217.みーよ、本当に、大聖女様になるんだね
エロハゲたちと一旦別れて、司令官や取り巻きたちと共に、さらに階段を登る。
明らかに異質の金属で作られた両開きの扉を、取り巻きのうち2人が開けてくれた。
中に、標準的な人間の成人男性くらいの、かなり大きな石が“浮いて”いた。
水滴の形をしていて、滑らかに磨かれている。
細い方が下向き。床から一段高くなっている円形の台座から、30センチくらい浮き上がっている。もしかして、ゆっくり回転しているのかもしれない。
鈍い銀色。所々、チラチラと光ったり消えたりしている。
うん、これ、回転してるね。
石というよりは、金属に近い。
これ、見たことがある。多分、まちがいない。
「“オリハルコン”だよね?」
「うん」
みーよは、知っていたみたい。
現代で、小惑星から発掘された未知の遺物。
Dr.エニグマが夢中になって研究している素材。
女神ちゃんが現代に肉体を残しているみーよと交信するために使っている、精神感応金属。
「聖女殿。感応できそうか」
司令官殿が尋ねてくる。
「初めてなのですが、やり方は先生に習っております。やってみます」
みーよって、マムちんにそんなことまで習ってるんだ。
マムちん、すごい人なんだね。
そんな見た目じゃないのにね。
みーよが、宙に浮くオリハルコンの前まで進み、跪いて杖を掲げる。
「光の女神アーリューシャイン様、
ポートビリアの民を導き、守護し、祝福する意志と御力を、
守護結石を慈しみ、意思を伝達し、恩寵を行使する権限を、
あなた様の御威光のうちにお示し下さい。大いなる光の祝福を……」
みーよが、深く、深く、自分を差し出すかのように、祈っている。
杖が光りだし、やがて、みーよが着ている法服まで光りだした。
法服自体も変化している。二重造りになるみたい。
新たに現れた法服は、襟の部分が大きく、短めの袖や縁に沿って文様が浮かび上がっている。
どうやら、元の法服の上に着こみ、腰を太めの帯で留めるという造りね。
杖も、先端の宝石が大きくなり、周囲にリングのようなものが3本生じて、中心を守っている。
頭にはティアラ。ヴァラミンが被っているヤツに似てる。カッコイイ。
みーよ、本当に、大聖女様になるんだね。
オリハルコンも所々がチラチラと光りだし、やがて石全体が輝きだした。
鈍い銀色だったのに、透明に近くなっていく。
あたしや他の人の心の中に埋め込まれている、マインドクリスタルと同じだね。
そうか、確かにオリハルコンとマインドクリスタルは、同じ素材なんだね。
光が強くなり、目を開けていられない程に輝くと、不意に消えた。
「……成功しました」
少し疲れた様子で、みーよが立ち上がる。
よろけたので、背中を軽く支える。
礼を言うように頷いて、司令官たちに向き直る。
「わたしは、ポートビリアの大聖女となり、守護結石の正規守護者を拝命致します」
「うむ。よろしく頼む」
司令官殿が、大きく頷いた。
司令官と取り巻きたちが、何か相談している間に、あたしの質問にみーよが答えてくれた。
「守護者って、何するの?」
「住民登録されている人たちが、確かにこの都市の人だと証明するのが第一の御務め。
後は、外部からの魔力や理力による干渉に、強く抵抗するのも御務めの一つね」
なんか言ってたね。そんな事。
「周辺の村々を巡礼し、結界石に、守護結石からの理力を注入することで、この土地は都市の一部であると現わすのも、大切な御務め」
オラクルの現大聖女(仮)である真っ赤っ赤がサボってるやつね。
「登録カードを持っている人が都市のどこにいるかを把握したり、登録カードを持たずにうろついている危険な存在へ、衛兵たちに注意を喚起する役割もあるのよ」
それは知らない。マインドクリスタル、つまり住民カードを持っている人がどこにいるか分かるし、持っていない人の事も分かっちゃうってことかしらん。
「ずっと、守護者のお仕事をしなきゃならないの?」
「普通は交代で行うよ。それを任命する権限も、正規守護者が持っているの。後は、何もしないで普通に休むこともあるわね」
「何もしないの? その間は、無防備って事?」
「守護者が食事を取ったり休息したり眠っている間は、そうなるわね」
「大丈夫なものなの?」
「都市も、人間と同じだから。仕事以外でリラックスしていても、急にドウコウはならないでしょ?」
ま、そりゃそうだね。
みーよ、なんでも良く知ってるんだね。




