255.ヘンなの拾っちゃったなぁ
新しい刃物を持つと、ツイツイ試し斬りしたくなるのよね。
城の練兵場に顔を出してみると、お、やってるねぇ。
いや待って。さすがにこのナタを振り回すわけにはいかないよね。
うん、そっと立ち去ろうとしたら。
スカートをクイクイっと引っ張られた。
あれ?
今、気配したっけ?
引っ張ってきたのは、宮廷魔導士の幼女だった。いつの間に?
「さっきは、ありがとでちゅ」
何だっけ、お礼言われるようなこと、したっけ?
「おかげしゃんで、お城にのこれたんでしゅ」
「そう。良かったわね」
まあ、賛成と反対が拮抗してたからね。あたしの意見でも大きかったかもね。
「お礼に、試し斬りのお手伝いをするでしゅ」
……何で知ってんの?
あたし、誰かにそんな話、したっけ?
ま、まあ、予想できないことも、ないか。
でも、お手伝いって?
「こっちでしゅ」
手招きされて、ちょっと広い場所へ。
何人か、手持ち無沙汰の兵士たちがあたしたちを見ている。でもまだ目立つ段階じゃない。
「ごごご、ごれごれごれむぅうぅ」
杖を振り回して、可愛く踊る幼女。
と。
床石の隙間から、黄色くて細い触手のようなものがどんどん生えてきて、成人男性ほどの大きさを形作る。
ンと、確か、ゴーレム、だったよね。
へえ、そんなことできるんだ。
「むふー!」
完成したのね?
全身黄色い。材質は糸みたいな触手。顔はない。
これ、関節技は効かなそうだね。ついでに突きとかもダメそう。
断ち切る攻撃が、一番だよね。
「なんにもできないのが得意じゃなかったの?」
ちょっと意地悪して聞いてみると。
「こんなの、たいしたことないので、とくいじゃないんでしゅ」
と、威張って返された。
くそぉ、コイツ、なんか可愛いな。
前領主が手元に置きたくなった気持ち、分かってきたかも。
「おもいっきりたたかってくだしゃい。いきましゅよー!」
幼女が杖を高く掲げると、黄色いゴーレムも両手を高く掲げた。
「んじゃ遠慮なく」
腰だめに溜めた借り物のナタを、居合の要領で振り回す!
あ、ゴーレム、バラバラに吹き飛ぶように、はらわたを削られたけど、次の瞬間には元に戻っていく。
風に飛ばされた藁束が、時間でも巻き戻すような感じで元通りになるみたいな。うん、変な例えだね。
そのまま手足を振り回してくる。
と、伸びるのか!
反射神経でかわしつつ、伸びきったところをナタで叩き斬る!
ちぎれる、ちぎれるけど、斬られた空間に触手がお互い伸びてきて、繋ぎ合ってしまう。
なによこれー!
向こうの攻撃は大したことないけど、こっちがいくら斬っても、また繋ぎ合っちゃうね。
練習にはちょうどいいけど、キリがないなぁ。
ただ、このナタ、とても使い勝手がイイね。
持ちやすく振りやすいんで、狙いを正確にできる。
後は、思い切り斬りつけても壊れなければイイんだけどね。
「おねーさんスゴスギでしゅ。ぜんぜんあたらないでしゅ」
そんな、幼女に感心されてもねぇ。
こっちはこっちで、なかなか大変なのよね。
「これ、壊しちゃってもいいの?」
「だいじょぶでしゅ。こわれましぇん!」
ふうん、いいんだ。
身体を左右に振って、なるべく一か所に人形をひと固まりにしていく。
伸びるパンチやキック。戻るときの軌道は一定なんだよね。
なので、あえて斬りつけないで、まっすぐ身体に戻るようにする。
少し、お腹の辺りが膨らんだのを確認して。
一気に踏み込む。
ナタを手放し、同時に右脚起動。
左足でうねりを呼び、腰、背中、肩、腕、両手に添えて力場を膨らませていく。
「“螺鈿!”」
あたしの技を察せない、鈍い人形ゴーレムに向けて、爆発的な力場を解放してやった。
人形ゴーレムが風船のように膨らんで、四方に爆散する。
後には、あたしが手放したナタの他は、何も残らなかった。
「こ、こ、こわれちゃ、った……」
ペタンと、両膝をつく幼女。
あ、マズかったかしらん。
でも、絶対に壊れないんでしょ?
「おねーさん、スゴイ、スゴイでしゅ!」
顔がぱっと明るくなり、抱き付いてきた幼女。
あら、落ち込んだんじゃないのね。
そのまま抱き上げて、クルクルと回して遊んでいると。
周囲から大きな拍手。
あれ、観客が凄いね。
いつからいたの?
全然、気づかなかったよ。
幼女を降ろして、カーテシーを決めて。
あら、一緒にやるの?
ナタを拾って、ぼちぼち部屋に帰ろうとしたら。
幼女、ついてくるよ。
どうもあたし、気に入られたらしい。
ヘンなの拾っちゃったなぁ。
みーよ、なんていうかなぁ。
……ま、いいか。




