223.「いくみぃ! やっと繋がったよぉ!」
二人で、そのまま守護結石が置かれている塔に向かう。
何人か、メイドや掃除夫、近衛兵かな? の巡回にすれ違ったけど、皆一様に、あたしたちに道を譲り、敬礼していく。なんか、くすぐったいな。
みーよは堂々としているので、あたしも付き人ですって顔で、凛としてはいるんだけどね。あたし、女優志望ですから。
渡り廊下を通り、階段を登って、踊り場で折り返してさらに階段。
居住区にある3つのドアをスルーして、さらに階段を登ると。
ようやく、守護結石の鎮座する部屋へ。
長い階段。あたしは平気だけど、みーよは大丈夫なの?
ああ、この程度は平気みたいね。息が切れていない。
現代のみーよだと「疲れたー」とか言ってたはずなのにね。
で。
大聖女みーよ様。もしかして、これって……
「わたし、大聖女に成れたから、多分だけど、現代に繋がれると思うんだよね。ちょっと、やってみるね」
やっぱり、そうでしたか。
比較的自由にさせて貰えてるとはいっても、一応は隷属の身。
こういうことは慎重に、時期を見定めてやらなきゃダメって事かしらん。
みーよが、新しい法服の裾をキレイにたたみ、床に両膝で跪いた。
頭をかがめ、新しい形状の、しかも心なしか材質も上級に変わった気がする杖を掲げる。
杖の先端にある石が輝き始め、周囲の3本のリングもクルクルと、それぞれ別方向に回転し始める。すごくキレイ。
守護結石が呼応し、石全体が光り始め、透明になっていく。
あ、この石、モニターだ。モニターになる。
あたしがそう認識したと同時に、石から声が聞こえ始める。
おぼろげな姿も見えて、それが形を取り始める。
パパだ。
うわぁ久しぶり、ようやく繋がったよ。
「“おかえりパパ”」
一応、声紋認証してみる。
「いくみぃ! やっと繋がったよぉ!」
スーツ姿のパパ。姿も音声も、クリアに見えるし聞こえる。
「そっちはどうなの? あたしたちの身体は?」
「一応、問題ないよ。おまえが異世界で倒れる程のダメージを受けた時は、こっちの身体も危なくなったけどな。美代子さんの身体も、大丈夫だ」
あ、身体同士もやっぱり繋がってるんだ。んじゃ、こっちで死んだら現代の身体も死ぬってことね?
「そっちの世界とは、明らかに時間の流れが違っている。この世界の一日が、現代の1時間に相当するらしい。お前が異世界に渡ってからしか計測できなかったようなので、美代子さんが異世界にいた時間は分からないけどな」
なるほどね。あたしがこっちの世界に来て、28日目だっけ? 現代では28時間経ってるのね?
「美代子さんの依頼を通して、こちらの精神感応金属より援助要請が色々来てるぞ。酒とかレトルトとか、後、トラック? 車? いくみぃ、お前、よくあんなもの操縦できるな」
ああ、やっぱりそういう仕組みなのね。女神ちゃん、自前で現代の用品を支度できるわけはないと思ってたよ。
「ホント“やりたい放題”だな」
うん、それ、こっちでも言われてる。
「パパのおかげだよ。ありがと、パパ」
「な、な、なんだよ急に……」
うわぁ、顔が真っ赤。ウフフ、可愛いね。
「パパと繋がれたって事は、いつでも現代に帰ろうと思えば帰れるのかな?」
「うーん、どうだろうな。美代子さんと、美代子さんを異世界に召喚した存在次第だと、思うけどなぁ」
随分とあいまいだね。その辺は、まだ分かんないの?
「いくみぃ、お前は戻ろうと思えば、すぐに戻れるぞ。でも」
「みーよと一緒じゃないと、戻らないよ。言うまでもないでしょ?」
「分かってる」
「もう少し成り行きを見守ってみるよ。ありがとう、皆によろしくね」
「ああ、頑張れよ。美代子さんの理力が……回復……また……」
あ、通信が消えそう。パパの身体がぼやけ、声が遠くなる。
そのまま、消えた。
石の光が戻り、鈍い灰色になる。
みーよの杖の光も消えて、そのままみーよが倒れそうになるのを、慌てて支える。
「う、ごめん……」
現代と繋がるって、思った以上にみーよに負担になってるみたいね。
結構な階段を登って来た時には何でもなかったのに、みーよの息が荒い。
「立てる?」
「うん、無理」
あたしは、みーよを抱えて立ち上がった。お姫様抱っこってヤツだね。
普段は照れるのに、そんな余裕もないらしい。
でも、結果は知りたいみたいね。
みーよは、あたしが現代と繋がっている間の意識は全くないらしく、あたしとパパの話の内容も分からないんだって。
で、あたしは、無事に現代のパパと繋がれたこと、向こうでの1時間がこっちでの1日だということ、向こうの身体が無事な事を伝えた。
そして。
あたしたちが現代に戻るためには、どうやら女神ちゃんを納得させる必要があるらしいことも伝えた。 みーよが単に大聖女に成るだけでは、まだ足りないみたいなのよね。
それは、みーよも、よく分かっているみたいね。
あたしは、みーよが納得するまで、ずっと側にいるからね。




