239.「郁ちゃん、飛ばし過ぎよ?」
うん、お腹空いた。本格的に空いた。
今日も色々ありすぎた。疲れたー
みーよと大食堂に入ると、中にいた人々の視線が突き刺さってくる。
敬意と畏敬と好奇心。
どうもあたし、色々とヤラかしてるみたいだねぇ。
ま、気にしないけどね。
メイドさんが二人がかりで、ドンドンご飯を持ってきてくれる。
片っ端から食べていく。
うん。待ってたよお肉。お肉―!
これ、なんの肉だろう。
馬? へえ、馬も食べるんだ。
あ、鳥の丸焼き、香草と穀物を詰め込んだのね。すごく美味しい。
エールは例によって樽でご到着。この飲み物、本当に旨い。ガンガン飲める。
パンのお代わり、籠ごとアリガト。焼きたてだね。美味美味!
大皿スープの3杯目を飲み干して。
うーん、今日も食べたー!
~ ・ ~
お部屋に戻ると。
談話室に、サーリット領主とテイル卿のお二人が待ち構えていた。
「まだ、なんかあったっけ?」
「公式には、領主との会合だが」
テイル卿のお言葉。ああ、なんか言ってたね。
「聖戦で勝ったので、とびきり旨い酒を所望するぞ」
あ、そうだったね。忘れてた。
「とっておきのジャパニーズ・ウイスキー。20年物で御座います」
忘れてなかったみーよが、杖の奇跡でウイスキーセットを出現させた。
こりゃ、あたしもお相伴にあずからないとダメだね。
ウイスキーグラス、前のより高価っぽいんですけど?
「大聖女に成ったからね」
そ、そうなんですね。
手際よく、4杯分を準備。
好みは任せると言われたので、全員ロックで用意したみーよ。
うん、男たちのその顔。
隠しきれない期待感だねぇ。
こんなの、見たことないぞ、という顔だねぇ。
付き人への報酬。本来はあたしだけしか飲めないんダゾ。
感謝したまえよ、あん?
そう言ったら、聖戦に勝利した報酬では? と返された。
ちっ、バレてたか。
今日あった出来事全てに、乾杯!
ああ、ウンそうですか、旨すぎるんですか。
おつまみも美味しいですよ。たんとお食べ。
ペースが速いね。これ、ボトルあっという間に飲み干しちゃうね。
あら、お代わりのボトルもあるんですか。高いんじゃないの、これ?
え、あたしがそういう働きをしているから大丈夫なの?
これは付き人への報酬だから、付き人の働き次第なんだそうです。
そりゃスゴイ。
ならばコイツ、もっと働かせないとな、って。
こらぁサーリットめ、横暴だぞう!
嫌なのか、ならば毎日聖戦をせねばな。
こんな旨い酒を報酬として飲ませて貰えるのなら、何度でも闘うぞ。
無茶苦茶言ってますね、このお方は!
なによ、随分お堅い人だと思ってたけど。
酒が入ると陽気になるのね。
あたしたちにも、幼馴染のテイル卿と同じ感じで接してくれるんだ。
うん、なんか、ギャップ萌えしちゃうなぁ。
クソぉ、既婚子持ちかぁ。
いやいっそ、第二夫人でも……
ま、待つのよ、あたし!
これはそう、隷属の首輪のせいなのよ!
あたしの意志じゃないのよぉ!
「郁ちゃん、飛ばし過ぎよ?」
あら、声に出てた?
こらテイル、腹を抱えて笑ってるんじゃナイワヨ!
まあ、悪い気はしないけどさぁ。
たっぷり食べて、笑って飲んで。
生きてるって、素晴らしいね。
宴会がお開きになって。
そそくさとシャワー浴びて、お着替えして。
チビちゃんたちの匂いを嗅げないのが残念だけど。
シャンプーの香りが残るみーよの髪に触れながら。
あたしは、ストンと眠りに落ちた。
(つづくっ!)




