20.結構熱心に話しちゃったのかもしんない
翌朝、オラクルの街まで木の実や卵やエール(ビールに近い飲み物らしい。自家製。3樽あった)を売りに行く馬車に乗せて貰うことになり。
簡単にチーズパンとコーヒーで朝食を取り、そそくさと出発の準備をしていると。
なんか、村の人が総出で見送りしてくれた。
昨日の夕方、ふらっとやってきて、翌朝早く出発する、よそ者で旅人のあたしたちのために?
いや、熊とオオカミの奉納が、相当効いてるんだね。
そんなに嬉しかったのか。
村長が昨日のうちに、あたしが子供たちと遊んでいる間に、村中を回ってそういう話にしたらしい。ま、そんなに広くもない村だけどさ。
子供たちもあたしに抱き付いてきて「また来てねー」とか言うし。
村長も「今度はぜひ、闘いの指南をお願いしたい」とか言い出すし。
ん-教える事なんか、なんにもないよ?
あたしのマネは、あたししかできないしねー
でも、いい村だなー
ずっと、残っていて欲しいな。
あ、こういうの“フラグが立つ”とか言うんだっけ?
ま、まさかね。
でも、オークの脅威は、やっぱり大きかったんだね。
みんなが安心して暮らせるのなら。
成り行きだったけど、退治しといて良かったわ。
~ ・ ~
馬車は結構揺れるし、振動も酷い。
サスペンションという概念が無いらしい。
そしてみーよも、御者の中年の男も、その息子らしい若い子も(若いって言っても小学6年か、中学1年生位かなぁ。ゲルマン系は見た目より老けて見えるから、本当はもっと若いのかもね)平気みたい。
あ、あたしだって平気だもんね。やわらかいサドルクッションがあればもっといいなとか思ってないもんね。
最近、ようやくお嬢様扱いに慣れて来たっていうのに、ママチャリ時代のあたしに戻りそうだけどね。
若い子は、あたしとオークどもとの闘いを聞きたがった。
かいつまんで話してあげると、目を輝かせて聞き入ってくれた。
んーなんか、こういう風に話を聞いてもらうの、あたし、好きなのかもね。
かいつまんでいるつもりが、結構熱心に話しちゃったのかもしんない。
ま、ギルティとのコイバナよりはマシでしょ?
話しついでに、オオカミや熊との戦闘、というより、狩りだね、の話もしてあげた。
こっちの方も、かなりびっくりしてくれた。
普通、オオカミは罠を仕掛けるか、大勢で囲い込んで弓で仕留めるものらしい。素手で闘うものではないのだそうで。
ま、あいつら素早いからね。追っかけてもどうにもならないし。
向こうから来てくれたからの話なので、自慢できるもんでもないんだけどね。
熊公は、そりゃもう御馳走が向こうからノコノコ歩いてくるんだもん。狩らない理由なんかないよね、といったら。
普通は自分たちが食べられる心配をするものだと、たしなめられた。
冗談なんですよね?
ん-、みーよにも言われたよ。
でもねぇ、どうみても、毛皮をまとったお肉にしか見えないんだけどね。
道は徐々に石が敷かれているようになってきて、舗装されているのを感じる。馬車の揺れも、かなり楽になってきた。
いくつか、村も通り過ぎるようになった。ちゃんとした街道になると、道に沿って村が出来るんだね。
一面に広がる小麦畑。種類が違うのは大麦かもしれない。木の柵で防護を固めていて、門番もいる。こっちに手を振ってくれるので、振り返した。
ン?
あたしの格好に文句がありそうだけど。
ま、いっか。
~ ・ ~
ようやく、オラクルの街が見えてきた。
中継地として村で一泊したとか言ってたけど、案外近いんじゃない?
あー、出るのが遅かったのかな?
揺れる馬車で3時間位掛かったと思うけど、この世界の人は、この程度の距離は普通なのかしらん。
日の出とともに起きだして、日の入りと共に眠る。
そういう、健康的というか、ツマンナイ生活が、当たり前なんだとは思うけど。
そういうものだと思えば、慣れるのかもしれないわね。
みーよが、当たり前の顔をしているので、あたしも倣うことにした。
ま、制服は譲れないけどね。




