184.ヒドイ先輩だ。自覚してる
で、洞窟の中。まだいるんでしょ? 小鬼ども。
「みーよ、灯」
「まだ行くの?」
「だいじょぶだいじょぶ」
頭がハイになってる、あたし。
どこまででも、どこまででも、行ける気がする。
みーよの灯と共に、中に入る。
後ろからシュランも付いてくる。後ろの警戒は大事。判ってるねぇ。
それほど奥に行かないうちに、行き止まりになってる。
中には、ゴブリンはいなかった。
代わりに、変わり果てた女性の姿が。
息はある。意識はない。ついでに全裸。
こんなのばっかりだ。ホントに許せない。
散々殺したけど、殺し足りない。
悪鬼は全員ぶち殺す。全部ぶち殺してやる。
「う、うわ……」
後ろで、シュランが叫んでいる。目を逸らした、らしい。
みーよが、光の奇跡で毛布を出してくれた。
彼女を包んで、車に運ぶ。
メンドクサイけど、ゴブリンどもの魔石も、死骸を切り裂いて回収する。
ホブゴブリンの魔石が、高く売れるといいね。
あと、棍棒は大したこと無さそうだけど、山刀と大ナタは、そこそこのお値段が付くといいな。
お、ゴブリンのくせに、クロスボウなんか持ってたね。
しかも10丁も。これか、狙いが正確だったのは。これは高く売れるのよね。
あらかた始末して。
戦利品はみーよが女神ちゃんに奉納して。
最後に、みーよの奇跡でゴブリンどもの死骸を浄化。
シュランが、感心したように、その奇跡を見つめていた。
分かる、分かるよその気持ち。ホントにスゴイよねぇ。
「で、その恰好じゃ村には帰れないんで、ここで休憩ね」
「えーそうなの?」
みーよは、しょうがないな、という顔をして、ため息をついた。
「シャワールーム出すから、鏡で自分を見て。格好というか、その顔だと、ゴブリンに間違われるよ?」
そ、そうなの?
みーよの奇跡で、シャワールームを出して貰い、着替えがてら鏡を見ると。
うわぁ、誰それ? な、あたしがいるわ。
テンション上がりすぎ。鬼がいる。鬼の顔をしているあたしがいる。
た、たしかに色々口走りそうだね、これは。
裸になって。
温かい水とシャンプーリンスで、おかっぱ頭な固くてごわごわした髪をサッパリさせて。
ゴブリンの返り血とか自分の血とかが付いた濃ゆい鬼みたいな顔と、鬼みたいなゴツイ筋肉で覆われた身体を、フローラルな香りがするボディシャンプーで洗い流すと。
一息、ついた。
人間に、戻れた。
新しい下着と制服に着替えて、シャワールームを出る。
シュランにも勧めたけど、外で水浴びは、かなり抵抗があるらしい。
んなこと言ったって、アンタも返り血とか、相当スゴイ事になってるよ?
と、説得したら、入る気になったみたい。
ただ、あたしみたいに下着とか制服とかは出せないのね。そりゃそうだね。
シュランがシャワーを浴びている間に、タブレットを取り出して、ドローンの確認をする。
バッテリーが、あと半分。広角画像なんでハッキリとは映ってないけど、周囲にゴブリンが散らばっている気がしてならない。
ホブが3匹もいたにしては、ザコの数が少なすぎる。もう3倍は、いてもいいと思う。
本拠があたしらに襲われたのを見て、逃げ出してると思うんだよね。
ドローンのカメラをズームにして、潜んでいそうなところを低空飛行させる。
この辺とか、こことか……
ほら、いた。
チョロッと走れば、コイツらは喰えそうだね。
「まだ行くの?」
シャワー浴びたばかりでしょ? と言外にほのめかす、みーよ。
「叩けるうちに、叩きたい。それでも全滅は無理だと思うけどね」
「分かった。行っといで。シュラン?」
「は、はい!」
まだ髪が濡れたままのシュラン。
うん、ゴメン。ゆっくりしなとか言いつつ、急に呼び出すんだもんね。
ヒドイ先輩だ。自覚してる。
ま、お前のことはドウでもいい。今はゴブの残党処理。
あたしは忍び走りで飛び出した。
5、6匹が潜んでいた藪を襲撃。それを2回。
キャンプ地に戻ったら、もう一つ、待ち伏せしてるつもりだと思う集団を見つけた。
当然、こっちから襲撃。
割と数がいた。全部で25、6匹かな。まだいそうな気もするけど、この周辺にはいないね。
デカくて丈夫な袋を出して貰って、ゴブの死骸を詰め込んではキャンプ地に運んだ。シュランが魔石を取り出している間に、もう3往復。
みーよが浄化して、やっと満足した。
……うん、あたしが。
トラックに乗り込んで、村へ帰還。
門番が心配そうにあたしらを出迎えてくれた。
来た時と同じ場所にトラックを止めて、攫われたまま意識のない女性を抱えて、みんなで村に入る。
村長は、変わり果てた女性の姿に絶句したけど、出来る限り徹底的にゴブリンを始末したと話すと、ホッとした様子だった。
ゴブが約50匹、ホブを3匹。
戦果を話すと、今度こそ絶句した。
一応、確認、しても?
いーよー
みーよがゴブやホブの魔石、棍棒や山刀、大ナタを出して見せると。
マジマジとあたしらを見つめる。
ゴブリン、こんなにいたんですか? 報酬、少なすぎですよね?
ま、いいんじゃないの? それであたしらは引き受けたんだから。
戦利品がソコソコ金になるから、儲けはでるよ?
そう言ってあげたら、深々と頭を下げられた。
依頼達成証明書にサインを貰って。
ついでにみーよが、村の結界石に理力を注入しますと申し出ると、涙を流して喜ばれた。
トラックで数か所回って、古くから据えられているような、半透明の水晶に近い感じの、幼児くらいの大きさがある石の前でみーよが祈って。
これで、来年までは大丈夫ですと伝えて。
村人たちも村長さんも、返しきれない恩を感じていると、恐縮しきりだね。
全て、光の女神アーリューシャイン様のお導きですと、みーよがいつもの決まり文句。
杖からの祝福の光に、村人たちが全員、感謝の祈りを捧げていた。
で、最後に。
攫われた女性に関して。
村には置いておけない、どうしたら良いかと、相談された。
青き清浄の調べ教会に預けて、治療したのちに村で引き受けるかどうか、決めたら良いと、みーよが提案する。
引き受ける財力がない、と頭を抱える村長さん。
でも、このままにもしておけないでしょ?
取りあえず、預かるよ。助けた責任もあるしね。
そんなやり取りをして、彼女をトラックに乗せて連れ帰ることになった。




