226.「こ、これ、失礼ですよ……」
新しい下着と制服にお着替え。下着は虎柄。お久しぶりかしらん。
シャワールームを出ると、新しいガードグローブとエンジニアブーツ。前のはメンテに出すらしい。オーク軍との戦いで、結構ボロボロにしちゃったからねぇ。
で、クロワッサンとコーヒー。とりあえず軽く食べて、食堂でちゃんとした朝食を貰ってね、ということらしい。
みーよはもう一つの寝室でシャワー中。シャワールームが二つあるって、便利ね。
電源にドライヤーを繋いで、みーよの長い髪を乾かしてあげる。
お返しにあたしの髪も乾かされたけど、こっちは短いんで、すぐに乾くのよね。
みーよはいつもの法服の上に、新しい大聖女のローブを二重に羽織り。
繊細な宝飾が施されているティアラを頭に着けて。
おにゅーの杖を携えて。
あたしを引き連れ、いざ、御出勤です。
といっても、廊下を出てすぐ右の部屋に入るだけ。しかも内部のドアで繋がっているんで、所要時間5秒なんだけどね。
「おはようございます、大聖女さま、付き人様」
執務室の机の前、その両脇に、メイドさんが4人、並んでお辞儀。
執務机の脇に、老執事さんと同じ年代の、ちょっと良いメイド服を着ている老婦人さん。
そういう扱いが当然のように、みーよは中に入っていき、執務机に向かう。
執事さんが椅子を引き、そのまま腰掛けるみーよ。
なんか、絵になるね。
横に、杖を差し込む枠のようなものがあり、老婦人さんがみーよから杖を恭しく受け取ると、その中に杖を差し入れた。
そのまま、机の向かいに回り込む執事さんと老婦人さん。
その後ろに、メイドさんたちが二手に分かれて並んでいる。
で、あたしはみーよの背後で、付き人です、という顔をする。
「本日のご予定をお伝えいたします」
老執事さん、ちょっと緊張気味に話し始める。
「ポートビリアの各宗派の代表者様方との会見、傷病兵士への慰問、行政官たちとの会議、都市の治安に関する会議、領主様との会合で御座います」
「承知しました」
ついで、老婦人が話し始める。この人、多分、メイド長だね。
「大聖女様の身の回りのお世話に関してですが、着付け、身だしなみ、清拭が不要とお伺い致しました。それでよろしいでしょうか?」
「構いません。それと、今後はこうした朝の挨拶も不要です」
「よろしいのですか?」
「不要です。予定を教えて頂き、こちらで調整させて頂きます」
みーよは、老婦人をじっと見つめる。
「わたくしは、任期を終えるまで、この都市の復興に尽くす所存です。不要な儀礼を廃し、皆で復興に向けて尽力したいのです。部屋の清掃、管理はお任せいたしますが、わたくしと付き人に関しては、干渉無用でお願い致します」
老婦人、みーよの意志の固さを確認したのか、ゆっくりと頷いた。
「承知致しました」
「食事も、皆と同じく食堂まで出向きます。こちらに持ってくる必要はありません」
「し、しかし、それでは権威といいますか、示しが付きません」
執事が、ちょっと焦ったように言う。
「構いません。わたくしは、元々オラクルの冒険者でしたから、そのような権威など、必要ないのです。次に任命された大聖女が求めるなら、その通りにしてあげてください。それに……」
「それに?」
「わたしの付き人、すごく食べるので。食事をこちらに持ってこられると、必要な分を食べずに遠慮しちゃいますから。食堂でうんと食べさせてあげてください」
一瞬、沈黙。
メイドの一人が、こらえ切れずに吹き出すと、他の3人も笑い始めた。
「こ、これ、失礼ですよ……」
とか言ってるメイド長も、なんか笑ってるし。
「しょ、承知致しました。た、確かにおっしゃる通りで……」
老執事も笑ってるし。
なんか、一気に緊張がほぐれたねぇ。




