206.なによ、みーよには素直なのね。ま、当たり前か。
まだ夜明け前。
街は、人通りもほとんどない。
みーよの杖の灯を頼りに、少し速足で、ギルドに到着。
玄関の扉は開いていた。
いつものフロアに、シュトルムたちのパーティーと。
うぬぬ、エロハゲと愛人二人がいる!
何しに来たっ!
「ま、待て、落ち着け」
あ、マイアミとダナンもいる。
レンブレンとチリチリもいるじゃん。具合はどうなの?
後は、初めて見る冒険者風の二人組。
獣人だね。猿、というよりはゴリラかイエティって感じ。
双子っぽい。
鎧は無し。極太の革ベルトをたすき掛けにして、腰ベルトに短いスカートっぽいのを履いて、背中にはマント。一応、ナップサックを背負っているね。
一人は蛮族刀、もう一人はオークどもが持ってるような大ナタで武装。
予備武器に短剣を下げているのは、当然だよね。
で、ギルドマスター。
「全員揃ったな。ザイモン、イクミ。取りあえず睨み合うのは後にしてくれ」
ちぇっ。叱られちった。
「緊急事態だ。ポートビリアがオークの大軍勢の襲撃を受けている。昨晩、帝国の大守護結石より、オラクルの守護結石に通報が入った。」
それを聞いて、みんなの顔色が変わった。
「昨日、ポートビリアの領主のご家族様たちが、オラクルに避難されてきているし、これはもう間違いない。ご家族様の話では、領主ご自身と街の守護者殿は残られているそうだが、陥落は時間の問題だろう」
「帝国の増援は?」
「準備はしているが、間に合わないだろうな」
「守護結石の状態は?」
「状況次第だが、外郭の正門は突破されている。守備隊の頑張り次第だが、2日、持ち堪えるかどうかだ」
「で、どうするつもりだ?」
エロハゲが尋ねる。
「ポートビリアが陥落したら、次はオラクルの番だ。今すぐ打てる手をすべて打ちたい」
ギルドマスターは、あたしたちをグルッと見回した。
「このギルドで今できる、最大戦力がお前らだ。選抜隊を結成し、奇襲でオークどもに大打撃を与え、混乱に乗じて奴らの王を討ち取る」
みんなに尋ねる。でも、何をするかは、もう決めている。
そういう顔だね。
「無茶を言う」
「そうだな」
「よかろう。儂がオーク・キングを仕留めよう」
あっさり、じつにあっさり、エロハゲがそんなことを言い出す。
側で愛人たちも頷いている。
「では、吾輩は特大の星落としを奴らに喰らわせてくれよう」
マクロン閣下が、髭をいじりながら宣言する。
「俺は全員の護衛。クチュクチュはオーク軍の動向を探る」
シュトルムも同調し、クチュクチュも頷く。
「派手に大地を破壊しそうですわね。皆の安全を優先いたしますが、大地の回復は、わたくしの勤めですからね」
ヴァラミンも参加だね。
「ワシは行かぬ。広場では役に立たんでな」
「私も足手まといになりそうですね」
ダナンとマイアミは不参加ね。
「……行く」
ぼそっと、デンが参加宣言。
「チリチリが万全ではない。俺たちは降りる」
レンブレンとチリチリは不参加ね。
「俺たちも行かない。オラクルの守りを固める」
猿型獣人の二人も不参加ね。ああそうか、コイツら、C級なんだね。
「オークの先遣隊が、もうこの辺にもウロついてるんだろ?」
「“何でも屋”の出番だからな」
何でも屋。んと、パーティの名前の事かしらん。
「で、“やりたい放題”は、どうするんだ?」
あたしらの事ね?
「参加致します。参加者全員の移動手段と食事、宿舎の提供は、お任せください。それと……」
「あたしの出番だね」
うん、腕が鳴ってきたわ。
で。
「シュラン、アンタは留守番ね」
「えー!」
「連れていきたいのは山々なんだけどね。まだアンタには早い」
ポーター制度で、下級冒険者たちと一緒に行くなら、連れていくつもりだったんだけどね。
マイアミやダナンが行かないのに、アンタを連れて行けるわけないでしょ?
「教会のみんなを守ってあげて。教会の敷地内なら、シュランにも付き人の奇跡は訪れるから。使い方は、先生に尋ねてね」
「は、はい!」
なによ、みーよには素直なのね。ま、当たり前か。
「決まったか。報酬は領主様にこれから掛け合うが、損はさせないようにする。街の記録官アストレージ様は正門に直接向かっておられる。祝福はそこで受けてくれ」
みんな頷いて、ギルドの外に出る。




