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Sweet Bomb NEXT  ~ 今度は異世界で大暴れっ!  作者: 白河・DG・夜舟
転移二十四日目っ! ~ ゴブリン退治に出発っ!

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181.「Aryu Shine」

 シュランに剣と盾の基本的な使い方を叩き込んだんで、初心者フィールドに連れて行くために、冒険者ギルドの掲示板で依頼探し。

 あたしと、というよりも聖女のみーよがいるんで、もうシュランはカモ扱いにはされない。

 やはり、男の付き人というものは、扱いというか、見る目がちょっと違うらしい。

 で、Gランクの初心者用依頼は、定番の薬草採取と、犬の散歩と、ゴミ屋敷の清掃と、どぶさらいだね。この4つは、常にあるね。そして、薬草集め以外は誰も受けない。報酬が安いもん。

「薬草集めの依頼を受けつつ、他の獲物を探すのは?」

「一定数の薬草を集めないと、依頼失敗になるよ?」

 そうか、そういうものなのか。簡単そうに見えても、結構大変なお仕事なんだね」

「師匠、俺一人でも、薬草採取やりますよ?」

「それでもイイんだけどね……」

 あたしとしては、シュランはとっとと実戦に放り込みたい。この際、稼ぎはどうでもイイんだよね。

「これは?」


 オノ村 ゴブリン集団退治 報酬 金貨1枚


「前に行った、街道の中継村だね。馬車で片道3時間。報酬がもう少しあればね」

 ああ、木の柵で覆われた村ね。熊とオオカミを寄贈? したんだっけ。あたしが子供たちに“あかずきん”を語って聞かせた村だね。

「あと、こういう依頼は、斥候(スカウト)が必要なの。ゴブリンどもがどこにいるのか、探る専門家がいないとダメね」

「そうなんだ。じゃあ、こういうのって引き受け手がいないんじゃないの?」

「だから、まだ依頼が残ってるんじゃない?」

 当たり前のことだけど、郁ちゃんだから、丁寧な説明が必要でしょ?

 みーよが、あたしの目をしっかり見つめてる。

 うーん、表情を観察(スキャン)されてるね。

「だよね」

 知らない村じゃないし、引き受けてはあげたいんだけど。

 みーよが無理だというなら、無理かもね。

「行きたいの?」

 ま、まあ。

「判った」

 へ?

 みーよは、依頼の羊皮紙を剥がして、そのまま受付に持って行ってしまった。

 だ、大丈夫なの?


 受付嬢も同じように思ったみたい。

 でも、新人の付き人を訓練する機会だし、聖女としては、魔物に苦しむ村人たちを放っておくわけには行かない、というと、納得して承認してくれた。

「馬車はギルドでは出せませんし、村の馬車も、今日は到着していませんが」

「それで結構です。移動は、自前で行います」

 そのまま“おいで”されて、建物の外へ。


     ~ ・ ~


 大通りを歩き、大きな城門の前で、衛兵にギルドカードを見せる。

 例の、身体の中から出てくるカードだ。

 あたしたちは銅色。C級の証し。イーシュだけは、G級だから、木製。

 ちなみに普通の市民は、透明な水晶のようなカードらしい。

 門番はカードではなく、横に長い、立体的な水晶の塊を持っている。

 これから行く村の門番も、これのもっと小さいのを持ってたね。

 自分の持つ水晶の塊を見て、門番の態度が、きちんとしたものになる。

「任務、お疲れ様です。いってらっしゃいませ!」

 そういうもんかと思いつつ、鷹揚に軽く手を振って歩きだす。

 最初にオラクルに入った時は、酷い態度を取られたんだけどね。

 ま、張り倒したけどね。

「全然、態度が違うんですね……」

 シュランも同じことを思ったらしい。

 薪拾いで、街の外に何度も出てるんだもんね。

「アンタが一人で外に出る時は、どんなんだったの?」

「機嫌が良い時は、ああ、とか、ふうんとか。

 普段は無言。

 機嫌が悪いときは、難癖付けられるか、絡まれます」

 ああ、やっぱりね。

「街を出る時より、街に帰ってくるときの方が割と面倒です。ワイロを寄こせとは言われませんけど、難癖付けて中に入れてくれない事も結構ありました」

「へえ」

 こんな子供苛めて、何が楽しいんだろうね。

 いや、こういう連中にとっては絶好の憂さ晴らしなのか。

「夜になる前に街の中に入れないと、結構困るんで。まあ、何とかはしますけど」

 そういう場合でも、生き延びる手段を持ってるんだね。


 城門の外に出ると、例によってというか、懲りずにというか。

 中に入れてくれ、な馬車がずらっと並んで、門番と何か言い合いをしている人たちが多いね。

「気になるの?」

 みーよが、再びあたしの表情を伺う(スキャニング)。

 ホントにもう、なんにでも首を突っ込んで。

 あたしは、そういう表情をしている、らしい。

 みーよが、そういう表情をしているので、自分の考えが分かる。

 まるで、みーよはあたしの“もにたぁ”だね。

 待っててあげる。行っといで。


 初めてオラクルに来た時に出逢った、兜になんか飾りを付けた、偉そうな細面の門番。

 門の安全を預かる自分たちへの感謝の気持ちは無いのかと、偉そうに講釈を垂れている。

 商人たちが5人。胡散臭そうに、それを聞いている。

「よっ、久しぶり」

 後ろから肩を叩いてやると、なんだウルサイな、という顔をされて。

 あたしだと分かって。

 顔が青ざめている。

「もめごと? なんか手伝おうか?」

 ニヤリと笑って見せると。

「め、め、滅相も御座いません! オ、オイお前ら、通って良し、とっとと行け!」

 商人たちはいぶかしげにしながら、馬車に合図を送る。

 やがて、渋滞していたのが急に流れ始めた。

「解決して、良かったわ。これからも、スムーズにお仕事してね」

「は、はい!」

 ウンウン。素直で宜しい。


「あっさり解決したね」

「ま、あたしが見てない所では、またヤルんだろうけどね」

 こうしてみーよの側を離れても、安心できている。

 シュランが付き人に加わったので、みーよの安全確保(セーフティ)をそれほど気にしなくても良くなった、かな?

 で、村までは馬車をヒッチハイクするんでしょうか?

 朝のうちは、オラクルから出ていく馬車ってそんなにいないと思うけど?

「郁ちゃんは、“自動車”運転できるんでしょ?」

 自動車。そうきたかー

「天才だもん。操縦系は何でも出来ると思うよ」

 でも自動車、奇跡で、出せるの?

 シュランも、なんですかソレって顔してるよ?

「良かった。こういう奇跡は基本的に付き人への恩寵扱いだから、付き人本人が扱えないものは無理なのよね」

 両膝をついて、跪く。杖を立て、いつもより深く真剣に祈っている。

 みーよの綺麗な祈りの声が、周囲にも響く。

 道を歩く旅人や農夫たちが幾人か、何事かと立ち止まっている。

 と、杖が光り始める。

 光の線が、何もない空間に何かを描き始める。

 かなり細かく線が動き、線が重なり、交わり、面となって形を造る。

 でかいボンネット付きの車体。幅2メートル以上、高さも2メートル越え。

 前方座席と後方座席に、大きな窓が左右に備え付けられている。

 大きなブロックタイヤが四つ。ホイールは銀色。

 後ろに長さ2メートルほどの荷台。

 車体側には、小さなクレーンも備え付けられている。

 ごついグリルガードとフロントルーフの上には、強力な光を放ちそうなフォグランプがそれぞれ4連。

 ボディの色は白。そこに黒のフォントで「Aryu Shine」と鮮やかに描かれている。


挿絵(By みてみん)


「な、な、なにこれ……?」

「移動手段。荷台にアウトドア用品一式載せて、キャンプするの。車中泊系にしようか迷ったんだけど、郁ちゃんはこっちの方が気に入ると思って、アンロックしたよ」

 アンロック。なにそれ?

「気に入らなかった? 失敗したかなぁ」

「いや、いや、ちょっと待って」

 外見、結構好き。かなり好きかも。相当好きだと言ってもいい。

 旧時代の、憧れの車らしいのは知ってる。大きな国から大きな車が渡来してきた、その名も何とか、みたいなコマーシャルは観た。

 あたしたちのコロニーでは、こんなのは見かけないし、当然走ってなんかいない。

 ただ、地球ではこういう車が趣味として残されているのは、聞いたことがある。

 名称、なんていったかなぁ?

「ピックアップトラック。乗ったことは、ないよね?」

「うん、無い」

 コロニーで動いている車には、タイヤなんかついてないもん。みんな反重力で浮いてるしね。

なんならハンドルやペダルさえない、全自動で動くツマラナイ車ばっかりだよ。

 ただ、ドーリングで乗り込むAK(アーマード・ナイト)は腕の代わりに車輪が付く装備もあるし、ローラーを足に履かせて機動力を増すこともある。

 なんで、理屈は知ってるだよね。そういう意味では、動かしたことはある。

「いったい、どうしたのよ?」 

「女神さまにローン審査が通ったんで、買っちゃった」

 買っちゃったって、そんなお嬢様みたいに。

 あ、みーよ、お嬢様だったか。

「いくらするの?」

「大金貨10枚」

……1000万円か。だよねぇ。

「ローンだし、払いきれなかったら車をお返しするだけだから、郁ちゃんは心配しなくていいよ。女神さまの信用を得られたので、ローンでの支払いが出来ているので、大丈夫だよ」

 だって、さ。

 生きるのが大変なのは、あたしたちも同じ。

 稼ぎは教会に半分取られて、さらに女神ちゃんにも使った分はお支払い。

 みーよ曰く、お金を直接じゃないけど、奉納という形で支払っているんだって。

 なので、基本的にパーティーの残りの収入のうち、半分は経費。

 あたしが結構飲み食いしてるんで、あたしの分も経費へ。

 シュランの取り分は、そのままあげることにしている。アリちゃんとの、将来の結婚資金とか生活資金とかあるでしょ?

 で、この車。面白そう。

「乗ってみても?」

「もちろん」

 うわぁ。

 ドアノブを引くと、意外に軽く扉が開いた。

 ハンドル、レバーの操作系。計器類はシンプル。

 足元にペダルが三つ。真ん中のはブレーキだと思う。

 左右のペダルで、車輪の左右の出力調整かな?

 でも、ペダルの形が違うんだよね。

 右は踏みやすく、繊細。左は蹴っ飛ばしやすい感じ。

 乗り込んで、ペダルを踏んでみると、あ、これ、用途が違うわ。

 出力は右ペダル一択。真ん中は遊びが少ないのでブレーキ。

 で、左ペダル。これ、なんだろ?

 みーよたちも、乗り込んできた。前も後ろも3人掛けだけど、後ろにみーよ、前の助手席? にシュランが乗り込む。

「な、なんですか、これ?」

 目を回しそうな、その気持ちはよく分かる。

「さすがに街中だと、これを走らせたらマズイでしょ?」

 うん、マズいと思う。色んな意味で。

 周囲に結構な人だかり。門番たちも、仕事をほっぽりだしてこっちを注目している。

 あたしは、実はそれどころじゃない。頭をフル回転。

 んと、これの動かし方、動画で観たことあるんだよね。

 うん、そうだ、左ペダル、クラッチとか言うんだ。

 旧時代の中でも、かなり昔。廃れた技術だと思う。普通はコンピューターに操作させるもん。人間がギアをコントロールする時代の話だね。

 ギアを適当にいじると、スムーズには動かない。入りきらない感じ。

 で、クラッチを踏んでから入れると、ちゃんと入る。“繋がる”感じ。

 うん。いいね。マシンとの、この一体感。

 起動スイッチは、と。

 この手のマシンは、利き腕の下の方って決まっている。

 なんか目立つボタン。あった。

 押すと、ヒューンという起動音。ボンネットがわずかに震えている。

「理力をエンジンに注いで動くの。理力はわたしが供給してるけど、しばらくは予備タンクでも動かせるよ」

「オッケー」

 コクピットに、それらしい表示があるね。

 あとは、スピードメーターと、モーター回転を表すタコメーターかな。

 ハンドルの横のレバーは、方向指示器と、反対側はフロントの窓を拭くためのワイパーね。レバーの上についているツマミは、ライトと、後ろの窓を拭きとるワイパーか。

 だいたい、分かった。

 ギアを一番奥に入れて、クラッチを外すと、そろっと前に動いた。

 前を塞ぐ群衆が、びっくりして道を開けてくれる。

 ハンドルの前についている大きなボタンを試しに押してみると、大きな“くらくしょん”が鳴り響き、群衆がわっとびっくりして我先に散っていった。

 共通語(コモン)にクラクションという言葉はないらしい。竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)、が、それに近いみたいね。そんなオーバーなもんじゃないと思うけどね。

 ハンドルを切って、街道にトラックを乗り入れる。

 クラッチを踏んでギアを一段上げ、クラッチをそっと離すと、スムーズにスピードが上がる。

 うん、分かってきた。さすが、あたし。

 初見でこれを動かせちゃうなんて、ホントに天才だね。

「慣れてきた。スピード、上げてもいい?」

「操縦に関しては、とても信頼してる。任せるよ」

「ありがと」

 あたしは、さらにギアを一段上げた。

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