180.美しいものは、美しい
談話室に入ると、朝ご飯の支度が整っている。
2人、人数が増えたんで、レイアウトを変更したみたい。
マムちんが長方形のテーブルの端。上座に座るのは、そこが定位置だから。
向かって右も、みーよの定位置。
左は、普段はアリちゃんなんだけど、一個ずれたね。
そこに座るのは、ふくよかケイトさんだね。
一晩で、マムちんと随分打ち解けたんだね。
で、アリ、ちびちゃん、リコット、ちびちゃん、と並ぶ。
反対側、みーよの隣はシュランとカンタ。
アリやリコットの真向かいになるね。
カンタの隣は期間限定の弟子、イーシュ。
わんこどもが、それぞれ向かい合ってその隣に座り、その隣というか、長テーブルの端はあたしの指定席。遠いけどマムちんと向かい合う感じ。
で、イラドがケイトの側に行って、片膝を床についている。
「お美しい方、お名前をお伺いしても?」
ケイトが戸惑って、マムちんに、これどうしたらいいんですかと目で訴えかけている。
わ、私に聞かれても、ねえ?
うん、そうだね。飼い主の責任だね。
わんこの首根っこ掴まえて、席に連れ戻す。
「なにやってんの? アホなのは知ってるけど」
「い、いや、ご挨拶を」
「なによ、また求婚する気?」
あたしの言葉を聞きつけて、ケイトが眉をひそめる。
女の子たちも、みんな似たような顔、態度。またか、コイツは。
シュランとカンタは、面白そうな珍獣を観察する様子。今度は何をヤラかすんだ?
イーシュは、この人スゴイなと、軽く尊敬。いや、そんなのじゃないから。
マイアミはあきれ顔。こんなのと俺が同列なのか。
「ま、まあ、挨拶がてら、求婚を……」
うん、知ってる。お前はそういうヤツ。
求婚をなんだと思ってるんだろうね。
「イラドおじさん、師匠の事はあきらめるの?」
カンタのツッコミに。
「い、いや、どっちも手に入れるから」
真顔で話すイラド。
……コイツ絞め殺してもいいよね。今すぐここで。
朝ごはんはいつも通り美味しかった。とても美味しかった。
食後のコーヒーは、みーよがケイトに淹れ方を教えて、彼女が振る舞ってくれる。
その様子にみとれるイラド。怪訝そうなケイト。この人なんなの?
うん、気にしなくていいよ。あんまり酷いならヤキいれるから大丈夫。
そ、そうなんですか。
などと目線で会話しながら、あたしの分のコーヒーを置いてくれる所作が素敵。
アリちゃんの、初々しいというか、たどたどしいのとは全然違う。
んと、メイドとしての教育をしっかり受けている感じ。
ま、メイドのなんたるものかなんて、よく知らないんだけどさ。
でも、知らなくても分かる。美しいものは、美しい。




