24.みーよの手が、震えている
「ちょっと待て、なんでお前生きてるんだよ」
男どもをかき分けて、前に出てくる連中がいる。
「もう死んだって報告してるんだぞ、気を利かせろよ」
「俺たちが嘘の報告をしたことになるじゃないか」
少しチビな(あたしより、背が低いね)のと、ちょっとデカいのと(あたしより背が少し高いね)、結構ゴツイのが(縦も横も割とあるね。でも鈍そうだね)、威圧するように、あたしたちの前に立ちはだかった。
「誰?」
ハ、そんな威圧、ネコの喧嘩より下だわ。
無視してみーよに尋ねた。
「例の村に、一緒に行ったパーティーの、仲間、よ」
だと思ったけど、確認ね。
みーよの手が、震えている。
顔は、なんとか平静を保っているけど、内心はそうでもないのね。
裏切られて、見捨てられて、置き去りにされて。
村人が殺されるのを見守るしかなくて、取り囲まれて、助けを求めて。
なのに、平然と死んだことにされて、なんで戻って来たとか言われて、今も難癖付けられて。
あー、なんか野良聖女ズが、連中が中にいるとか言ってたなー
コイツらか。
みーよも、いると分かっていて、それでも中に入ったんだもんね。
そっと、片手を握ると、震えが止まった。
そ、大丈夫よ、あたしがいる。ここに、いるから。
「みーよは生きてて、生存報告に来ているの。村のことを話に来ている。アンタらがどうこう言う筋合いは無いでしょ?」
「あ?」
なんだテメエみたいな顔で、いきなり殴りかかろうとしてきた、ちょいチビ。
ハイ、正当防衛成立ね。
あと、あ、とか、テメエとか、言ってる時点でもう遅い。
カウンターに座ったまんまで、カウンターで軽く左手のジャブ。
シャレじゃないわよ、つまんないもん。
そのツマンナイちょいチビ男は、面白いように吹っ飛んだ。
後ろを囲む男どもを何人か道連れにして、盛大に倒れ込む。
んもぉ、おおげさねぇ。
「な、何しやがる!」
「殴りかかろうとしてきたから、身を守っただけよ?」
横のちょい背が高いのが怒鳴ってきたので、涼しい顔で受け止めた。
「あたし、聖女様の付き人なの。文句があるなら掛かってきていいわよ?」
カウンターから降りて、周囲を威圧するように、声を張って宣言する。
眼光を鋭くすると、半分以上がビビり始めた。
えーこんなんでビビっちゃうの?
もっとやる気出してよー
「付き人、だと?」
「ありえないだろ」
「いや、おんなの付き人だしな」
「なおさら、はなしにならないだろ」
「いや、コイツ、強いぞ」
「しょせんは、おんなだろ?」
互いに顔色を伺いながら、どうしよーなんだこれーみたいな情報交換。
野良聖女ズと一緒だね。可愛いね。
「て、て、てめぇ……」
お、ちょいチビがようやく起き直った。
威勢はいいけど、鼻血で口元が真っ赤よ?
「ふざけたマネしやがって!」
お、剣を抜くの?
じゃあ、あたしも抜いていいのね?
受付嬢からアギト・ナイフをひったくって、ニヤリと笑って見せる。
手加減なんかしてあげないよ。直ぐに終わらせてあげる。
「待て」
もう一人の仲間の、デカくてゴツいのが、止めに入った。なんだツマラン。
「郁ちゃん」
あ、あたしも止められちゃった。テヘ。
しゃーないなーアギト・ナイフを収納してっと。
「受付ちゃん、ここじゃ喧しいから、とっとと別室用意して。それとも、ここで大暴れしてもいい? あんたの、せ・き・に・ん、で」
責任を強調してあげると、トロい受付嬢が、また固まってる。
判断できないらしい。ホントにトロいわ。
「他の受付、コイツ、話になんない。偉い人呼んで。ってか、こんな騒ぎになってんのに誰も来ないって、どーなってんの此処?」
仕事しろーって言ってんだけどな。どいつもコイツもにっぶいなー
「ギ、ギルド長は不在ですので……」
結構、困った顔の、他の受付嬢。
「アグフの襲来への対策のため……」
もう一人の受付嬢も、渋々と理由を述べた。
それが、メンドクサイ案件を押し付け合う理由?
はぁ、アグフ、アグフねぇ。
「だーかーらー、その豚男はあたしが仕留めたって言ってるでしょうが。ホント鈍チンね。どいつもコイツも使いもんになんないわね」
カウンターに向かって説教を垂れていると。
「何言ってんだ、頭おかしいのか」
「おんなだからな。無駄に乳だけデカいくせに」
「ケツもデカいけどな」
「ダメ聖女のお付きとか言ってる時点で、終わってんだよ」
「そんなひらひらした格好で、なにができるってんだ」
言うねぇ。集団の中だから、何を言ってもいいってわけね?
「顔、覚えたわよ」
じろっと睨むと、男たちが急にタジタジになる。
それでひっこむなら、最初から言わなきゃいいのに。
んー集団として、あたしをどう扱おうか、迷っている感じかしらん。
いいのよ、みんなで一斉に掛かってきて。それが一番楽しいんだけどなー
もしかして、煽り方が足りないのかしらん?




