25.重い。でも、回せそう。回せるなら、何とでもなる
「別室を案内して頂けないのでしたら、ここでお見せ致します」
あたしの思惑を分かっているのかいないのか、みーよが前かがみに跪き、杖を掲げて祈りをささげる。
杖の先端が光り始め、強く輝くと、カウンターの上にオークの魔石が浮かび上がり、実体化する。
小さいのが4つ、大きいのが1つ。
続いて、オークどもの武装だった大ナタや短剣、粗末な布切れ、腰袋も。
隊長オークのシミター、ヘルメット、皮鎧も並べられた。
「……あと、途中で付き人が仕留めたゴブリンどもの魔石もございます」
小さな魔石が、ゴロゴロと。こっちはただのオマケだね。
「どうぞ、ご確認下さい」
シーンと静まり返った場内に、みーよの細い可愛い声が響く。
「ちょ、ちょっと、なんだよそれ……!」
口元が真っ赤の、ちょいチビが、喉の奥から絞り出すように、叫んだ。
「証拠、です。ご覧になりたいと仰ったので」
みーよが、冷静な口調で答える。
「お、俺たちは、命からがら、必死に逃げ出したんだぞ、それを……」
まーそーなんだろうね。で、なによ?
「お前なんかが横取りするなんて!」
みーよに掴みかかろうとしたので、横っ面を思いっきり引っぱたいてやった。
ギャッとかウッとか、よくわかんない喚き声のまま、5、6メートル吹っ飛んで、男たちをまたもや何人か道連れにして倒れ込んだ。
懲りないなーコイツ。
で、横取りってなによ。説明してよ。
分 か る よ う に。
ちょいノッポを睨むと、おぉ、生意気に睨み返してきた。
「俺たちはパーティーを組んで行動したんだ。だから、報酬は少なくとも山分けだ。それに、危険な所まで野良聖女を護衛した分は、別の報酬だ。だから、それは全部俺たちのもんだ」
「そういう言い分でいいのね。じゃあ、支払ってあげる」
もう止めないでね、みーよ。
結構、頭にきたから。
あたしは急に体を沈める。
ちょいノッポの目線からは、いきなり消えたように見えるでしょうね。
一応、皮の鎧は着てるんでしょ?
役に立つかどうかは知らないけど、手加減なしでいいのよね?
立ち上がる動作と連動して、ボディにアッパー。
見えてないので受けようもないらしく、ちょいノッポは身体を九の字に曲げて悶絶した。
「まだ倒れちゃダメヨ。たっぷり支払ってあげるんだから」
髪の毛を掴んで、横っ面に張り手。
「おかわりも欲しいでしょ?」
返す手でもう一発。
反応が、消えた。
ちょっとーもう気絶?
早過ぎよー
男どもにぼろぞうきんを放り込んで、わーわー言わせてっと。
お仲間のデカブツを睨んでやる。
「あんたも欲しいの? たっぷりクレてやるわよ。あんた、デカイから殴り甲斐がありそうだわ」
「い、いや、俺は……」
「遠慮しなくていいのよ? 任務も、村も、みーよも見捨てて、ノコノコと逃げ帰った挙句、戦利品だけは一丁前に全部寄こせとかホザくような奴には、たっぷりとビンタをくれてやることにしてるの、あ・た・し」
分かったかな? ん?
軽く威圧するだけで、デカい身体がどんどん縮こまっていく。
塩でも掛けたられた、ナメクジみたいね。
ダメだコイツ。てんで話になんない。
あたし、無抵抗のヤツは殴れないのよ。だって、仁義に反するでしょ?
「誰か、文句ある奴いないのー? 前に出てきな」
他に、骨の有りそうな奴はいないの?
誰も、いない。
うわぁ、今度は煽りすぎちゃったみたい。なんだこの連中。
「さっき散々なんだか言ってたでしょ? 出てきなよ。おんながどうこういってたでしょ? ナニびびってんのよ?」
性別で攻めたら、どーかな?
男のプライドとか、あるんでしょ?
誰かいないのー?
あたし、まだまだ殴り足りないのよー
誰も、いない。
んもー!
「そこ、ソイツと隣のヤツ、それとその奥の、お前。顔覚えたって言ったでしょ。ソイツと、ソコのもだ。出てこい」
出てこないので、指差して指名してあげる。
集団だと強気でも、正面だと、どーなの?
出て、こない。
「来ないなら、こっちから行くわよ? 周囲も止めない止めない差し出さないで同罪、巻き込まれても知らないからね、ってか、巻き込むからね」
一応、警告した。だから、いいよね?
何を言ってるのか分かんない連中相手に、こんな技使うのはもったいないんだけど。
助走ナシの、その場から突然のヒップアップボンバーを、集団目がけて繰り出して差し上げた。
わーぎゃーぐぅぇえの、阿鼻叫喚。
男たちのクッションが十分に効いて、あたしは無傷。
下敷きになってんのは、シラナイもんね。
ようやく、事態の深刻さに気付いた連中。
怒らせてはいけないモンを、怒らせちゃったのねー
じゃー集団のザコにはとっても有効な、巨乳パイパイプレスもサービスしちゃうわー
とぉーとたっかく飛んで、そのまま手足を大きく伸ばして。
巻き込めるだけ巻き込んでおいた。
ぐあーげーぐおー
ん-、いい響きね。コレよコレ!
息づく男たちの、悪臭とうめき声。
肉がつぶれ、骨がきしむこの快感。
たまんないわータマンナイのよー!
起き直って、周囲を見渡す。
あらかた、片付いたかな?
あら、ちょうどいい所にみーよを見捨てたパーティーの一人、デカブツが倒れてるわ。
いい武装になるわね。
両足を引っ掴んで、重さを計る。
重い。でも、回せそう。回せるなら、何とでもなる。
でも、さすがに両手じゃないと無理か。
まぁ、オークの大ナタよりマシで、やわらかい分、手加減にもなるでしょ?
「な、何をする気だ!」
「あら、武装がしゃべっちゃだめよ?」
そのまま、思いっきり力を込めて振り回す。
おー浮いたー!
回す回す回す!
えっと、ジャイアントスイングとかいう、プロレスの大技だったと思う。
人前でヤルのは久しぶり。現代だと、色々ウルサイもんで。
まあ、デカブツの叫ぶ声がウルサイんだけど、んなもん無視無視。
だって、ここなら思いっきり振り回せるもんね、モーサイコー!
人間大回転な、ゴツいデカブツをぶん回していく。テーブルもイスも回転に巻き込まれて吹っ飛んでいく。
危ないとか、わーぎゃーとか、そんな大声援を聞きながら、どこに放り投げよーか、周囲を観察。
あ、あれにしよう。丁度、ちょいチビが3回目の起き直りだ。
ほれ!
周囲の男たちも巻き込んで、デカいのとまともにぶつかって、グチャグチャになったわ。
あーいい気味。
これで、あらかた、片付いたかな?




