188.「シュラン、あんなに強くなってるの……?」
広場に長テーブルと椅子をセット。
簡易の窯も据え付けて、後は台所でパンを焼いてスープを煮込む。
そっちはケイトとエレナが担当してくれる。
食器の出し入れはシュランとカンタのお役目。
で、炊き出しの時は、門に女神ちゃんの絵が描かれた旗を掲げるらしい。
ついでに旗を持ってスラムをぐるぐる回るんだとか。
その周辺めぐりを、アリとリコットが行う。
見習い聖女の大事なお役目らしいんだよね。
アリは経験者。リコットは初めて。
あたしはそのお供を仰せつかりました。
マム院長とみーよは、教会の中で打ち合わせ。
みーよも、話は聞いてるけど、実際に行うのは初めてなんだそうで、割と緊張気味。
リコットが旗を持つ係で、アリちゃんが呼び込み。
ん-声が小さいね。
「光の女神アーリューシャイン様の思し召しでーす」
「思し召しでーす」
「お昼に、説法と治療、炊き出しを行いまーす」
「行いまーす」
スラムの連中も、聞いてるんだか、いないんだか。
いまいち、反応が薄い。
ただ、陰で注目されているのは判る。気配が濃いからね。
どうやら、危険性みたいなものは、なさそうだね。
と思ったら、ちゃんとアブナイのがお出ましだった。
門の側で、貧しい身なりでやってきた人たちを脅してる連中がいるよ。
チンピラ、かなぁ?
人数は3人。
声を掛けようとしたら、中からシュランが出てきた。
なんか言い合っている。
男たちはシュランよりデカいのに、一歩も引かないね。
面白そうなので、見学する。
アリちゃんがあたしの袖を引くけど、ま、黙って見てな、というと、おとなしくなった。
それを見て、リコットもシュランを信じることにしたみたい。
お、殴りかかってきた男の腕を内側に引き込んで、そのまま足を掛けて転ばせてる。
なんか言う前に脇腹を蹴飛ばして。
そのまま二人目にタックル。脚を掴んでひっくり返したね。
顔面にイイやつを入れて。起き上がりながら3人目を睨みつける。
アハハ、大の男3人相手でもビクともしないのか。楽しいねぇ。
「シュラン、あんなに強くなってるの……?」
「誰が教えていると思ってるの? それにアイツ、もうEランクだよ? 普通の男じゃ何人いても敵わない。魔物相手にだって、ひるまないからね」
はあぁ、と見つめるアリちゃん。
さて、ボチボチ、顔出しておくか。
「ただいま。ゴミ処理ご苦労さん」
胸を軽くコツンと叩くと、ニヤリと笑われた。
「で、あたしの縄張りに何の用だい?」
男たちを睨むと、互いに顔を見合わせる。
「は、話が違うぞ……」
「こんなに強いなんて……」
何の話?
「こいつら、新参者のスラム住民ですよ。へき地で喰いはぐれたか、野盗から足を洗って、オラクルに潜り込んだんですね。師匠が来る前の教会の様子を、噂で聞いていたんでしょうね」
ふーん。
「ウチが舐められてるってことで、いいの?」
「ええ、まあ」
男たちがオドオドと、シュランとあたしを見る。
で、後ろのアリやリコットの様子も、見る。
このチビ助は、皮鎧着てるし、見かけに寄らず強かった。
だが、女どもだけなら、なんとか……
視線で丸わかり。まるで舐めきってるんだね。
「おまえら、一応言っておく」
お、シュランが前に出てきた。
「この人、聖女様の付き人。で、俺の師匠。俺の100倍強い」
え?
は?
コイツが?
男たち、キョトンとしてる。
「警告はしたぞ。師匠に手を出したら、お前らなんかあっという間に喰われるからな」
そう言って、アリやリコットの肩を押して教会の中に入っていく。
なによ、コイツらどうするの?
シュランが振り向いた。
「弱すぎて話にならないんで、美味しくないですよ?」
は、はあ。
シュラン、言うようになったねえ?
男たちを見る。
「で、どうすんの? ヤルの?」
男たち、あたしの外見を見て、互いに目配せして。
3人がかりなら何とかなるかも、とか思ってるのね。
一斉に立ち上がり、飛び掛かって……
右廻し蹴り一閃!
軽すぎるんで、3人まとめて、吹っ飛ばしてやった。




