216.あたしの身体が、なんだって?
どうも、警戒が緩いね。あたしらだけにして、構わないとか。
ま、とりあえず、情報が欲しい。
席に着くと、みーよが光の奇跡でコーヒーセットを出してくれた。
で、エロハゲは相変わらず、苦虫をかみつぶしているし。
愛人二人も無遠慮にあたしをジロジロ睨んでるし。
デンは、我関せず、だね。
ま、なんにせよ、みんな生きてて良かったわ。
「その首輪は“隷属”だな?」
「はい。ポートビリアの大聖女に就任し、しばらくは守護結石の正規守護者を務めることになると思います」
みーよが凛とした顔で、エロハゲに答えた。
そんな、ちゃんとしなくてもいいのよ、こんな奴なんかに。
そういえば、他のみんなは捕虜扱いじゃないのね。
拘束もされてないし、首輪も付けていない。
これって、あたしたち、だけなの?
「単に、いいように利用されるだけだぞ」
「承知しております」
エロハゲの追及にも、みーよは全く動じない。
「ふん。好きにすればいい」
面白くなさそうに、エロハゲは横を向いてコーヒーを口にした。
「みーよから簡単に聞いたけど、オーク・キングを倒した後、どうなったの?」
聞いてみたけど、誰も答えない。
そういえば、このメンバー、こういう説明が出来そうなのが一人もいないね。
マイアミでもいれば、理路整然と説明して貰えるんだけど。
連中もそう思ったのか。
中身はエロエルフの布人間、んと、ベラとか呼ばれてたか、が口を開いた。
「私の聖布で周囲を覆い、闇の障壁がまだ晴れていないように見せかけて、時間稼ぎをした。
その間に、ペルージャとデンが残りのオークどもの魔石を回収した。
ヌシ様が死骸を浄化し、奴らの装備も回収した。
聖女殿は、我々全員にまとめて治癒を掛け、お前の深い怪我に上級の治癒を施した。
その後、皆で集まり、オークの荷車に紛れて身を潜めた」
ふーん。大体、みーよの話と一緒だね。
「聖女は穢れた血に触れると理力を失うから、お前の血まみれの羽衣は、私とペルージャで剥ぎ取った。
ヌシ様好みの良い身体を持っているな。憎らしい。
ペルージャも大変怒っている。こんな豊満な身体、許せないと言っている」
ん?
何言ってるんだコイツ?
あたしの身体が、なんだって?
「その後、皇龍公国の準騎士団が突入してきたので、迷彩を解いて保護を求めた。以上だ」
なんか、変な事言われたけど。
状況は大体、分かった。
「で、アンタらはこれからどうするの?」
ベラは、ヌシ様とか呼んでるエロハゲの方を見る。
どうなされますか?
目が、そう語っている。
そして、ヌシ様大好き、な顔をしている。要らんわソンナもん。
「キングやハイ・プリーストを含むオークどもの魔石や装備は、皇龍公国で買い取って貰えるそうだ。お前ら“やりたい放題”と、儂ら“東門”の折半で良いだろう? “なんでもあり”の取り分もあるかもしれんが、この場におらんモノの事まで面倒は見られん」
“なんでもあり”って、マクロン閣下の事?
いや、この場合はシュトラムたちのパーティー名ってことでいいんだよね。
ややこしいな。
で、彼らは無視して、パーティー同士で折半しようってことか。
ま、いい所でしょ。
あたしも単独でキングを仕留めれるか、とは言えないもんね。
アンタたちがある程度弱らせてくれたから、だと思うよ。そこは認めるよ。
「で、儂らは清算が済み次第、オラクルに帰還する。お前らの速い馬車を当てにはしていたが、ベラの聖布に乗ってゆるりと戻るしかあるまい」
「アンタらは捕虜扱いには、ならないの?」
エロハゲは、フンと鼻を鳴らした。
「御免だな。儂らは冒険者ギルドから依頼を受けて、オークキングを倒しに来ただけだ。
お前らこそ、なんで捕虜なんぞになりたがるか、その方が不思議だがな」
ま、それはそうなんだけど。
考えるのは、あたしじゃないし。
「頼める義理じゃないのは判ってるけど、マム院長には、暫く帰れないかもって伝えといて」
「確かに、義理はないな。だが、伝えよう」
へえ、意外に素直ジャン。
「お前らは“やりたい放題”の割に、苦労の多い道を行くんだな」
ちょっと呆れたような、でも、ちょっと見直したような、そんな顔。
何考えてんのかは、分かんないわ。
「ちゃんとオラクルに戻ってこい。お前との決着は、まだギルマス預かりだからな」
「当然でしょ」
アンタよりあたしの方が強いってこと、ちゃんと証明しなきゃね。
でも、まあ。
周囲が見られないアンタの面倒は、どうやらあたしが見なきゃならないらしいからね。
そういう意味では、あたしの方が上だね。
そんなことを考えているあたしの顔を、しかめっ面で睨むエロハゲ。
でも、扉がノックされて、話し合いはおしまい。
んー結局、大したことは話せなかったね。
まあ、相談できる相手でもないしね。




