231.「付き人イクミ殿、お願いがあるのだが」
みーよのお仕事が一段落ついたんで、執務室に呼ばれてコーヒータイム。
なぜか、テイル副官もくっついてくる。
アンタさ、さっきまでビール呑んでたのに、そのままコーヒーまで飲むあたしに、付き合う必要あるの?
……ま、いっか。
で、サーリット司令官も、どこからともなく現れた。
この人は、美味しそうなものに対する嗅覚が優れているらしいね。
ってか、執務室の壁際に、すでにコーヒーメーカーセットを常備してるのね。
「本当はオラクルの執務室に備えるつもりだったけど」
そうか。ここの大聖女を退任すると、消えちゃうんだろうね。
なので、期間限定になるよね。
そんなコーヒーを、司令官殿が実に美味しそうに飲んでるね。
で、お話があるのね?
あたしに用事なのね?
取り巻き君、団長に言いつけてやるとか言ってたもんね。
「付き人イクミ殿、お願いがあるのだが」
ほら来た。
みーよが、あたしを思いっきり怖い顔で睨んでくる。
全くもーホントに世話が焼けるんだからー
うん、ゴメン。
……あんまり反省してはいないけど。
「拙者との訓練に付き合って頂けぬだろうか。むろん、大聖女殿の立ち合いのもとで、だが」
みーよの立ち合いで?
「付き人は、聖女の祝福によって、最大限の力を発揮できるのであろう?」
ま、そりゃそうだけどね。
「なんでもあり、で、いいの?」
「無論だ。“聖戦方式”であれば、命の危険はあるまい」
うん、そうなんだけど。
「コッチは出来ても、ソッチが聖戦に応じられなくない?」
「ワシが立ち会えば問題なかろう?」
テイル、だっけか。僧職者なんだろうけど、そんなこと出来るの?
「それで結構です。でも、その……」
へえ、出来るんだ。
でも、みーよが何か、口ごもっている。
「うちの付き人、本当に強いので。手加減というか、八百長させても、よろしいですけど……でも、郁ちゃんだからなぁ」
あたしが強すぎて、司令官殿を叩きのめしちゃうって事だよね。
でも、八百長……あたしには無理かもね。
「いや、そのような配慮は不要だ。聖女殿、何か勘違いしておられるようだが」
まっすぐ、みーよの顔をみる司令官。
「拙者は伊達に“不退転”と呼ばれている訳では、無いのだよ」
へえ、なんか自信ありげだね。
「……んもう、郁ちゃんってば。
……判りました。お受け致します」
あら、顔がニヤついてるって、バレちゃってた?
そりゃ、まあ、分かるか。




