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Sweet Bomb NEXT  ~ 今度は異世界で大暴れっ!  作者: 白河・DG・夜舟
転移二十九日目っ! ~ ポートビリアで大暴れっ!

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235/247

235.「やるべきことはやるよ」

挿絵(By みてみん)


 正門前で大騒ぎらしい。

 あたしはともかく、みーよの足じゃ間に合わないね。

 抱えて走るか。

 とか思ったけど。

「郁ちゃん。跳ぶね」

 ん、なにする……

 ぶわっと、景色が変わった。

 即、瞬時に、正門前。

 なによ大聖女様。瞬間移動(テレポート)? なんでもありなの?

 正門奥に、デカいのがいる。2体。

 周囲に倒れている兵士。何人だろう。門番替わりで、当たりが悪かったって事ね。

 うち一体に、サーリット司令官が立ち向かっている。

 もう一体は、テイル副官が足止めの術を使ってるのかな?

「大鬼(オーガ)。人里に来るのは珍しい。強いよ」

 走って近づきながら、みーよが説明してくれる。

「コマンダー?」

「武術付き」

 おっけ。

 そのままダッシュ。みーよの光の祝福(ブレス)は、間に合いそうにもないんで。

 足止めされてるオーガに向かって、あと10歩。

「テイル、サーリットの援護に廻っていい。あたし、これ初見」

「足止めでいい。あっちを仕留めたら援護する」

 手短なやり取りで、お互い、即動く。

 スリングセット、即射出。

 身長3メートル、体重150キロ超。

 やけに細マッチョ。ってか、ガリガリ。腰帯以外、防具無し。

 手には細長い棍棒。他に武装無し。

 頭に二本の角。目つきは悪い。口からはみ出す犬歯。

 髯無し。髪はお手入れ無しのボーボー。肌は青白い。

 亜人。悪鬼系。闇の種族。

 んで、多分、強い。

 はん、あたしも、強いのよ。

 スリングの石を棍棒で弾き返し、こっちを睨みつけるオーガ。

 構わず、そのまま突っ込んだ。

 もっのすごい速度で振るわれる棍棒。

 でも、所詮は棍棒でしょ。

 オーク・キングの金属製の大矛に比べたら、まるでオモチャ。

 あんときは、迂闊に受け止めて、右手骨折だもんなぁ。

 こっちの腕じゃなく、相手の棍棒を叩き折るつもりで振り切ったアギト・ナイフの背は、きちんと仕事をしてくれた。

 へし折った棍棒の威力も貰って、回転運動のまま、ローリング・ソバットをオーガの顔面に叩き込む。

 ……なによぉ、よろめく位、しなさいよね。効いてないのは、聞いてないわ。

 おっと、噛みつくのはヤメテよね。そういうのはお子様のやることよ?

 ま、似たよなもんか。

 接近状態のまま、地面に着地。

 適当な膝蹴りが飛んできたけど、片手で勢いを逸らす。

 蹴りが重い。当たり前だけど。

 でも大丈夫。まともになんか受け止めないもん。

 自分も回転するようにして、いなす。

 そのまま自然にヤツの背後へ。

 身長差が大人と小学生低学年だけど、とりあえず腰巻を片手で掴み、アギト・ナイフを腹部に突き刺してみる。

 うげ、固い肉だなぁ。でも、刺さらない事も無い。

 渾身の力を振るって、しがみつきながら貫きにかかる。

 うお、嫌がって暴れ出した。

 背中を取っているんで、簡単には剥がれないけど。

 アンタの腕も回しにくいでしょ?

 そんなのいいから、さっさと刺され! さらに力を込める。

 あ、コイツ、あたしを潰そうと倒れ込んでくる。

 とっさにかわすついでに、半分めり込んだアギト・ナイフに、蹴りを入れておく。

 うん、キッチリ刺さった。

 ひっくり返ったデカいオーガを、立ったまま上から見下ろしてやる。

 うん、いい気分。

 腹から出血あり。アギト・ナイフは根元までしっかり突き刺さっている。

 でも、まだ動けるんでしょ?

 組み打ちすると、血で制服が汚れそうだなぁ。

 お、立ち上がろうとしてくる。

 スカートをめくりあがらせながら、前蹴り(ケンカキック)を顔面に打ち込んだけど、まるで効いてないね。

 怒りに任せてあたしを捉えようと、両手を伸ばしてくる。

 しょうがないなぁ。

 こっちも懐に入って、身体を密着(ベッタリ)。

 うへぇ、血でべとべとじゃん。

 両手をゴツゴツな身体に押し当てて。

 左脚起動、右足を添えてうねりを呼び、腰、背中、肩、腕に勁を伝えていく。

「お前ごときに勿体ないけど……“寸勁”!」

 正確にヤツの心臓の辺りに、あたしの爆発的な全力(オーバーロード)を幾重にも重ねて直接(ダイレクトに)叩き込んでやった。

「グガア!」

 何事が起きたのかも分からないみたいで、オーガが硬直する。

 その間に、ヤツの腹に刺し込んだアギト・ナイフを無理やり引っこ抜く。

 前かがみになった頭の、ちょうどいい所に角があったんでガッチリ掴み、反対側に廻した腕でアギト・ナイフを、逆刃に持ち直して喉奥に当てた。

 腕を逆方向に、一気に回す。

 今度はきれいに刃先が入り、オーガの喉を半分以上、切り裂いた。

 ヤツの頭ごと抱え込んでるので、返り血を浴びるのはしょうがない。

 あー汚い。

 デカい身体がバッタリと倒れて、自分の血の池に沈んでいく。

 コッチはオシマイ。もう一体は?

 お、サーリット司令官、キッチリ仕留めてるね。

 なによ、コッチの見学とか。余裕過ぎない?

「手が空いてたんなら、手伝いなさいよね」

「必要だったか?」

 うーん。却って邪魔かな。

「いや、やっぱりイラない」

 あんまり美味しい肉じゃなかったから、任せてイイならその方が良かったかな、程度だね。

「コイツら、なんなの?」

「都市の門が破壊されているからな。大勢の人間たちの匂いに惹かれて、悪鬼が寄ってくるのはやむない事だ」

 んな物騒な。

「修理を急がせてはいるのだが。それまでの間は警備を強化せねばならぬな」

 そう言って、あたしを改めて見つめる司令官。

「先ほど、妙な技を使っていたな」

 げ、やっぱ見られてるのか。

「拙者との勝負の時は、用いておらなかったな」

 そりゃそうでしょ。あんなところで見せる技でもないし。

「ぜひ、拙者にも使って貰いたいものだな……いや、今のは無しだ」

 何言ってるの?

 まあ、ソッチの立場もあるだろうからと手抜きした事は、したけどね。

 いや、普通に、発勁を使わなくても勝てそうかな、と思ってただけだよ?

 あと、女神ちゃんの祝福も、使わずにすむなら、そうしたいかな。

 自分の力だけで、アンタを仕留められたら、なんたって気持ちいいでしょ?

 あ、みーよが来た。

「郁ちゃーん、お疲れ様。怪我は?」

「多分、何ともないとは思う」

「後でちゃんと診るね。サーリット様、お怪我は?」

「拙者も恐らくだが、大丈夫だ。奮戦した警備兵たちの具合を診て貰えるだろうか?」

「承知しました。郁ちゃん、少し待っててね」

 そう言って、トコトコと周辺で倒れている兵士たちの所に行ってしまった。

「さっきの“今のは無しだ”って、何の事?」

 発勁を使って欲しい、やっぱり無しって、何?

「いや、大したことではない。拙者が迂闊に“命令”すると、隷属の首輪が発動してしまうだけの事だ」

 そうなの?

「貴殿らは協力者だからな。政治的な意味合いや部下との手前、首輪を付けて貰わねばならないのではあるが、本来はそのようなもの、無用であろう?」

 まあ、そうだとは思うけど。

 みーよがそう判断してるなら、その辺はどうでもいいよ。

「ポートビリアの高官たちも、自分らの側について欲しいといっておったであろう?」

「なんか、それっぽいこと、言ってたね」

「逆を言えば、皇龍公国側の人間にとっては、仮の領主である拙者が、守護結石の守護者をきちんと手中に収めていてくれないと、敵地で危険な立場に立たされる、と懸念するのだよ」

 ふーん。

 うん、ゴメン、よく分かんないかも。

「ただ、領主、守護者、行政を運用する高官が揃っておれば、統治機関として機能できる。都市の住民の拠り所となるので、不法住民とはならずに済むのだ」

 まあ、この世界はそうなんだね。

「これから、魔導帝国側の貴族や役人、皇龍公国側の貴族や役人、それに、今来たような大型の魔物や、大規模な野盗、山賊もやってくるだろう」

 そ、そうなんだ。

「全てが終わるまでは、住民たちの安全を確保せねばならぬ。今後とも、よろしく頼む」

 あたしに頭を下げられてもねえ。

 そういうのは、みーよに言ってよね。

 でもまあ、この人なりの礼儀、仁義の通し方なんだろうね。

「やるべきことはやるよ」

 そういうと、ニカッと笑ってくれた。

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