23.冒険者ギルド
中は、結構広め。ゴツいテーブルとイスが6脚、それが4セット。
他にも4人掛けのテーブルとイスが6セットある。
あと、壁際にはベンチも何脚かある。
壁の上の方には明り取り、ついでに通気もかな、の窓。
当たり前だけど、ポリマーフィルムなんてものは貼られてない。
こういう文明ではお約束のガラスさえ、ない。
代わりに、木扉で閉められるようになっている。
奥にあるカウンターは受付口が3人分。受付嬢は制服姿で結構きちんとしている。でも、暇そう。
カウンターにはランタンが何個か灯されていて、そんなに暗くはない。
窓を閉めたら、テーブルにもランタンが置かれるんじゃないかな?
灯は、ろうそくだね。
男たちがテーブルに腰掛けながら、エールだったっけ、とか、おつまみをつまんでいる。ん-ざっと40人位、かなぁ。ほぼ満席じゃん。
女性の姿は、ないね。あ、野良聖女3人トリオが、怖いもの見たさ的に、距離を取って付いてきてるけどね。
まだ、朝の、ん-多分9時位だと思う。
あたしたち、村を朝早くに出たから、時間的にも、お日様の動きも見ても、そんなものだと思う。
ん-、みなさま、お仕事は?
そんな、あたしの観察など気にしないで、みーよはそのまま暇そうな受付に向かう。
気づいて、少しぎょっとした顔の受付嬢。
「お願い致します。聖女ミヨです。依頼を受けました辺境集落の調査状況の報告をしたいのですが」
そのまま、懐から身分証明書だっけ、たしか、中継地の村で門番に見せていたカードを取り出した。
気が付いた周囲が、ざわつき始める。身を乗り出してくる男たちもいる。
警戒レベルをひとぉつ、上げておく。まだ、暴れる段階じゃないけど。
受付嬢が答える前に。
「おい」
男の一人が、みーよに背中から手を掛けようとしたので、軽く打ち払った。
「なにしやがる」
「こっちのセリフ」
ついさっき、偉そうな門番の隊長に、おんなじことしたなー
でもね、これはあたしの仕事なのよ。
あたし、みーよのお付きなの。
汚い手で、聖女様に触んないでくれる?
みーよが振り向いた。
「ギルド内では、会員同士の乱闘は禁止ですよ。分かってますよね?」
「何だ偉そうにションベン聖女が」
男が怒鳴ると、周囲の男たちも同調して笑い始めた。
野良聖女3人娘たちが、そそくさと玄関付近に引っ込み始める。
逃げの算段だね。判断早いなー
「ふーん、あたし、まだ会員じゃないから、無視してもいいんだよね?」
こういう輩は、最初からシメるに限る。
失礼で無礼な男どもに視線を向けていると。
「だめよ。ちょっと待って」
ちぇ、スティかぁ。考える余地もないのね、ツマラン。
いや、ちょっと、って言ってたから、まだ可能性はあるのよね。
ざっと40人か。どうやって潰そうかなぁ、みーよはとりあえずカウンターの奥、受付嬢の中に放り込んで、光の障壁を唱えて貰えば大丈夫でしょ?
野良聖女ちゃんたちは、逃げる準備万端だから大丈夫だね。でも、ゴメン、逃げ出さないなら巻き込んじゃうね。ま、あたしはアンタらにそこまでの義理も無いしね。さっき、なんか嫉妬とか嫌味とか言ってたから、別にいいよね、見かけに寄らず逃げ足速そうだから、自分のことは自分で何とかするんでしょ?
で、こいつら男ども。どう料理しようかなぁー
でも、どいつもこいつもロクなもんがいないなー
2,3発殴ったら、すぐぴーぴー言いそうなのばっかり。
もっと骨のあるヤツ、いないのかしらん。
お願いだから、あんまり早く壊れないでね。
一応、荒くれ事専門なんでしょ?
「オーク・アグフに関する報告でもあるのですが、別室で行った方がよろしいでしょうか?」
受付嬢に向き直り、やんわりと場所の移動を打診するみーよ。
ん-大人だねぇ。
ま、みーよにしてみれば、余計なもめごとには関わりたくなんかないよね。
でもね、こういう連中に、そういうのはあんまり通用しないんだろうね。
「アグフだとぉ?」
「おおきくでたよ野良聖女」
「いや、なんか変なのを連れてるぞ」
「おんなだ」
「おとこみたいな女」
「なんだ、そのひらひらした格好」
「ついにおかしくなっちゃったな良い子ちゃん」
「まったくだ、泣き虫聖女様―」
……なんか、言いたい放題だなぁコイツラ。
ムカつく、というより、暇なんだねぇとか思う。
で、受付嬢ちゃんは、なんか、固まってるし。
ようやく、喉の奥から絞り出すような声で。
「別室……別室は、困ります」
「困ります、とは?」
「ミヨさ、ミヨは、そのような身分ではございませんので」
さまを付けようとして、考え直したのね。
まあ、男たちにイイ顔見せとかせとかないと、業務に支障がでるのかもね。
それにしても、他の受付嬢、助けるとか代わってあげるとか、ないの?
我関せずって、そういう態度は良くないよ?
「では、ここで、オーク・アグフに関する報告を行ってもよろしいのですね?」
アイコンタクトが来た。
あたしは、カウンターにアギト・ナイフを突き立ててやろうかとか思ったけど、まあ、受付嬢ちゃんを脅かしてもねえ、と思い直して、そっと机の上にオーク隊長の遺品を置いた。
「……これは?」
「仕留めたよ。オークの遺品。鑑定してよ」
オラ、早くヤレよと言わんばかりに、カウンターの上にあたしのでっかいおしりを乗っける。
みーよに軽く睨まれたけど、あたし、そんな良い子ちゃんじゃないもーん。
こーいうのは、舐められたら負けなの。
「仕留め、た?」
なにを愚図ついてんだコノ娘?
「鑑定出来ないなら、他のを呼んで。それ位なら、出来るでしょ」
催促の度合いを上げてやる。つくづくトロイわねぇ。
ちょっとムッとしてくれた。そうそう、そうでないとねぇ。
静々と刀身を眺め、柄の部分を見て、二度見して、顔色が変わった。
いいねぇ。そういう素直な反応が見たいのよね。
「い、いえ、でも、証拠が……」
「足りないの? だから、別室で見せてあげるって言ってんの。ここじゃ小うるさいハエどもが寄ってきそうなんでね」
なんか散々な言われようだったんで、コッチも言ってもいいよね?
「ハエ、だと……?」
お? 男たちの反応が、思った以上だねぇ。いいねぇ。
そういうの、聞こえるんだ。
ま、聞こえるように言ったんだけどね。
みーよ、もういいよね、全部潰しちゃっても?
んもう、という顔をされた。テヘ。




