213.握手をお願いしてもよろしいだろうか?
みーよの光の奇跡で、無事に制服、ガードグローブ、エンジニアブーツと、装備一式を身にまとえたね。
取りあえず、これでオッケー。
後は、あたしの腰袋とアギト・ナイフがあればいいんだけどね。
無ければ無いで、何とかするけど。
「何がどうしてどうなったの?」
情報は、分かりようがない。聞くしかないね。
「あの後、わたしがマルチ・ヒールを全員に、アドバンス・ヒールを郁ちゃんに掛けて。ベラさんの聖布術で全員を覆って」
で、オークどもの増援が来て、潰されちゃうはずよね?
脱出できないんだから。
「キングを失ったオークどもが混乱している間に、救援の軍が到着したの」
へえ、そんなに近くまで来てたんだ。
「ただ、救援軍は魔導帝国じゃなくて、皇龍公国の準騎士団が来てるのよ」
皇龍公国?
なんか、聞いたことがある。ウチらのいる国と、仲が悪いんだったっけ。
準騎士団?
こっちは初めて聞く、と思う。正規の騎士団じゃないの?
「で、わたしたちは……一応、捕虜の扱い」
なによ、みーよ。あたしの顔色を窺ってんの?
うん、一応、元気よ?
お腹空いてるけど。
ああ、捕虜扱いになってるので、暴れたらマズイってこと?
あたしは、あたしのやりたいようにやるよ?
知ってるでしょ?
「でも、司令官っていうか、騎士団長さんがいい人なので、あの、その」
なによ?
「あまり失礼な態度を取らないで、ね?」
みーよ、あたしをなんだと思ってるのよ。
そんな常識はずれな事……
ま、たまには、外れるようなこと、してるかもしれない、ね。
外には、全身甲冑で武装した兵士が2名、待機していた。
立ち方に揺るぎがない。結構、鍛えられてるね。
でも、たった2人でしょ?
逃げようと思えば、逃げられそうね。
ま、信頼されてるとは言わないけど、扱いが丁寧っぽいので、もう少し付き合いましょう。
周囲は、あたしの寝てた天幕と同じ形なのが、結構な範囲で、幾つも設置されている。
軍の野営地みたいね。
天幕の周辺を出入りしている兵士たちは、ほとんど甲冑を外しているみたい。
あたしたちを、好奇心のこもった視線で見ている。
なによ、そんなにあたしの制服が珍しい?
っていうか、あたし捕虜なのに、こんな野営地で寝かせられてたの?
しかも裸同然で。
司令官、何考えてるんだろ?
みーよが、あたしの考えを察したらしい。
「……向こうの国でも、郁ちゃんとわたし、その筋では結構有名になってるのよ」
「そうなの?」
「冒険者ギルドは、国境に関係なく広がってる組織だから」
ああ、ギルマスがそんなこと言ってたような。
「なので、一応は捕虜扱いだけど、敵軍の兵士とは見なされない、って感じね」
なるほどね。なんか、納得したわ。
野営地を抜けてすぐの所に、ちょっと大きな天幕が設置されている。
この軍の、司令部ね?
案内してきた全身甲冑の兵士たちが立ち止まり、面甲を上げて、あたしに礼をする。
なに?
「オーク・キングを打ち倒した英雄殿に、握手をお願いしてもよろしいだろうか?」
英雄。あたし?
手を、差し出された。
そんな大層なものじゃないんだけどね。
ま、いいか。
手を握り返したら、なんか感動している。
もう一人にも、ね。
で、彼らは胸に手を当てて、敬礼。
あ、どうも。見送りご苦労さんです。
で。
あたしたちは、大きな天幕の中に入った。




