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Sweet Bomb NEXT  ~ 今度は異世界で大暴れっ!  作者: 白河・DG・夜舟
転移二十九日目っ! ~ ポートビリアで大暴れっ!

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237.なによそれー!

挿絵(By みてみん)


 部屋の入り口で待っていた中年メイドさんの案内で、渡り廊下を通って塔を出る。

 ちょっと心配そうな顔をしていたので、みーよが大丈夫だと声を掛けていた。

 本館の館、食堂とは反対側の、二階フロアにご案内。

 どうも食堂と同じ大きさで、こちらは大会議室になっているらしい。

 大きなドアの前で警備に当たっているポートビリア側の警備兵二人が、あたしたちに敬礼して扉を開けてくれた。

 入ると、おでこの広い、あたしより少しチビの、いかにも偉そうなタプタプでキラキラなローブを着込み、厚手のマントを背中に背負(しょ)った目つきの悪そうなオヤジ顔が、こっちを睨みつけてきた。

 ちなみに髯は生やしていない。あ、前歯が一本欠けてるね。

「遅いではないか。このトゥーンカ様を待たせるとは、何たる無礼な振る舞い。やはり、貴様のような半端者を集めた軍の指揮官には、この都市は預けられぬな」

 なんか言ってる。

 どうも、わざとらしい。

 演技、だよね?

 下手(だいこん)だけど。

 派手な衣装がまるで似合わない大根役者(へたくそ)の背後には、完全装備の近衛兵(おつき)が4人。

 向かい合うサーリット、副官テイルの背後には、行政高官のハンドゥ、エンダナ、カントスが揃ってるね。

 そこに、あたしらが入れば、ポートビリアの統治機関が完成。

「トゥーンカ様が、まだ正門の修復も済んでいないような危険な都市に足を踏み入れられるとは思いもよらなかったのだ。許されよ」

 慇懃無礼に応えるサーリット。

「ふん、そもそもお前はポートビリアの占領が終わるまでの役目であろう。専門家でもないのに出しゃばってきおって。恥を知れ、この半端騎士団が」

「言葉を返すようで済まぬのだが、我々準騎士団は、大公殿下によって独自の判断で行動を許されている軍である。ポートビリアの統治に関わっている以上、この都市をどうするかに関して貴殿の判断は必要としておらぬ」

「そこが傲慢だというのだ。政治の事柄は政治が分かる人間に任せろと言っている」

「残念だが、貴殿にこの都市の統治は無理だと言わざるを得ない」

 この話は終わりだ、とでもいうように、サーリットが言葉を切ると。

「ふん、大聖女さえ押さえてしまえば、こちらのものだ。やれ!」

 掛け声と同時に、大根役者の後ろにいた4人の男たちがあたしたちに向かって来る。

 え?

 こんな所で、本当に乱闘?

 前に出たあたしに、大根役者が命令する。

 って、命令?

「“そこを動くな”」


挿絵(By みてみん)


 あたしの首に巻かれている拘束の首輪から、何かの力が働いてきた。

 なんだろう、身体がなぜか動かない。

 え? なんで?

「郁ちゃん?!」

「お前もだ。“そこを動くな”」

 あたしの後ろで、みーよも固まった気配がする。

 な、なに、これ?

 命令に従わないと、ダメな気しかしない。

 今まで、特に何とも思ってなかったのに?

「女など、抱いてしまえばこちらのモノだ。お前ら、コイツラを寝室に運び込め。このトゥーンカ様が、支配のなんたるかをコイツラの身体に徹底的に注ぎ込んでくれようぞ」

 気持ち悪い舌なめずり。

 ニタリと笑うイヤラシイ顔。

 うぉーい!

 ちょっと、そこのボンクラども、見てないで何とかしなさいよ!

「お止めください。今すぐ解除を」

 サーリット司令官、じゃないや、仮領主が声を掛ける。

 でも、なんでそんなに穏やかなのよ。もっとビシッと言ってやってよ!

「ふふん。このトゥーンカ様に逆らうだと?

 皇龍さまの尊い血筋の元に生まれついた生粋の支配者である、このトゥーンカ様に逆らうだと?

 生まれの卑しい孤児風情が、このトゥーンカ様に語る資格など、最初から持ち合わせているはずなど無いのだ。黙って歯噛みしながら見ておるがよい」

「もう一度だけ言う。今すぐに命令を解除しろ。これは警告じゃない。忠告だ」

 サーリットの圧力が、一気に上がった。

 あたしたちに汚い手を触れようとした全身甲冑の男たちの手が、ピタリと止まる。

「お、脅しても、無駄だぞ! このトゥーンカ様に逆らえるものなど、誰もおらぬ、おらぬのだ!」

「ご存じないのですか?」

 副官のテイル卿が、諭すように声を掛ける。

「聖女の付き人は、聖女以外に下げる頭を持ち合わせてはいないということを」

「と、当然、知っておるぞ。だが、これほど純度が高い“拘束の首輪”を破るものなど、いるわけが……」

 ああ、いないと思い込んでるんだ。ふーん。

 いや、あたしも結構、そう思い込んでるのかもしんない。

 でも、あたしが知っているのは、テイル卿が言ったように、あたしはみーよ以外に下げる頭を持っていないという事と。

 みーよが付けるように言ったから、しょうがなくコンナモン付けてるだけなんだって事で。

 その気になれば、壊すなりなんなり出来そうなんだよね、コレ。

 首輪君。

 どうする?

 このまま壊されたい?

 あたし、アンタみたいなのと、結構闘ったこと、あるよ?

 例えば、オークの闇の魔法に支配されていた女性たちを、力づくで何人も救い出してきたよ。

 さ、ドースル?

 首輪に意識を向けると。

 嘘みたいに、動けないと思い込んでいた意識が消えた。

 ホント、どうして今までそう思ってたんだろう? 思えたんだろう?

 あたしは、周囲の男たちに向き直る

「今すぐ失せるか、ぶん殴られて失せるか、ここで決めな」

 あたしたちに手を掛けようとしていた全身甲冑の男たちに宣言すると。

 目に見えて、明らかに動揺し始めた。

「ま、ま、まさか……」

 大根役者も、目が飛び出しそうな顔で驚きまくっている。

 そうかな?

 そんなに大したことないよ、コレ。

「時間切れ。全員ぶっ飛ばす!」

 恫喝すると。

 4人の男たちは腰砕けになって、床に這いつくばった。

 お、一人だけ、倒れていないのがいるね。

 いや、その暇が無かったってだけかな?

 ズカズカと歩いていき、胸倉を引っ掴んで持ち上げる。

「な、何をする……」

「こっちのセリフ。動けないあたしたちを寝室に運び込んで、何するつもりだったって?」

「こ、この俺様に逆ら……」

 ビンタ一発!

 瞬時で気絶(アウト)。

 後ろのみーよに突き出すと。

 軽くため息をつかれて、ヒールを掛けてくれた。

「な、なにを……」

「何するつもりだったって聞いてるの」

「こ。この……」

 また一発。即時気絶(またアウト)。みーよのヒール。

「な、なに……」

「頭悪すぎ。何するつもりだってって聞いてるんだってば」

「こ」

 ハイもう一発(スリーアウトチェンジ)。なんか、メンドクサクなってきた。

「サーリット、コイツらまとめて殺しちゃってイイんでしょ?」

 あら、苦笑されちゃった。

「さすがに、それは困るな」

「アンタの権限で、事故でとでもなんとでも、ごまかせるでしょ?

 あたしにとっては、コイツらはオークとかゴブリンとかと一緒。殺して河に捨てちゃうに限るわ」

 苦しめずにバッサリと殺してあげる。

 死体は河にでも捨てれば、魚やらナニヤラが跡形もなく処理してくれる(しょうこいんめつ)でしょ?

 コンナ奴らに普通に浄化とか葬還(にんげんあつかい)とか、それすら勿体ないわ。

「ユーライアに死骸を捨てるのはよさんか。河が穢れるであろう」

 あらテイル、イイ事言うわね。黙って見てたくせに、だけど。

「イクミ様、それはさすがに、外交上、問題かと」

「じゃあ、さっさと止めなさいよ。黙って見てただけのクセに」

 文官エンダナ。言ってる事は判るけど、黙認してる(だまってみてた)そっちに責任がないとは言わせないわよ。

 止めに入らなかった時点で、全員同罪(ギルティ)。

 コトと場合によっては、全員潰す(アウト)。

「拙者は止めたぞ。とても、とても丁寧に」

 ああ、司令官は止めてたわね。相手の方をだけど。止まらなかったけど。

「ワシは、聖女の付き人に隷属の首輪なぞ意味が無いと、気付かせたぞ。主に、オヌシにな」

 そういえば、そうか。

 テイル卿が言わないと、あたし、自分で動けるって思わなかったかも。

 んじゃ、この二人は無罪(セーフ)で。

 で、残りのお前らは、どうなの?

「イクミ殿、文官や商工会会長の俺たちに、武力を求めるわけではないであろうな?」

 少し呆れ気味の、商工会会長のぎょろ目。

「そりゃそうだけど、他にやりようもあるんでしょ?」

「ある。それは、ここでは無いがな」

 廊下の方を、軽く指差す。

 脱出させるとか、外に手勢を待機させてるとか、時間稼ぎして交渉するとか、か。

 う、うん。

 あたし、少し頭に血が上りすぎて(ハイテンションだっ)たかも、しんない。

 あ、もう一人、いたね。

「ハンドゥ、お前はどうなの?」

「聖女を守るのは、俺の任務じゃないぞ」

 ま、確かに、ね。

 そりゃそうなんだけど、さ。

 でもねーでもさ-

「郁ちゃん、やっと怖い顔が戻った。ホント皆さん、うちの付き人がスイマセン」

 えー、なんで、みーよが頭下げてるのよ。

「だって、さっきまでの郁ちゃん、“オーク・クイーン”の顔だったもん」

 うげぇ、そうなの?

 あちゃ、大根役者(ダメダメ)は、あたしの方だったか。

 あ、そういえば、コイツどうしよう。

 持ち上げてたままだった、元・大根役者(へたくそ)を床にぶん投げて。

「我々はノータッチだな。お前が勝手にやったことにしてくれ」

 こんなんでも、揉めると大変なのね。領主様も大変ね。

 でも、味方にはなってくれるんでしょ?

「地下牢くらい、あるんでしょ? 身ぐるみ剥いで、ぶち込んでおこう。あたしの質問にちゃんと答えるまで、逃亡の恐れありという理由にしといて」

「本当に“やりたい放題”なんだな」

 テイル卿が苦笑している。

「ちゃんと喋れば、解放してあげてもいいよ。でもコイツ、そんなに大層なヤツなの?」

「皇龍の血筋を引いているというのは、本当だ。だから、皇龍の子孫を残すために多くの女性たちを常に侍らせているのだよ」

 うげぇ、ナニソレ?

「そして皇龍の血筋の者は、子が出来にくい。そういう意味では、大層なヤツであることに変わりはないな」

 はあ。なんか、ため息しか出ないね。

「拙者らの国でも、色々とあるのだ。貴殿らの国でも、そうであろう?」

「そうだね」

 確かにその通りだわ。真っ赤っ赤とか、こういう輩がいるわ。

 みんな、平和に、安全に、健やかに暮らしたいだけなんだけどね。

 中々、上手くいかないね。

「あ、それと、そこの男たちは許してやってくれ」

「なんで?」

 そんなもん、同罪(ギルティ)に決まってるでしょ?

 サーリットが、床でぶるぶる震えている男の兜を、強引に剥がしにかかった。

 首に、首輪。

 あたしたちに付けられているのと、同じものだ。

「無理に解除しようとすると、首が閉まって死ぬ。これは首輪の持ち主がトゥーンカ殿に限定されている様だから、本人に解除させねばならないだろう」

「操られてたんだ。んじゃ、あたしたちの首輪は?」

「“ポートビリアの領主”を首輪の持ち主に設定している。トゥーンカ殿の抗議で、一時的に拙者の領主の座が揺らいだのでな。隷属の首輪の支配権がヤツに移りかけたのだよ」

「そういうもんなの?」

「大聖女を管理下に置くことが、領主の条件だからな。拙者にはその資格がないと首輪が判断したらしい」

 え、そうなの?

 そんな大事な判断を、この首輪(コイツ)が?

「実際、貴殿らを実質的には支配しておらぬからな。そうであろう?」

 ん、そうかもしんない。

 サーリット、あたしたちへの扱いが随分と丁寧で優しい。

「故に、強く支配権を望む者が現れると、権限が移行してしまうのだよ」

「何よそれ。だったら、アンタが強制的にあたしたちを……」

 支配、するの?

 この人が?

 あぁ、しないね。

 そんな必要もないんだ。

 だってこの人、本当に強い(ホンモノだ)もん。

 本当はこんな道具(チャチなもん)に頼る必要さえ、ないんだもん。

 しょうがなく、というか、体面上の理由(メンツ)だけで、あたしたちに首輪を付けさせてるだけなんだもんね。

 なによそれ。

 なによそれー!

 コイツ、こういうこと、当たり前の自然体(ナチュラル)でやってのけちゃうのか。

 ……くそぅ、無茶苦茶イイ男じゃないのさ。

 あん、既婚子持ちでさえ、なければなぁ。

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