197.ハァハァと舌なんか出さないけどさ
姫様たちは、このまま領主様の屋敷に滞在させて貰うらしい。
居残り組とは明日合流して、今後の事を相談するんだとか。
うん、大変な旅だったね。
あたしたちへのお礼は、後日、必ずすると言われた。
冒険者ギルドに所属しているので、そっちに連絡してくれればいいと言って、そのまま別れたよ。
もう、夜もかなり更けているんで、ギルドも閉まってるね。
この世界の夜は、現代と違ってあまり夜遅くまで活動はしない。
城門が閉まって、しばらくしたら、街の皆はあるべき家に、あるべき宿屋の部屋に、あるべき粗末なねぐらに、それぞれ引きこもってしまう。
居るべき場所のない市民は、この街に居場所はない、事になっている。
実際は、そうでもないらしいけどね。
歩くのもメンドクサイし、馬車扱いしてくれそうなので、車で教会へ帰る。
スピード控えめ、安全運転、照明灯は全開。
道行く人が一様にビックリしているね。そりゃそうだね。
ま、あたしらのパーティー名“やりたい放題”に相応しいからね。
~ ・ ~
あたしらの教会に帰還。うん、疲れた。
車はギリギリ敷地に入りそうだけど?
みーよがあっさり消しちゃった。
玄関を開けると、ちびちゃんたちが駆け寄ってくる。まだ寝てなかったんだ。抱き上げるとキャッキャッと喜んだ。
「遅くまでお疲れ様。少し心配しました」
普段着のアリとリコット。見習い聖女服から着替えたんだ。
「何か、ありましたか?」
ケイトと、すぐそばに元気なエレナ。
「色々あったよ。うん、ホントに」
「報告して頂いても?」
後ろからマム院長と、側にくっついてるのがカンタ。マムちんとお話でもしてた?
「はい」
みーよが頷く。そうだね、大事な話だもんね。
一通り報告。
今日の収入は無かったけど、明日の朝、ギルドに行けば、依頼達成の報酬はとりあえず入る。
で、ポートビリアのお姫様の件が、どうなるかはまだ分からない。
領主様から支援の話がギルドを通してくると思う。参加すべきかどうか?
参加するとなると、この教会を長く空けるので、その辺の事はどうしよう。
みたいな話をみーよとマムちんがしている。
マムちん、少し考えている。
教会の事は、イラドたちがいるので多分大丈夫。
資金は、当面は十分にあるので心配はイラナイ。炊き出しも週一で続けたい。人手が足りないけど、スラムの住民のうち、好意的な人に頼んで手伝って貰えば大丈夫。
本当はシュランに残って欲しいけど、付き人の修行を優先させて欲しい。随分顔つきが変わって、本当に頼もしくなった、と褒められて、照れてやんの。
みーよがやりたいようにやって良い。アーリューシャイン様は見守って下さる。そんなことを言われた。
みーよも照れてる。シュランと同じレベルらしい。
あたしは褒めないの?
ハァハァと舌なんか出さないけどさ。なんか無いの?
……無いのか、くそぉ。
もうみんな夕食は終わったそうだけど、ケイトがあたしらのために食事を用意してくれた。パンとエールとスープの、いつも通りの食事だけど、とても美味しかった。
シャワーを浴びてポンチョな寝巻にお着換え。今日も色々あったなぁ。
女の子たちの面倒を見ながら、今日の出来事を話しているみーよを横目で見ながら、すでに寝入っているチビたちの寝息を聞いていると、まるで子守歌のように聞こえてくる。
すとんと、あたしは眠りに落ちた。
(つづくっ!)




