195.それでもいい、頼む
街の大通りを、ものものしい警備の中、進んでいく。
あたしとみーよとシュラン。姫様と侍女ともう一人の護衛隊長を乗せた車が、徐行運転でそろそろと進んでいく。
街の人たちの注目度が、なんかスゴイ。
「なにあれ?」
「馬が轢いていないぞ」
「アーリューシャインって書いてある」
「でっかいなあ」
「ああ、うわさの」
「聞いたことある」
「あれかぁ」
車に乗っているから聞こえないけど。
まあ、気分は悪くないよね。
ただ、シュランは挙動不審だけどね。
も一人、悪くない気分なのが、姫様だね。
物珍しそうに、窓越しに街や人々の様子を窺ってるよ。
「付き人さん、後ろの荷台に乗っても良い?」
まあ、幌は外したから、そっちの方が眺めがいいけど。
ってか、そっちはアンタの護衛がもう2人乗ってるんだけどね。
さすがに、身分とか気品とか、あるんでしょ?
侍女にたしなめられて、ちょっとがっかりの姫様。バックミラー越しにちぇって顔が映った。
生き残りの5人の護衛のうち、疲労がたまっていたせいで、ヒールでも治りきらない怪我だった2人は、 馬たちと共にあてがわれた宿舎に残ったみたい。
で、他所の都市の人たちなんで、街中を馬で歩くのはちょっと問題があるとかなんとか。
馬車で移動したい高貴な姫様や侍女様を、どうしようか?
で、この車。どうせ座席に乗り切れないんだし、護衛って事で、残り2名は荷台へどうぞ。
いいのかなぁ。
まあ、残された方も、野盗の処理や馬の世話や自分の治療や疲労回復とか、色々あるからね。
付いて来たそうだったけど、そっちはそっちでやることやんなさいよ。
で、高級なお屋敷が並ぶ第二区画の門をくぐり、いよいよ領主様が住むお城兼お屋敷がある、第一区画の城壁へ。
こっちは、正規の近衛兵の中でも特に選ばれた兵士たちが守護しているみたいね。出迎えは6人。完全装備。結構カッコイイ。
礼節もきちんとしている。羽根飾り頭の、街の門番に見せてやりたいね。
車を横づけ。
護衛たちが荷台から降りて、後部座席のドアの前に整列。
乗り込んでいた護衛隊長? が車から降りて、侍女、そして姫様が降りるのを手助け。
みーよとシュランも降りて。
あたしは、指示された所に車を停車して、みーよの所に戻る。
屋敷からは、執事さんかな? 恰幅のいい、立派なお髭の男の人が丁重にお出迎え。左右に連れているメイドさんと共に、立派な玄関をくぐりました。
天井高いな。
装飾も、大きな布を壁一面に掛けて、タペストリーにしている。
この世界は布が高いので、ふんだんに使っていることが権力の現れなんだろうね。
廊下を渡り、階段を上り、再び廊下を歩く。
結構、遠いね。
やがて、立派というより豪華な扉の前まで来ると。
お髭の執事さんは姫様と侍女、あたしとみーよ以外は、ここで待機と、のたまう。
なんで?
あたしの疑問の代わりに、車に乗っていた護衛隊長が理由を尋ねた。
謁見に相応しくない恰好だから、だそうです。
ま、まあ、そうとも、言うかなぁ。結構汚れてるからね。
でも、あたしは制服なんだけど、これでもいいの?
ああ、みーよの付き人だから、アリなのか。
シュランは、普通の皮鎧姿だから、高貴な謁見はアウトなの?
そういうもんなの?
護衛隊長、あら、納得するんだ。
侍女に何か言い、あたしにも姫様を守って欲しいと念を押される。
いや、あたし、みーよの付き人だから、姫様を優先には出来ないよ?
そう言ったら、それでもいい、頼む、だってさ。
いやーまーしょうがないなー




