210.「お前らは……ホントに“やりたい放題”だな」
警戒が緩んでいる中を、そろそろと車を走らせていく。
ポートビリアの街が見えるところまで、近寄れた。
高い城壁、高い塔。燃える正門。街の一部にも火が放たれているみたい。
「一旦、ここで待て」
デンがそう言い、あたしが開けた窓から飛び降りて、敵地に潜入。
あたしたちは、この場で待機だね。
周囲にはオークどもはいないので、じっとしている限りは、見つからない、と思う。
「ベラ、透明化は後どれくらいもつ?」
「もう少し行けます」
へえ、布エルフ、ベラっていう名前なのか。
「ペルージャ、お前は儂と一緒に来い。イクミ、周囲のザコはお前がデンと一緒に片付けろ」
「指図すんなって言ってるでしょ」
なんでお前なんかの指示を受けなきゃなんないのよ。
「ヌシさまになんて失礼な物言いニャン!」
お、ネコ娘、ちゃんとしゃべれるんだ。
「お前の腕は聞いている。お前にオーク・キングは無理だ」
「な、ナニよそれ」
「周囲は任せていいだろう。儂の邪魔だけはするなと言っている」
そんなことも分からないのか、という顔をされた。
「儂の拳は一対一ならほぼ無敵だ。邪魔さえ入らねば、何が相手でも倒せる」
なんか、ダナンみたいな事言ってるね。
「キングを倒せば、オークどもをまとめるものはいなくなる。連中は次のキングの座を狙って、こんな戦をしている余裕は無くなる」
理屈は分かるけどさ。だから何よ?
「キングを倒せば、この戦は終わりだ。倒せなければ、ポートビリアが終わりだ。
儂は邪魔されなければ、必ずキングを倒す。邪魔されたら、倒せん。
お前らが周囲の近衛兵を足止めしておければ、キングの暗殺は成功する。出来なければ、この計画は失敗し、この場の全員が命の危険にさらされる。
やるべきことを行え。決して失敗するな。
……デカ乳娘には、分からんか」
デカ乳。こ、このヤロー!
みーよに、肩を掴まれた。
振り向くと、ゆっくりと首を振られた。
ま、まあ、理屈は、分かるんだけど、さ。
でも、でも、コイツ、生理的にどうしても我慢できないのよ!
「ザイモン様が失敗したら、郁ちゃんがオーク・キングを倒さなければならないの。手段は複数あった方がいいでしょう?
ザイモン様は、世界は自分中心に動いている人だから、わたしたちが先に突入しても、フォローとかは出来ない方なの。
だから、全体を見守りながら戦える、郁ちゃんが後ろで構えていて欲しいの。
郁ちゃんにしか、この役回りは出来ないのよ」
あたしは、みーよをマジマジと見つめた。
あたしにしか、出来ない……
そうよね。これはあのエロハゲには絶対無理な事よね。
うん、よし、分かった。分かったよ、みーよ!
なぜか、エロハゲが、みーよを少し怒った顔で見つめている。
で、みーよはあえて睨み返さないで、すましている。
「それで決まり。エロハゲ、アンタが言い出したことなんだから、ちゃんとやってよね。仕方がないから面倒は見てあげる」
「お、お前の面倒なんぞイラン!」
「ハイハイ。アンタはアンタの出来ることをやればいいのよ。失敗しても大丈夫よ。あたしが付いてる」
「お前らは……ホントに“やりたい放題”だな」
ナニカを押し殺して、エロハゲが呟いた。




