌をかけて。
そのまま、夕暮れが近い中をポートビリアに向けて、帰り道を急いだ。
今回は、無理せず早めに到着。
例によって、正門前では皇龍公国の騎士団と、ポートビリアの守備隊がずらっと並んでお出迎えをしてくれている。そんなの、いいのにね。
でも折角なんで、荷台の野盗どもを守備隊に引き渡した。
で、連中の中の狙撃手が持っていたクロスボウについても聞いてみた。
野盗どもは、取り調べた後、こちらで処罰を受けさせる。
報奨金は別に支払う。執事を通して連絡する。
野盗が持っていた戦利品は、討伐者に所有権があるが、出所はこちらで調べておく。それも、執事を通して連絡する、とのことだった。
うん、後はよろしくね。
みーよ、このクロスボウ、名のある武具だと思う。女神ちゃんにお願いして、奉納して貰えたりする?
やってみるね。……うん、大丈夫みたい。これ、相当いい武具みたいね。
へえ、やっぱりそうなんだ。
トラックを光の奇跡で収納し、徒歩で城まで歩く。
あたしと手を繋ぎながら、杖を楽しそうに振り回しながら歩く幼女。
なんか、ご機嫌だね。
「シーチャン、今日はとっても楽しかったでしゅ」
そうですか。それは良かったねぇ。
「喰ってもいい人間と、ダメな人間がいるのが、分かった」
青年、その理解でいいのか。本当にいいのか?
「明日も、いくのか?」
「その辺はみーよに聞いて。でも、あたしたちと一緒の時は、人間を食べちゃダメだよ?」
「オマエ、アレは食べてもいいといった」
「アレは、モノの例え」
「……難しいな」
そんなことない。ナイよ?
「あたしの言うこと聞いていれば、ご褒美を上げる。言うこと聞けないならヤキを入れる。それでいい?」
「……分かった」
お、分かったのか。素直で宜しい。大変宜しい。
な、なによ、みーよ、そのため息は?
あたし、なんか間違ってる?
首まで振らなくてもいいでしょ?
なによ―お手上げってぇー
似たようなもんだから、もう諦めたの?
コレと、あたしが?
あたし、人間なんて食べないよ? 美味しくないし。
好んで食べてるでしょって?
そ、そうかなぁ?
鍛えられた筋肉とか、生まれつきのゴツい身体を見たら、確かに美味しそうだなとは思うけどさ。
でも、食べたりなんかしてないもんね。
食べてない、よね?




