207.アンタ、そんな声だったのね
みーよが、ピックアップトラックを奇跡で召喚びだした。
「なんじゃ、これは?」
マクロン閣下が、興味津々で見つめている。
というか、他の面々もビックリしている。
「付き人への報酬ですので、彼女以外は操作できません。座席に6人、後は荷台に乗って下さい。荷台は、出来れば前衛の方が宜しいと思われます」
あたしが運転手、真ん中にクチュクチュ、助手席にシュトルム。
マクロン閣下とヴァラミン、みーよが後部座席。
荷台にはエロハゲと愛人二人とデンが乗る事になった。
愛人のうち、全身布人間(中身は銀髪浅黒美人エロエルフ)の方が、荷台いっぱいに布を敷き詰めていく。ついでにテントのように、上の方も覆った。
中が、見えない。
デン、あの中に入るの?
ヤラシイことされ……るわけないか。アンタ、エロハゲの好みじゃなさそうだしね
それにしてもこの布テント、走ってる時の車の風圧で飛ばされないんでしょうね?
いや、そんな訳ないね。どう見ても不思議素材だもんね。
「敵地に近づいたら、馬車全部を迷彩で覆う」
低いハスキー声で、あたしに言う布人間。アンタ、そんな声だったのね。
「おっけー」
まあ、しょうがない。一時休戦にしてあげる。
「みんな乗った? 出るよ」
周囲を確認して。
居残り組に見送られて、冒険者ギルドを出発した。
~ ・ ~
正門の脇に、記録官のじいちゃん。ついでにお付きの近衛騎士たちが、松明で周囲を照らしている。
こっちもライト全開なので、眩しいね。
全員、車を降りて。
記録官じいちゃんが杖を振るって、あたしたちにアストレージの記録の祝福を掛けてくれた。これで、報酬の根拠がちゃんと得られるってわけね。
再び車に乗り込んで、門番たちの敬礼を受けながら、オラクルの門を潜り抜けた。
~ ・ ~
中継地オノ村まで30分。寄らずに通り過ぎる。
ここで夜明けの最初の光が、大地に注ぎ始める。
車酔いしてる人は、いなさそうね。荷台組は分かんないけど。
これは、シュランが弱すぎるのか。
オーク・アグフたちと交戦した村の残骸地を抜けて。
オーク分遣隊との激戦地も通り過ぎて。
オーク本隊の駐屯地も通過するだけで。
川沿いの、誰もいない道を、車を揺らしながら駆け抜けていく。
森の色も濃く、野生動物や魔物どもが潜んでいそうな奥地だけど、今ん所は何も遭遇しないね。
道は、一応馬車が通った跡があるので、間違ってはいないみたいね。
そのまま3時間位、走ったかしらん。
川を離れ、草原まで出た処で、少し休憩。
みーよが折り畳みテーブル、椅子、コーヒーセットを出している間に、あたしはドローンで周囲を警戒。上空高くまで飛ばして、周辺を航空写真風に撮影。
地平線の近くに、大きな河。
街があるね。そこから煙が2筋、たなびいている。
「なんじゃ、その魔道具」
マクロン閣下は、画面に映し出される風景よりも、タブレット本体の方が気になるみたいね。
でも、すぐにオシゴトモードに切り替わった。
「方角と距離が分かるのは、ありがたいな。星落としの準備を始めたいが、馬車の揺れがひどくて集中できん。ザイモン、お前の“繭”に入れて貰えんか?」
「お断りだ。誰が好んで爺なんぞ。繭には儂と儂の女しか入れん」
うわぁ、ヤラシイ。
それに、デンはアンタの女じゃないでしょ?
「マクロンさま、わたしが結界を張りますので、それで如何でしょう?」
「わたくしも揺れをとどめて差し上げますので、ご準備なさって下さい」
横からみーよとヴァラミンが声を掛ける。
うん。爺ちゃんモテモテだね。
「良かろう。よろしく頼む」
みんなでコーヒータイム。お菓子付き。
布人間(中身は……さっき言ったね)が、車を布で覆い始める。
布が、周囲と同じ景色に変化した。まるで透明マントだね。
しかもガラスの部分は、中からは景色が見える。
ナニコレ?
スゴすぎじゃないの?
「維持するのに少し集中がいる。その間は、戦闘には加われない」
低いハスキーボイス。なんかクセになる、イイ声だね。
コヤツ、出来る。




