192.そしてそれは、あたしも同じだけどね
街の外に出て、みーよにピックアップトラックを出して貰う。
ドローンの操縦用タブレットが、周辺地図を映すモニター代わりにもなっていて、シュランにナビして貰いながら運転した。
最初の村について、依頼のご挨拶。
この村はオラクルに比較的近いので、被害はそんなにない。でも、魔物の痕跡は確かに残っていた。
ドローンを飛ばして、広域を探ったけど、ちょっと見つからないね。
こういう時、斥候の技術を持った専門家がいればいいんだけどね。
デンでも誘ってみようかな。アイツ、くるかな?
……こないね。報酬安いしね。
で、村長さんが、魔物が見つからないなら、代わりに結界石の維持をお願いしたいと言ってきた。
やっぱり、魔物退治というよりは、そっちがメインみたいだね。
本当は大聖女様が行うお仕事なんでしょ?
でも、来て下さらないので、こんな形で依頼するしかないみたいなのよね。
本業として依頼すると、謀反の兆しアリ、にされちゃいそうなんだとか。
なるほど、これは困ったもんだね。
結界石の位置をタブレットに落とし込んで、シュランのナビで石の位置まで。
みーよが巡って、祈りを込める。お仕事完了。
さて、次の村へ!
2件目、終了。
3件目、問題なく終了。
夕暮れが近い。
オラクルへの帰り道。
道中、ちゃんとした馬車が襲われているのを発見。問題あり。
護衛が10人位。襲っているのは野盗。倍はいるね。
どうする?
「野盗は悪鬼と同じ扱い。ただ、人間の言葉は当然だけど、通じるよ」
「じゃ、仁義を切って、それでも歯向かうなら全滅させるよ」
何でもない事のように言うと、シュランが驚いた顔をしてあたしを見る。
「に、人間ですよ?!」
だから何よ。アイツら、平気で護衛たちを殺そうとしてるでしょ?
相手を殺そうとしている人間は、自分が殺されても文句は言えないのよ。
そしてそれは、あたしも同じだけどね。
車を飛ばして、現地に乗りつける。
「シュラン、みーよを守ってね。アンタは降りなくていい」
人を殺めるのに抵抗がありそうなシュランを残して、車を降りる。
戦っている最中の護衛も野盗も、あたしらの車を見て、一時休戦というか、戦うのを止めた。
周囲をざっと観察。
護衛の死人は5人。生き残りは半数の5人。うち、2人はボチボチ戦闘不能になるかな。3人が健在。腕が立つんだね。
野盗は5人死んでる。もう5人は怪我人。立ってるけど、まともな戦闘は無理かな。健在は10人。
立派な馬車は、中に人がいる。御者はいない。隠れたか、戦っていた護衛の一人なのか。
「な、な、なんだお前ら!」
野盗の一人が、半分おっかなびっくりで声を掛けてくる。
「あたしは聖女ミヨの付き人イクミ。どうみても、馬車を襲う悪党どもに見えるんだけど。降伏しないなら皆殺しにするよ」
一応、仁義を切ってみる。
でも、どっちも疑わしそうな感じ。
そりゃそうか、こんな見たことも無いようなピックアップトラックで乗り付けられてもね。
あら、みーよがシュランと一緒に降りてきたよ。降りなくてもいいのに。
「皆さま、無益な争いはお止めください。命があるなら、わたくしが癒しますから。どうぞ剣を納めて頂けませんか?」
野盗たち、顔を見合わせる。
助太刀のあたしたちは、聖女が一人、付き人が二人。
聖女の付き人は、とても強いという。
ただし、男なら。
でも、男の付き人は、まだガキ臭い。
で、女の付き人は、話にならない。
このまま、押しきれるか、どうか……
なんて、考えてるんだろうね。
「意味なく殺すのもカワイソウなんで、見せしめになってくれそうなの、いない?」
出来るだけ可愛い声で、物騒な事を言いながら、野盗に近づいていく。
みーよに手を出されても困るんで、とっとと終わらせたい。
だってコイツラ、割と美味しそうなんだもん。
「何言ってやがるんだ」
お、反応アリ。ちょっとアゴが曲がっている、30代位の背が高くて貧相な体つきの男に向かって。
ダッシュ!
「あ、お、」
なんか言ってる。周囲の反応も少し鈍い。
3歩、2歩、まだ反応なし。イケル。
「おま……」
1歩、間合いに入った。
右脇腹に手加減なしのボディブロー。
間髪入れず、左拳を上方に振り廻してアゴを思い切り揺らしてやった。
右手をそのまま男の両足の間に入れて、すくい投げ。
地面に倒して顔を踏みつぶす。
まず1匹。
「な、なにしや……」
もう間合いに入ってるのに、なんかほざいたデブの顔面にストレートパンチ一発。
吹っ飛ばしたのを見もしないで、後ろ廻し蹴りで3匹目を失神させる。
そのまましゃがみダッシュで、固まってる3人の足元へ。
くるりと後ろを向き、上方に向かってヒップアップボンバー!
まとめて3匹片付けて、周囲を確認。
やっと、残った4匹が刀だか剣だかを構え始めた。怪我人たちは腰をぬかしてるね。
「素手でもいいけど、そっちがその気なら、あたしもアギト・ナイフを抜くよ。これ以上歯向かうなら、殺すから」
短刀を抜いてみせると、4対1なんだけど、野盗、完全にビビっている。
「武器を捨てな。今すぐに」
一応、仁義。
うん、さすがに、捨てないね。
んじゃ殺そうかな、と思った時。
「4対4だ。降伏しろ」
健在な護衛3人が、野盗に向かって剣を突きつけた所で、連中は武器を捨てた。




