257.ほれ、しばらく寝てな
ボチボチ、終業時間みたいで、少し早いけど夕食を取りに行く。
幼女も当然のごとく、ついてくる。
あたしが食べるのを、うわぁ、という顔で見つめて。
自分もマネするーとやって、パンを喉に詰まらせて。
……面倒見るの、大変だなぁ。
でも、こういう子供の面倒見るの、割とあたし、好きかもしんない。
たらふく食べて、談話室でくつろいでると。
やっぱり現れたわね、サーリットとテイルのコンビ。
で、新しいお客様、あの竜人の青年じゃん。
今度は、ちゃんと服を着てるね。
緑と白のチュニック。頭には白のバンド。ゆったりとしたバギーパンツ。エナメル質の白い革靴。
どうしたの?
「イクミ殿にたっぷりヤラレて、色々反省したらしい」
「心から謝れば、アヤツはさっぱりした性格だから水に流して貰えるぞと、話しておいた」
「しかも、旨い酒が飲めるぞ」
「今まで飲んだことがない酒だぞ、と話しておいた」
ふうん。
要は単に、コイツをネタにして美味い酒でも呑もうってことなんでしょ?
ま、いいけどさ。
近づいて、上から下まで眺めると、ちょっとビビっている青年。
「中々の着こなしじゃん。入んな」
そういうと、顔がパッと明るくなった。
「なかなかのきこなしだ、じ、じゃあ? はい、はいれぇ?」
幼女、そういうのはマネしなくてもいいの。
「随分と、仲良くなったのだな」
サーリットが見つめると、幼女があたしのスカートの裾をまくって隠れるふりをする。
そこはアンタが隠れる所じゃないよ。
腰に手を回して楽に持ち上げると、キャッキャと喜んでる。子供だなぁ。
「みなさま、こちらにどうぞ」
すでにみーよが、ウイスキーセットを準備している。
あ、幼女にはオレンジジュース?
え、自分も呑みたい、一緒のがイイ?
どうする?
ま、試しに飲ませてみれば?
もう、ホントにいい加減なんだから。少し、少しよ?
はい、カンパーイ!
あら青年、そんな一気に飲んだら、むせるわヨ。
ほらね。はいお水。
幼女は、おお、イケる口なのね。
これオイシーのか、そうかそうか。うん、呑め呑め。
慣れると美味しいですか、青年。
そうでしょうそうでしょう。おつまみも美味しいのよ。
こんなの、呑んだことがない。でしょうね。
で、アンタは今まで、どういう生活をしてたのさ。
卵から生まれて?
しばらくは真っ暗な部屋?
なんか被されて、連れまわされて?
首輪付けられて、飛行訓練?
大変だったんだねぇ。分かんないけど。
え、ひどくない、ひどくないよ?
分かんないもんは、分かんないもん。
え、そこ、泣くところ?
なによコイツ、泣き上戸なの?
あら、幼女がそれを見て笑ってるよー
こっちは笑い上戸か。
幼女、なんか、顔が真っ赤よ?
あ、こりゃ、おねむだね。
いいよみーよ、あたしが寝かしつけるよ。
この子の着替え? なんかある?
あ、はい、どうも。みーよの杖の奇跡って、ホントなんでもありね。
別室に寝かせとけばいいか。
はい、服脱がすよーこの寝巻き着てねー
ホントはシャワー浴びせて、そのぼさぼさの髪をキレイにしてあげたいけど。
また明日ね。おやすみー
あら、こっちの青年もダウンなのね?
あっちで一緒に寝かせるのは、さすがにマズイか。
床にでも転がしとく?
さすがに可哀想?
あら、サマーベッドじゃん。ついでに毛布も。
手間がかかるなぁ、ナリは大きいのに。
ほれ、しばらく寝てな。
なによ、竜人を飼いならしてるって?
知らないわよ、そんなの。
仁義を通さない奴には、教育するだけ。
言うこと聞くなら、子分扱いにしてあげる。
そんだけ。そんだけよ?
お、ボトル2本があっという間に空っぽだわ。
え、3本目、行っちゃうの?
うぇーい、呑もう呑もう!
~ ・ ~
うーん。楽しかったぁー
今日も色々あったけど、こうして美味しいお酒と愉快な仲間がいれば、生きてるなぁって実感が湧くね。
シャワーを浴びるついでに幼女の様子を見ると。
うん、大丈夫そうだね。ぐっすり寝てるわ。
身体をスッキリ洗い流して、ポンチョにお着替えして。
みーよのお世話をして、お世話され返されて。
気分よく、スッキリとあたしたちは眠りに落ちた。
(つづくっ!)




